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第二部 第十二章 見つけたモノ

 そして再び……。

 ここは祥達の学校。この暑い最中、校庭ではまだ陸上部が、否、それだけでなく他の部活の者達が、一生懸命練習に励んでいた。

 勿論彩花もまだそこにいて、少し遠く離れたテラスの上で、ぼけっと座ってみなの練習姿を見つめており……。だが、

 ……退屈。

 思わずこぼれてしまうそんな気持ち。

 そう、彼女の目的は祥、なのであったから、彼がいない部活など、見ていても仕方がないといったところなのだろう。

 それを示すよう彩花は、

「はぁ」

 ため息をついて時計へと目をやってゆき……。そう、その時刻は、

 三時、か……。

 恐らくもうこれは、

 ああ、やっぱりこないのか……。

 明らかなるそれを確信すると、彩花は立ち上がって皆の練習を見ている兄の元へと近づき、

「お兄ちゃん、私、今日は早めに帰るね」

 そう切り出してゆく。すると、それに海斗は呆れたような表情をして、

「ほぉ、奴がいないと、見ている価値もない、ってことか?」

 図星をつかれた彩花、思わずといったよう、ぷっと頬を膨らませ、

「もう、お兄ちゃん、ったら」

 だが、真実は真実なので否定することもできず、ちょっとむくれた感じで彩花は兄の言葉への不満をチラリ表してゆくと、

「これ、差し入れの残り、この後また休憩があったら、みんなに配って」

 それに海斗はうなずいて、彩花から差し出されたタッパーを受け取ってゆく。そして、

「わかった。で、もう今から帰るのか?」

「うん。しばらく夕飯も手抜きだったし、今日はこの時間だから、しっかり作れるかな」

 すると、その言葉に海斗は、それは嬉しいね、と言い、

「じゃあ、気をつけて帰れよ」

 そう気遣いの言葉を彩花にかけてゆく。

 それに、彩花は返すよう笑顔でうんとうなずくと、

「うん。じゃあ、お兄ちゃん、あと頑張ってね」

 そう言って、彩花はその場から立ち去っていった。

 段々小さくなる彩花の背中を見送る海斗。それを見つめながら、

 ……二人が出会えば、もっと早く近づいてゆくと思っていたのに……。

 意外にも祥の方が、あまり関心ないような風なのが気になった。

 それはホッとすることでもあったが、計画の為には、予想外ともいえるもので……。

 困ったな……。

 このまま二人、距離が縮まらず、新学期に突入するのは避けたい気持ちもあった。

 そう、近づいて欲しくないが、近づけなければならない、相反する気持ち。それに煩悶しながら、これを一体どうしようかと、頭を悩ませてゆく海斗なのであり……。


 それから彩花は、重い気持ちも手伝って、のったりとした足取りで家へと到着した。

 そう、せっかく一生懸命差し入れも作ったのに、すべてが徒労に終わってしまって。全く、その労力の中には、時間というものもあり、それさえも無駄にしてしまったような気持ちになって……思わず彩花の口からこぼれるは、大きなため息。そして思う、自分と祥との関係を……。

 自分はこんなに好きなのに、そしてその気持ちを精一杯伝えているつもりなのに、全く彼は答えてくれない。

 縮まない距離に再び彩花はため息をつき、

 彼、私のこと嫌いなのかな……。

 そうして、彩花は祥のことを何も知らないことに思い至ると……。

 知っているとしたら、名前と、図書館で見たあの住所ぐらい。電話番号やメールアドレスすら知らない。

 私って、私って……と、そんな浅い関係だったことに彩花は気づき、自分は何だか彼から拒絶されているような、どこか惨めな気持ちになる。

 そうして、もっと彼の気持ちが知りたい。自分の気持ちも伝えたい。そんな思いになり、今すぐにでも連絡を取りたくなった彩花、どうすれば彼と話せるのかと、頭を悩ませる。そうして思い至ったのが、

