銀河騎士隆盛記 零 地の章(PE57QとYWC2編)66~67 竹とんぼを作るカンデン
竹とんぼを作るカンデン
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竹の小片を薄く削って、真ん中にYWC2がカズイに頼まれて作った、木に穴を開けるキリという道具をカズイに借りたのか、それで竹の小片の真ん中に穴を開けている。
その穴に竹を削って作った心棒をさして、カンデンの手の中で完成したのは二枚羽根のプロペラ(竹とんぼ)だった。
カンデンは出来上がった竹のプロペラの羽根の両端の長さを確認し、今度は片側だけをナイフで削っている。
キンタは朴の木の枝を削って、人の顔を象った像を作っているようだが、その手を止めて、カンデンの手の中の竹の小片に注目している。
「先生、先生が作っているのは何ですか?」と聞くのでカンデンは答えた。
「これは竹で作った、二枚羽のプロペラだよ。心棒を勢い良く回すと空を飛ぶんだ。」するとキンタは続けて「先生、プロペラなら左右が同じ長さの方が良いのではないですか。どうして左右の長さを変えるのですか?」と聞いた。するとカンデンは答えた。
「左右の長さにちょっと差をつけるのがコツなんだ。こうするとプロペラを飛ばした時に、楕円の軌道を描いて飛ぶんだ。このプロペラが、一度、手元を離れて飛んだ後、もう一度、手元に帰って来るという訳さ。」
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キンタはカンデンの話に感心したようだ。
「どこでそんなことを知ったのですか?」キンタがそう聞くとカンデンは笑いながら答えた。
「物心がつく前から、ジンウ寺院の孤児院に預けられていたからな、おもちゃを買ってくれるような大人は一人もいなかったから、同じ年頃の友達にこの作り方を教わって、何回か自分で作ったことがあるんだよ。自分で色々試している内に、このコツを掴んだんだ。」
「先生、飛ばしてみ下さいよ。」とキンタが言うので、カンデンはヤシキの中を見回して見て答えた。
「ヤシキの中では無理だな。火の上に落ちたら、焦げてしまうし。外は吹雪だし、今度、天気が良いときに外で飛ばして見よう。」キンタは残念そうな顔をしたが「子供たちの前で飛ばしたら、みんな喜ぶと思います。」と言って、また、手の中の像を削り始めた。
カンデンはまじまじとキンタの顔を見た。この時、カンデンが感じていたのは、キンタの変化だった。
遠くから一瞥しただけなのに、二枚の羽根の微細な差に気づいた。若さゆえの短慮が目につく弟子が、このサンマナに来て、確かに変わった。
サンマナの人々に共通しているのだが、皆が、自分のことよりも相手を気遣い、相手の気持ちを思い図って、言い過ぎかも知れないが、鋭く察して、きめ細やかな反応をする、そのことがキンタの感性を刺激して、それでキンタが変わったのだとしたら?
この島流しのような体験も、良い経験に変化したと言えるのかも知れない。カンデンは改めてそう思った、
PE57Qは思いに耽っているカンデンの、優しい表情を見て、子供のカンデンを自由想像した。少年の頃から、この人は優しいまま変わらなかったんだなとPE57Qは自由思考した。これも量子頭脳の揺らぎ故、なのかも知れない。




