表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/20

11.初日

「妃殿下、王太子殿下よりプレゼントが届いております」

「……え、ええ」


 翌日、約束通りにさっそく届いた。破られるとは思っていなかったけれど、それでも本当に届くと緊張する。

 そして、届いたそれに、目を見開いた。


「……花」


 小さな花。庭師が植えて育てている立派なものではなく、その辺に自生していそうな野生の花。

 それらが無造作にまとめられて、茎を一本のリボンでまとめられている。そして、その脇にはきちんと封のされた手紙が置かれていた。


「王太子殿下は何をお考えなのでしょう。プレゼントであれば、もっとそれなりの花を贈って寄越すものでしょうに」


 エレーセの言いたいことは分かる。けれど、私は何も返さずに手紙を手に取った。このプレゼントに見覚えがあるから、何も言えない。

 緊張して手が震えつつ、手紙を開いた。


『エナ、約束通り、最初のプレゼントを贈る。

 エナと初めて会った日、君がかわいいと言って喜んで、俺が摘んだ花だ。リボンは俺が頑張って巻いてみたんだが、難しかった。下手ですまない』


 もう一度、巻かれたリボンを見る。確かに歪だ。上手くいかなくて、それでも何とか巻いている姿が、容易に想像できてしまった。


『あの日のことを覚えてくれているか、少し心配ではあるけれど、でもエナは忘れていないような気がした。王太子妃に贈るものではないけれど、"エナ"に贈る最初のプレゼントは、これしかないと思ったんだ。

 喜んでくれると、嬉しい』


「忘れてるわけ、ないじゃないですか……」


 小さくつぶやいて、手を伸ばして花を手に取る。


 よくよく見ると、長かったり短かったり、茎の長さも不揃いだ。手に取ったら、巻いてあるリボンが緩くて花はバラバラに落ちた。でもそれが、殿下自身の手でやってくれた何よりの証拠のように思えた。


 こんなものが贈られてくるなんて、まったく想像もしていなかった。顔が、何だか熱い。


「……どうしよう、嬉しい」


 初めて会った日のことが思い浮かぶ。あの時は、ただ純粋に嬉しかっただけだった。でも今はそれだけじゃない。


 心臓のドキドキが、止まらなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