 あ、お兄ちゃんなら電話番号知ってるかもしれない! 部活の名簿とかがあれば、携帯は無理かもしれないけど、自宅の電話番号くらいは……。

 我ながらいいひらめきと思い、彩花はその名簿を早速探すべく、海斗の部屋へと向ってゆく。

 そして……。

 この家には今自分以外誰もいない。だからそんなことする必要は無いのだけれど、何か悪いことをしているような気持ちになって、そろりそろり、彩花はその部屋へ音も立てずに入ってゆく。すると……そこにはいつもの奇麗に整頓された部屋が広がっている、と思いきや……。乱れた布団、脱ぎ散らかされた衣服、床に散乱する書類。奇麗好きな海斗からは想像できない光景が彩花の前に広がっていたのだった。

 そうして思い出す、今日の朝の出来事を。そう、今日は午前中、学校の、教師達の会議があったのだが……。どうやら寝過ごしてしまったらしい、遅刻、遅刻といいながら、朝食も食べずに海斗は家を飛び出ていったのだ。

 それでこの様か……。

 彩花はため息をつくと、これを片付けてあげようかどうか、頭を悩ませる。そう、掃除機はいつも彩花がかけているのだから、そうすることになんら問題はないだろうと思って。だが……今は内緒の忍び込み、それがばれるのはなんかばつが悪いような気がして……。悩み悩んだ末、結局そのままにしておくことにする彩花。

 そうして、家捜しを始めるが……。名簿等の入っている場所は、掃除をしている時に目に付いて、大体ここだと分かっていた。

 そう、一番大きな本棚の一角に、卒業文集だの、明翔高校住所録だの、名刺ファイルだのそういったものが並んでいる箇所があったのだ。

 きっとそこに違いない、そう思って彩花は真っ先にその本棚に向って、その一角をごっそりとって一つ一つ調べてゆくが……。

 ない。

 確かに色々な住所録がそこにあることはあったのだが……残念ながら、陸上部の名簿はそこから見つかることはなかったのであった。思惑が外れて、大きくため息をつく彩花。そして、ならば徹底的に探してやると、逆に発奮した気持ちで、別の本棚、机の上……と色々な場所を調べてゆき……。

 やっぱりないや、名簿……。

 ならばと、今度は机の引き出しを見てゆく彩花。

 そう、まずは一つ目の引き出し……二つ目の引き出し……と。だが……名簿は見つからない。そして、少し苛立った気持ちで、彩花は三つ目の引き出しに手をかけてゆくと……。

「ん?」

 開かない。そう、開かないのだ。

 どうしてだろうと、その引き出しをよく見ると、そこには鍵穴があって……。

 鍵が、かかっているのか。

 鍵をかけてまでのモノ。いった何が入っているのかと、ちょっと中身が気になる彩花だったが……。だが、そこまでプライバシーに踏み入るのはどうかと、彩花は考えを思いとどまらせる。そう、それに第一、まず探すべきは名簿の方であったから。名簿程度のものが、鍵をかけるような所に入ってないだろうと言い聞かせ、彩花は次の引き出しへと移ってゆくと……。期待していた引き出し、だが結局、そこから名簿を見つけることは出来ず……。

 そうして大体の場所を探しつくした彩花、

「はぁ……」

 自分は一体何をやっているのだろうという気持ちになって、ベッドに腰をかける。そうして、落胆と共にゴロンと横になると、

「ん?」

 横になったその右側、そこに何かがあって、コツンと彩花の頭に当たる。

 なんだろうと気になって、それを手にとって見ると……。

「本?」

 そう、それは革のカバーがついた一冊の本のように思えた。

 だが、あまりにも古いそれ、タイトルすらそこには書いておらず……。

 一体なんなんだろう、そう思って、彩花は好奇心からその表紙を開いていってみる。すると、

 日記。

 まず目に入ったのはこれだった。流麗な手書きの文字。そう、これは本ではなく、日記帳だったらしい。

 兄のものだろうか、そう彩花は思うが、それにしてはカバーやら中身やらがやたらと古ぼけていた。それに疑問に思って、彩花は次のページを開いてみると、

 一九二五年二月五日

 という日付が打ってあった。

 それを見て仰天する彩花。

 一九二五年っていったら、大正ぐらいの時代じゃない?

