銀河騎士隆盛記 零 地の章(PE57QとYWC2+湯治編)82~83湯治の夜の宴と、湯治の効果
湯治の夜の宴と、湯治の効果
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ボーア老師とキンタは温泉を出て見切りの稽古を始めた。二人は傾きかけた太陽の、真っ赤な光を浴びながら、稽古を続けて、二人が稽古を終える頃には、太陽は沈みかけ、空の上の方は深い藍色にそまって、あたりはすっかり暗くなっていた。
見切りの稽古を終えて四人が湯治小屋に戻ると、フツが夕餉の用意をしていた。
カマドの火は一度、起こされ既に熾火になっていて、フツは例のとおり、その上に平たい、石を据え、その上では、鴨の燻製が、二羽と、大きなアマダイの開きが、丁度、食べごろに焼けていた。
「こいつはたまらん。酒はあるのじゃろうな。」もみ手をしながら、ボーア老師がそう言うと、フツは入口の方を、手で示して「外の雪に瓢箪ごと4本いけてあるから、一本、取るといいよ。」と言う。
ボーア老師はフツに言われたまま、小屋の中から身を乗り出して、瓢箪を一本取った。それから、小屋で座りなおして、フツが用意して、目の前に突き出した碗を受け取り、さっそく、冷えた果実酒を注いだ。老師は酒を一口飲み「これは、こたえられん。よく冷えて旨いのう。流石、フツ殿じゃ。」と言い、フーっと感嘆の息をはいた。
老師が飲んだ、いっぱい目を、かわきりに、稽古で程よく疲れ、温泉に浸かって、のどが渇いていた四人は、その夜、果実酒を遅くまで強かに飲み、たらふく食べ、タチ談義に花をさかせたのだが、こまかい話はここでは省く。
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さて、この「見切り」の稽古の間、PE57QとYWC2は一体、何をしていたのだろうか?
PE57Qはフツの傍らで、その手伝いをしていた。火焚きをしているフツの為に、森のなかの水場(湧き水)から、手持ちの土器に水を汲み、小屋の外の空の素焼きの水がめを一ぱいになるように、往復していたのPE57Qだし、土にまみれていた里芋を水洗いして荒皮を落としたのもPE57Qだ。
熾火になるまで薪を燃やして、薪の余分な灰を釜土から掻き出して、小屋の外に出したのもPE57Qだ。その他の時間はフツの調理の手伝いをしていた。
YWC2の方と言えば、カンデンからPE57Qを通して依頼されていた「見切り」の訓練の映像を記録することは勿論、「見切り」の際、タチの切っ先が皮膚を掠める瞬間の、心拍数や体温の変化も克明に記録していたのは言うまでもない。
それ以外にYWC2は湯治が人体に与える影響や、温泉の成分の分析や、カンデンやキンタのバサラバート人と、コムロやボーアー老師アスラのアスラ人の、入浴時と、外に出で、身体を冷やしている時の、代謝の差異や、変化を克明に記録して、分析していたのである。
ちなみに、この温泉の泉質は、無色透明の単純硫黄温泉「硫化水素型」(低張性弱酸性温泉)であり、金属を腐食することを、PE57Qに伝えて、温泉に入らないように、進言したのはYWC2だ。
湯治の効果に関しては、銀河連邦文化圏では報告事例が無く、このアスラの温泉の記録はあとで、大変、貴重なデーターであると、高く評価されることを、カンデンとキンタも、当のYWC2も知らない。




