銀河騎士隆盛期 零 宙の章 3~4 一縷の希望
銀河騎士隆盛期 零 宙の章 3~4
一縷の希望
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断続的に音圧は低いが高い周波数の音が「ヒィーン」と鳴る度に、カンデンとキンタは頭痛がして、顔を顰める羽目になった。
果たして、これはただ事ではなかった。超振動しているワープ機関に、エネルギーを伝達している、人口水晶の結晶に流れ込む、重力制御で時間減速しているとはいえ、対消滅炉の水素と反水素の対消滅の、膨大な光と熱の他に、空間振動波の波動が過剰に伝達していることにより、人口水晶の結晶が少しづつ損壊していることを示していた。
「人口水晶の近傍でフォトン(陽子)が発生しています。それにつれて、水晶の質量が減少しています。」そう報告するキンタの声は震えていた。
カンデンはPE57Qに「後、どれぐらい持ちそうかYWC2に計算させくれ。」と怒鳴っていた。予定のワープアウトまで後、20分未満であることをモニターでカンデンは確認して回答を待った。
YWC2は二秒ほどで「ギー・ガー・ビィー。ギュル・ガー」と計算結果を述べた。「励起状状態で理論上では後30分は持ちますが、再度、励起状態にした時の性能は保障できないと言っています。」PE57Qの翻訳は絶望的だった。
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水晶の結晶に電圧をかけ、特殊な波調に従って電流を流すことにより、水晶は特殊な励起状態になり、光や熱のエネルギーを吸収するようになる。その原理を応用して、対消滅の膨大な熱と光を直接、電子放出エネルギーに変換し、ワープ機関に送るのだから、その性能を保障できないというPE57Qの言葉は、ワープも星間航行も不能になることを意味していた。
キンタが絶望的な気分に浸っていた時、突然、カンデンは、前方のキャノピーを指さして「ウォー」と叫んでいた。キンタがキャノピーを見ると放射状に広がって、流れてゆく恒星の光が見えた。その瞬間、キンタも「ウォー」と叫び声をあげていた。
それはブルーノーズ号が次元断層を脱して、通常空間に戻っていることを示していた。
次元断層の中に取り残されるという最悪の状態は、避けられたのは僥倖と言えた。それから、数秒もしない間にブルーノーズ号は突然、ワープアウトした。
しかし、問題はそれからだった。ブルーノーズ号は通常空間で静止していなかったのだ。モニターの航行速度の表示は、ブルーノーズ号が亜光速で次元断層から弾き飛ばされたことを示していた。
カンデンとキンタは大急ぎでモニターの計器を確認し始めた。おおよその推進方向と航路を確認して、電気タンクの電子エネルギーの残量と、船体の亜光速の減速に必要な電子エネルギーの量との差を把握する必要があった。