 それに、更に好奇心がわいてくる彩花。何でこんなところにこれがあるのか、一体誰のものなのだろうか、そういったことも勿論分からずに。そして、その興味のまま彩花は先を読んでゆくと、


 今日、東京から別荘のある烏丸川へとやってきました。

 最近喘息が酷くなっていたので、転地療養と言うことです。これで少し症状が良くなるといいのですが……。ですが、申し訳ないのが柊馬しゅうまさん。仕事の関係でこちらに移ることは当然柊馬さんには出来ません。それでも、なるべく週末には来るようにすると、言ってくださっているのですから……。

 病弱な、こんな私でももらってくださったのですから、感謝しなくては。

 今日から始まる新しい生活、続くかぎり日記にしたためてゆきたいと思っています。


 ふうん、と思う彩花。

 ざっと読んだ感じでは、喘息もちの奥さんが、旦那さんと離れて、転地療養に来たということであったが……。どうやら、その新しい場所での生活を日記にしたためようということが、この最初の一ページから察せられる。

 そう、まずは最初の第一歩といったところだが……期待の先へと進む前に、ふと思ったことがあり……。

 別荘のある烏丸川って……この前お兄ちゃんが合宿にいった所だ……。

 思い出して、偶然の一致に……かどうか分からないが、その一致に驚きを覚える。

 そうして、次のページ、次のページと、思わず夢中になって彩花は読んでゆくと、

 ふむふむ。

 ほぼ毎日、その日あったことが、そこにはごく簡単に記されていた。だがそれは、どうやらあまりかわり映えのしない生活らしく……。彼女自身も少し退屈を感じているようで、文章の中にその気持ちがありありと表されていた。読んでいる彩花も、最初は人の秘密をのぞくようなな気持ちにドキドキしていたが、同じようなことがあまりにも続くと、流石に退屈になり……。

 もう……いいかな。

 そう、そう思ってそろそろ閉じようかと思った、その時、


 一九二五年三月十三日

 今日、隣の別荘に人がいるのを自室の窓から見かけました。誰もいないと思っていたのに、人がいると思うだけで、少しワクワクした思いになります。もしかしたらお知り合いになれるでしょうか? この単調の日々から逃れることが出来るでしょうか? それを思うと、少し胸が弾みます。

 見えたのは、私より少し年上くらいの男性。大型の犬と共にボール遊びをしていました。なんだか、微笑ましい光景です。


 お、と思った彩花だった。大きな何かがあった訳ではないが、今までとは違う、新たな展開のようなものがそこから見えて。それに、もうやめようと思った考えもどこかへ吹き飛び、彩花は次、また次のページへと目を移してゆくと……。


 一九二五年四月六日

 なんていうことでしょう。今日、テラスでお茶を飲んでいる時、隣のあの人が、声をかけてきたのです。

 それは、しばらく隣に住むことになった……という、単なる自己紹介でしたが……。ですが、あまりに嬉しくて、私は思わずこのお茶に誘ってしまいました。

 それは、自分でも信じられないくらいの大胆な行為。

 少し、胸がドキドキしました。

 でも、彼は了解してくれました。

 笑顔がとても愛らしい……そんな言い方は失礼かもしれませんが、愛らしい方です。

 名前は、二階堂佑にかいどうたすくさん。

 とても気さくで、そのお茶を飲む間、とても楽しいひと時を過ごすことが出来ました。これは退屈の毎日だった私にとって、久し振りのこと。

 ああ、今もその時のことが思い出されます。

 胸がドキドキしてしまいます。

 この気持ちは一体なんなのでしょう。


 それから、この日記の内容は一変した。そう、窓からその姿が見えた。今日は話すことが出来た。にっこり笑ってくれた……などなど。隣の別荘に住む、彼のこと一辺倒になったのである。

