銀河騎士隆盛記 零 地の章(PE57QとYWC2編)15~16 豪胆なワラン
豪胆なワラン
15
YWC2に歯の治療が必要と判断された五人は災難だった。最初の犠牲者はカリチィ(狩人衆)のモリオだった。PE57Qに後ろから羽交い絞めにされて、強制的に座らされたところに、YWC2が外部マルチ・マニピュレータを伸ばして、口を無理やり開かせ、顎を固定して、強い光を当てたところに、胸部の小型マニピュレータが伸びてくるのだから、彼にしてみれば恐怖以外のなにものでもない。
手術にかかった時間は15分くらいだったが、彼はギャーと悲鳴を上げ続けた。左の親知らずが顎の骨を圧迫していたので、笑気ガスで麻酔して、歯茎を切開して親知らずを抜き取って、傷口を糸で縫合されたのだから、痛みも相当だった筈だ。
四十男のモリオは手術が終わってからもしばらく座り込んだまま、ウォン、ウォンと声を上げて泣いていたが、しばらくすると奥歯の痛みが無くなったのか、しきりに奥歯のあたりに手を当てて、不思議そうに首を傾げていた。
16
オリベチィ(麻の織物を作る衆。)の娘、ウツネは背中からPE57Qが近づいただけで事態を察して、逃げようとしたところを前から飛んできたYWC2に阻まれて、つかまって、YWC2に顎を固定された。
彼女は悲鳴を上げ、手足をばたつかせ抵抗したが、空間に重力で固定されているYWC2に抗う事は出来ず、最後には、無抵抗になっていた。
ただ残りの四人は、単純な虫歯だったので、施術の時間は5分くらいで、大して痛みもなかった筈だ。
カズキとサライはまだ幼いのでPE57QにつかまってYWC2が迫ってきたところでワーンと泣き出してしまったが、二人とも施術が終わるとケロリとして泣き止んでしまった。
意外だったのはワランだった。彼はまだ八歳なのに、PE57Qに肩をつかまれるとペタンとその場に座り、YWC2が迫ってくると自分から口をワーッと大きく開けて、YWC2が施術している間、声も上げなかった。
PE57Qが痛くなかったのと聞くと、痛かったと言い、怖くなかったのかと聞くと、怖かったと答えたが、どうして逃げなかったのと聞くと「逃げてもしょうがない。」と答えた。豪胆な子もいるのだなと、またPE57Qは自由思考した。




