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婚約者お披露目パーティー①

 毎年開催している公爵家のパーティーは、四月の第一金曜日と決まっているらしい。


 夜会を開催する貴族たちは、この日は絶対に避けて計画するようだ。


 筆頭公爵家と関係を取り付けたい高位貴族の大半が、ラングラン公爵家のパーティーに流れるからであり、あえて被せるわけがない。


 とはいえ夜会の主催者側になることのない我が家には、パーティーの日程調整で悩むなんてことは、縁のない話である。


 図太い神経の兄は、周りから変人扱いされているくせに、招かれたパーティーには、何としてでも参加するせいで、私がいつも付き合わされるのだ。


 とはいえ、ラングラン公爵家主催のパーティーには、初めて参加する。


 大きなシャンデリアがある広々とした会場は、中央に踊れる空間が広がり、音楽団による生演奏が奏でられている。


 四隅にはそれぞれ、立食コーナーもしっかりある。

 一見して高級食材なのが分かる料理の数々。これは凄い。


 客人をいかにしてもてなすかが社交界の基本だし、女主人の腕の見せどころだが、とにかくお金がかかっているのは、いうまでもない。


 先日開催されたウトマン侯爵家の夜会も、豪華な食事は並んでいたが、ここまでではない。


 なぜか、ウトマン侯爵家から突然届いた招待状。

 我が家とは、縁もゆかりも全くない間柄であり、あの日、壁際に立たされていた私は、兄が侯爵に挨拶するのを眺めていただけだ。


 突如として我が家を招待してきたという、その気味の悪さから、主催者への挨拶は、兄が一人で向かったのだから。


 今にして思えば、あの夜会は、レオナールの幼馴染である私への、マウントだったのかもしれない。


 そう……。


 アネット侯爵令嬢は、参加者もまばらな時間を見計ったのだろう。

 このパーティーに一番乗りで到着したのは、ウトマン侯爵家の人物たちである。 


 レオナールを一番狙っていたアネット侯爵令嬢が、彼女の弟をパートナーとして伴い、一番乗りでこの会場へ入ってきた。


 ナイスバディーのアネット侯爵令嬢が、レオナールの存在に気づき、両手を口に当て、ハッとした表情を見せる。


 どんな反応をされようとも、主催者側のレオナールは、来客に挨拶する必要があるため、彼女の元へと歩みを進める。


「今日はよく来てくれましたね」


 レオナールが穏やかな笑顔を見せて労ったため、アネット侯爵令嬢が口を開く。


「先日は我が家のパーティーにお越しいただき、感謝申し上げます。今日はレオナール様のご婚約の発表があると噂されておりますが、お相手は、お隣にいらっしゃる……」


 どなた? と私の顔を見て訝しむ。


 私は有名人であるアネット侯爵令嬢をよく存じ上げている。

 おそらく彼女も、温泉王を目指す阿保な兄の妹として有名な私のことは、知っているはずだ。


 だが、これまで顔を知っていても、自己紹介などしたことのない間柄だ。名前を呼べずに困っている。


「ええ、彼女が最愛の婚約者であるエメリーヌです。今後、彼女とも仲良くしてあげてください」


「レオナール様にそのように願われましたら、もちろんですわ。お初にお目にかかります、ウトマン侯爵家のアネットです」


 アネット侯爵令嬢が、天使のような笑顔を見せた。


 彼女に睨まれた記憶のある私としては、思わず拍子抜けする。


 アネット侯爵令嬢から、こっぴどい言い方をされるかと覚悟していたが、むしろ笑顔を向けられた。


 なんだ。彼女のことを恐れる必要はなかったようだ。そうと分かれば笑みを浮かべ、自己紹介をする。


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