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2.風邪を引いた

「殿下! なぜこんなところで寝ていらっしゃるのですか!」

「ん?」


 聞こえた声はメンノの声だった。何だと思ったら、俺はどうやら執務室の机に突っ伏して眠ってしまっていたらしい。


「妃殿下が、殿下はどうされたのかと心配していましたよ! 部屋へ戻って休んで下さい! ああ、なんで窓まで開けているんですか! 風邪引きますよ!?」


 窓も開けたままだったか。

 それにしても、マルティエナが心配しているとは、見え透いた嘘をつくものだ。浮気をしている男を心配する奴がどこにいるのか。


 大方、話があったのは侍女からだろう。一応王太子という立場の俺が、部屋に戻らないのだ。放置するわけにはいかなかっただけだろう。俺は軽く言い返した。


「大丈夫だ。俺は生まれてこの方風邪を引いたことがない」

「そういう問題ではありません!」


 メンノの大声を、ボーッとする頭で聞き流す。義務でしかなくても、わざわざ俺の様子を見に来てくれたことが、実は嬉しかった。



*****



 翌朝。

 起きたら妙に体がだるかった。何もする気がしない。一体何なんだと思いながら、せっかく起こした体を、またベッドに戻す。


 ちなみに、マルティエナとは違う寝室で寝ている。平然とした顔をして、彼女と一緒の寝室に入れる気はしなかった。

 それもまた良くないことだと分かっていても、どうしていいか分からないのだ。


 そんな思考のループに陥りかけた所で、控えめなノックと共にドアが開いた。


「王太子殿下。お目覚めでしたか」


 侍女が目をあけている俺を見て、少し驚いた顔をしながら頭を下げる。確かに、俺が起こされる前に起きていることは珍しい。

 顔を上げた侍女が俺を見て、少し眉をひそめた。


「どうかしたか?」

「殿下、少々失礼致します」

「……ん?」


 侍女の手が伸びて、俺の額に触れる。ずいぶんヒンヤリと感じる。


「手が冷たくないか? 大丈夫か?」

「……殿下、咳や鼻水が出る、喉が痛い、体がだるい、といった症状はございませんか?」


 俺の質問に答えはなく、質問が返された。王太子の俺の言うことに返事がないことがおかしいとは思ったが、それ以上思考がまとまらず、俺は素直に答えた。


「ああ、体がだるい。よく分かるな」


「……殿下は健康優良児でしたね。おめでたくはありませんが、おめでとうございます。初めて風邪をお召しになりましたね。医師を呼んで参りますので、そのまま横になってお待ち下さい」


 部屋を出て行く侍女の後ろ姿を見ながら、俺はポツリとつぶやいた。


「風邪……?」


 その単語が俺に向けられるのは、ものすごく変な感じだった。



*****



 医師の到着を待つ間に、さらに体のだるさが増した気がした。それだけではなく、体の奥底に妙な寒さを感じる。


「悪寒ですな。これからさらに熱が上がるでしょう」


 初めての経験で何が何やら分からない俺に、医師は淡々と怖いことを言ってのけた。今でさえ辛いのに、さらに熱が上がるとか、絶対無理だ。


「暖かくして休まれて下さい。熱が上がりきれば、悪寒はなくなります。無理はしなくていいですが、食べられそうなら何か食事をするように」

「いやいや……」


 熱が上がりきるとはどういうことか。食欲などない。こちらは風邪初心者なのだから、もう少し丁寧に説明してもらわないと、分からない。


 が、医師は今度は侍女に話しかけていて、俺の方を見ない。そして、結局そのまま退室していった。


「申し訳ありません、殿下」


 俺が複雑な顔をして、医師が出て行った先を見ていたからか、侍女が謝ってきた。


「見立ては正確で信頼できるのですが、言葉が足りないというか、最小限のことしか言わないというか。以前それで問題が起こったこともあったのですが、彼以上に信頼できる医師がいないため、そのまま王宮付きの医師を続けております」


 そうなのか。俺は医師にかかったことなどなく興味なかったから、完全に初耳だった。これを機に調べてみようと思ったが、その前にこの風邪を乗り切る方が優先である。


「……とりあえず、俺は何をすればいいんだ?」

「熱の出ている者がすることは、寝ていること以外にありません」

「……分かった」


 侍女の言い方が、何だか冷たい。

 しょうがないだろう。初心者なのだから、何をすればいいのかが分からないのだ。


続けてもう一話投稿します。

短いです。

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