 これは明らかに、恋、だった。

 そう、読んでいるだけの自分にもそれは伝わってくるもので……。

 そして、自分も恋をしているという現実、そのせいか、共感できる部分もあり、何故か既視感のようなモノを感じる部分もあって……。

 だが、この時まではこれを恋とは、彼女は察していないようだった。いや、旦那さんの手前か、認めてないと言った方がいいだろうか。

 だが、とうとう、


 一九二五年五月七日

 どうしましょう。どうやら私は恋をしてしまったようです。

 あの人を見ると切なくなる気持ちを抑えることが出来ません。

 政略結婚だった私の、初めての恋。

 あの人は私のことをどう思っているのでしょうか?

 でも……でも……ああ、もっと書きたいことは色々あるのに、うまく考えがまとまりません。

 ただ気になるのは……柊馬さん。私は彼を裏切っているのでしょうか?


 そうして、それから二人は急接近し、頻繁にお茶に誘ったり、自宅の夕食に誘ったり、お互いに色々誘い合っていることが書かれていた。

 それに幸せを感じているこの日記の人物。旦那さんへの罪悪感もあったが、今は楽しさのほうが勝っているようで……。そう、文にも弾んだような気持ちがありありと表れており……。

 だが……。

 それは、七月の日記で変わっていた。


 一九二五年七月二十四日

 今日も、佑さんのお宅に夕食を誘われました。料理人が変わったので、試しに食べにきてみないか、とのことでした。私はいつものように、是非と、そのお話を受けると、少しおしゃれをして、隣人宅へと行きました……。ですが……。ああ、もうこれ以上は書きたくありません。

 やはり、私は罪な女です。

 大事なことを忘れて浮かれていた馬鹿な女です。

 まさか、まさか、柊馬さんが、こんなに早くやってくるとは!

 予定では明日だったはず。

 それなのに……。

 お怒りも最もです。夫ある妻が一人で若い男性の元に……。

 ごめんなさい、ごめんなさい……。


 そのページは涙で書いたのか、所々円形に文字がにじんでいた。きっと、本当はもっと書くことがあったに違いない、だが、日記にある通り、書きたくない気持ちであるらしく、後はひたすらごめんなさい、ごめんなさいと続くばかりで……。

 そして、

 あ……れ?

 何故か、この日記の場面に既視感を彩花は感じたのであった。今まで書かれてたように、自分の過去に似たような出来事は全くない。それなのに……。

 なんで? これって、不倫……だよね。

 どうやらそれがばれた、修羅場らしいが……。

 心当たりがない彩花は、ただ疑問に思うばかり。そうして、その先はどうなったのかと、気になってベージをめくっていこうとした時、

 ガチャリ。

 不意に、扉が開いた。そしてそこから入ってきたのは……。

 そう、兄の海斗である。

 いつの間にやら時間が経ち、彼が帰宅したらしい。

 思いもかけぬその出来事で、彩花の体は硬直し……。そして、ハッとして我に帰ると、

「あ、あのね、えーと、陸上部の名簿を探していて……柚月君と連絡取りたくて……。それで……」

 予想外の出来事に、同じく呆然としていた海斗。目は、彩花が持っている日記へと釘付けになっており……。それに、まずいことをしたかと思った彩花、慌てて日記を閉じ、

「あの……これは……ここに置いてあって……」

「読んだのか、それを!」

 彩花の言い訳を遮って、海斗がそう言ってくる。

 それは、海斗にしては珍しい剣幕で、彩花は飛び上がるような気持ちになると、

「ちょっと……ちょっとだけね」

 本当は大分読んでいたのだが、嘘をついてそう言う。すると、

「どのくらい読んだんだ」

 表情もかなり険悪な海斗。そこから、やはり見てはいけないものを見てしまったらしいことを彩花は察し……。だが、そんなに悪い事をしてしまったことに実感がわかず、どこか意外な思いがわき上がる中、

