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婚約者お披露目パーティー③

 レオナールと釣り合わない私のことを、全く気にも留めないのは、この場でレオナール本人だけだ。


 そんな彼は、平然と反応した。


「エメリー良かったね。アリアは優しいから、ラングラン公爵家のルールやしきたりを丁寧に教えてくれるさ。これでいつ我が家へ嫁いできても、困ることはないな」


「おほほ、それは嬉しいことですわ」


「お兄様ってば、急に婚約を発表するんですもの、驚きましたわ。どうして事前にお相手を教えてくれなかったのかしら?」


「エメリーとの結婚を邪魔されたくなかったからね。あえて隠していたんだよ」


「本当にそれだけですか?」

 ねっとりとした眼差しで見てくるアリアから、めちゃくちゃ疑われている。


 瞳がちっとも笑っていないアリアから逃げたい私は、何とかこの場を去る理由はないかと周囲を見回す。


 そうすると、モテない同盟を組む兄とバチッと視線が重なる。

 内心、やったぁ、私の家族がいるわ。あそこに逃げ込もうと喜び、レオナールの腕を引っ張る。


「どうかしたのかい?」


「私の家族が……」


「ああ本当だ。来てくれて良かったね」


「一言声をかけたいわ」


「アリアとはいつでも話せるからね。今度ゆっくり別の会を設けよう」


「約束ですわよ、お兄様」


「ああ、もちろんだ」

 そう言ったレオナールが、アリアから距離をおいたため、ふぅ~と、一息つく。


 あの妹は、私とレオナールの婚約を完全に拒絶しているだろう。


 そもそも私との婚約を、二つ返事で歓迎するわけがない。それが正常の反応だ。


 そんなことを考えていると、我が家のお花畑ご一団が笑顔で近づいてきた。


 まあ、分かっていたことだが、図太い神経の兄が呑気な声を出す。


「ちゃんといたな。逃げてないか心配していたんだぞ」


「お兄様たちは、本当に来たのね……」


「ああ当然だろう」

「わざわざ来なくても良かったのに」


「せっかくの機会に対し、『行かない』という選択肢は俺の中に存在しない」

「でしょうね」


「それにしても、俺たちも鼻が高いな」

「何がですか?」


「会場の至る所で、『最後の優良物件の争奪戦』に戦力外のエメリーが、レオナール様の心を射止めたと大騒ぎしているからな」


「射止めていないわ! 騙されたのよ!」


 浮かれた狸のような両親と兄に冷たく告げた。


 私の最大の窮地を、呑気な皆様方が知らないだけである。

 偽装婚約契約を結んだ私たちは、大っぴらにできない裁判の一歩手前だ。


 偽装婚約の契約期間を巡って、彼から契約不履行だと訴えられかけているんだから……。


 本当に彼の心を射止めていたら、こんな問題に発展するわけがない。


 何としても、今日だけでこの契約を終わらせてみせると、鼻息を荒くする。


 すると、くつくつと楽しげに笑っていた兄が真面目な顔に一変し、「まだ言っているのか。失礼だぞ」と叱られた。

 そして兄は、気の毒げな顔でレオナールを見た。


「レオナール様も、エメリーがこんな調子では大変ですな」


「それでも可愛いですから」と、穏やかな笑顔を見せるレオナール。

 なんてこった! レオナールは、我が家の頭の湧いた連中にまで、演技を始めているではないか‼


 この男……。

 本気で私のことを、五年も偽装婚約者に付き合わせる気だな。


 偽装婚約問題は、お互いに譲れない契約ってことか──。


 これから勃発するレオナールとの壮絶な戦いを想像し、ざわりと寒気がした。


 とはいえこのパーティー中は、気の抜ける時間は少しもない。


 偽装婚約を発表したレオナールの横にいる私を一目見ようと押しかける令嬢から、ひたすら睨まれ続けるのだから。


 ◇◇◇


お読みいただきありがとうございます!


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