銀河騎士隆盛記 零 天の章 53~54 素振りハイ
素振りハイ
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カンデンは今度は、タチの刃が上になるように、タチを保持するようにベルセラに言い、ポケットから折りたたんだシルクの布を取り出し、それをタチの上でふわりと広げて投げ出した。
シルクの布はタチの上に覆いかぶさったように見えたが、次の瞬間、二つに分かれて落ちた。タチの鋭利な刃は、自重で落ちてきたシルクを二つに切断してしまったのだ。
それを見たベルセラは息を吞んだ後で「凄い。」と一言だけ言葉を漏らした。
カンデンは、二つに切れたシルクを拾って、今度は、タチの峰に人差し指を当てながら、手を切らないようにタチを鞘に納める方法を教えて、ベルセラにその、おさらいをさせてから「今日は一日、タチで素振りをしてみなさい。」と言い、ベルセラにタチを授けた。
最初こそ、ベルセラは、おっかなびっくりタチを上下に振るっていたが、カンデンが、40分程過ぎてから、小ホールを覗いた時には、ベルセラの振るうタチはヒュンっ、ビュっ、と、小気味よい風切り音を立てて、上下していた。
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ベルセラの意識は下腹(丹田)で安定し、ベルセラはカンデンの存在が目に入らないくらいの、所謂、素振りハイの状態に達していた。
カンデンはベルセラの身体のしなやかさと、集中力の凄さに、目を見張った。
ベルセラは無意識なようだが、鋭利なタチのスルドさに、身体は自然に感応して、ベルセラの動きは先鋭化していた。これが才能というものなのだろう。
夕食の時間になって、皆が屋敷の居間に戻ってきた。ベルセラも、抜き身のタチを鞘に納めて、鞘を持ってタチを右手で下げてきた。
カンデンの前で、ベルセラはタチを両手で捧げ持ち、カンデンにタチを返してきた。カンデンはそれを受け取り、貴賓室の刀掛けに納めてから居間に戻ってきた。
夕食のメニューは、ローストビーフと、インスタントのトマトスープと、白インゲン豆とアボガドのサラダと、白ワインだった。
豪華な食事を前に、カンデンとキンタとベルセラの三人は大いに食べ、大いに飲んだ。
その席でカンデンはベルセラに「タチを取り回して、どんな感じがした?」と聞くとベルセラは急に真剣な顔をして「身も心も引き締まりました。」と答えた。カンデンはそれを聞いて得心した。この娘はタチを取り回すことの意味を本能的に悟った。カンデンにしてみればそれで十分だった。