「えー……十ページぐらい、かな?」

 あまり沢山読んだと言ってはいけないような気がして、適当にそんな嘘のページをいってゆく。すると、

「そうか……」

 どこかほっとした表情を見せる海斗。そうして、今度は焦った様子で、彩花に近づいて、慌ててその日記を取り上げると、

「もうこんなことをしちゃいけない。絶対にだ!」

 今までにない怒りだった。それに彩花はしょぼんと肩を落として、

「はい……」

 そうして、

「でも、この日記って一体……」

 まだ少し納得がいってない彩花、この日記はなんなのか尋ねようとする。すると、

「お前には、関係ない。昔の……ゆかりの人の日記だ」

「え、昔のっていうと……ご先祖様? もしかして、もしかしてそうなの?」

 だが、海斗はそれには答えず、

「いいから、もうお前は行け!」

 問答無用の遮断であった。それに不審に思う彩花だったが……もうこれ以上は兄を怒らせるだけと察して、まだ日記が気になりつつも、仕方なくここから出て行った。

 そう、本来の目的だった、陸上部の名簿の場所も聞けないまま……。


 そうして扉は閉まりゆき……彩花が去ったのを確認して、海斗は唇を噛み締める。

 不用意だった。不用意だ。まさか彩花があれを読んでしまうとは……。

 そう、昨晩、あの日記を読みながら、そのまま寝てしまったのだ。そうして起きてみたら、もう学校へ間に合うかどうかギリギリの時間。日記の存在が頭からぬけてしまって、そのままにしたまま、部屋を飛び出すことになったのだ。

 そう、まさか彼女が自分の部屋に入ってしまうとは知らず……。

 彩花に思い出して欲しくなかった海斗にとって、これは避けたかった事態だった。否、確かに以前は……彼女に過去を思い出して欲しいと思ったこともある。だが、今は状況が違った。二人出会ってしまったこの状況、思い出せば、かつての奴への恋心も思い出すに違いない。余計思いが募るに違いないのだから。

 そう、それは絶対避けなければいけないことだった。

 なので、日記もいつもは彩花の目に入らないところに隠してあったはずなのに……。もしかしたら、このことによって、過去の記憶があおられてしまったかもしれない。思い出すきっかけを与えてしまったかも……。

 そして……。

 そう、その予感は半ば的中したものであって……。否、海斗のその行動が、余計彩花の心の中の納得のいかなさをあおってしまって……。


 海斗の部屋を出て、夕食の準備を始めた彩花、心の中はあの日記のことでいっぱいだった。中でも一番気になったのは……。

 あれから、彼女はどうなったんだろう。

 不倫がばれたところでの中断。その先が気になるのも当然といえば当然である。そしてもう一つ、

 私、あんな経験無いんだけどなぁ……。

 感じた既視感も不思議に感じて心に引っかかっているのであった。

 それにしても……。

 なんで海斗はあんな剣幕で怒ったのか、それが納得いかなかった。

 無断に部屋に入り、名簿の為に家捜ししてしまったのはいけないと思うが……。更に勝手に、日記を読んでしまったこともいけないとは思うのだが……。

 モノは本人ではなく、全然知らない、もう死んでしまっているだろう人の日記である。別にあそこまで怒らなくても……と。

 とにかくあの件で、陸上部の名簿のことは余計聞きづらくなってしまった。それについても残念な思いで気落ちしてしまって、

「はぁ」

 何もかもが上手くいかない自分に、思わずため息が漏れてしまう彩花であった。

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