銀河騎士隆盛記 零 地の章(PE57QとYWC2+湯治編)74~75 温泉からの絶景
温泉からの絶景
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フツは火の用意をしながら「男衆は温泉に入ってきなよ。あたしは昼餉の用意をしてからゆっくり入るから。」と言うので、カンデンたちはフツの言葉に甘えて、先に温泉に浸かることにした。
綿糸を編んでオリべチィ(織物衆)の娘たちが作った上等な手ぐいと、ヘチマの芯を干した垢すりを手に、カンデンたちがヤシキの外に出ようとしたら、ボーア老師がタチを持って行けと言う。カンデンはどうするのだろうと思って、ボーア老師とコムロを見ると申し合わせたように、二人とも左手でタチを携えている。
ボーア老師が「見切り」の稽古をすると言っていたことをカンデンは思い出し、背負子に革紐で結び付けておいた、タチの紐を解き、カンデンもタチを携えて、外に出た。温泉までの道中も雪は降ってなかったが、風はそこそこ吹いていた。空には雲はなく晴れていた。
ボーア老師は外から、カネノカタに声をかけて、アシナシ様についてきてくれるように頼んでいた。どうやらボーア老師は「見切り」の稽古の様子を、アシナシ様に記録してもらいたい様子だった。
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温泉まで、五分ほど歩いて、ボーア老師は残念そうに「本当なら雪見酒と洒落込みたいのじゃが、温泉の後で『見切り』の稽古をしたいからのう。酔っぱらってタチを振り回す訳にもゆかんでのう。」と独り言を言った。「雪見酒は日が暮れてからのお楽しみにしようかのう。」そう言うと、温泉が湧いている岩場の端に枯れ木を積み上げ、そこに湯をかぶらないようにタチを置いた。
コムロとカンデンもそれに習って、老師が積み上げた枯れ木の上にタチを置いた。
一行は着ていたものを脱いでタチの横に置いて、コムロと老師は履いていた、冬用の毛皮の沓を脱いで、岩場の陰に揃えて置いて、手ぬぐいを、湯で濡らして頭に乗せて、温泉に浸かった。
カンデンたちも革のブーツを脱いで、岩場に揃えて置いて、コムロの真似をして、濡らした手ぬぐいを頭に乗せた。
カンデンとキンタは温泉に浸かるのは初めてだったが、お湯はかなり熱く感じた。熱い湯に浸かると、身体中に温泉の湯が染み入るように感じた。二人の口から同時に「フゥー。」とうなり声が自然に洩れた。
カンデンは、寒い冬の風を頬にあびながら、熱い温泉につかるのが、とても不思議な感じがした。
露天の温泉からは、麓から、森が広がっていて、雪を被った森も、その向こうの白い平原も、そのまた向こうの、海岸線までが見下ろせた。絶景だった。




