俺、味噌汁を作る。
何も無い空間から、突然物体が現れる。そんなことが有り得るのだろうか?しかし今現在、俺の膝の上には「味噌」が乗っかっている。あのスーパーとかで売っている味噌だ。
「なんで味噌なんですか……?」
ヘレナが不思議そうに尋ねる。俺はヘレナに先程見た夢のことを話した。
「それはアサギリさんの勝手な夢じゃないですか。それで味噌が出てきたからって、現実世界で味噌が現れることありますか?」
「でも、それ以外に味噌が出てくる理由がないんだよな……」
しばらく話した末、とりあえずこの味噌が大丈夫なものか調べるために味噌汁を作ることにした。深夜3時に味噌汁を作っている人は後にも先にも俺一人だろう。すると、レナが起きてきて俺らの料理を見て、眠そうに話しかけてきた。
「アサギリさん……何作ってるんですか?」
「あ〜、ミソルを作ってみてるんだ。」
「レシピが分かったんですか!?」
レナは突然大きな声を出し、興奮した様子で俺達の作っている味噌汁を覗き込んできた。
「私、飲んでみていいですか?」
「いいけど……」
俺がそう言い終わらないうちにレナは味噌汁を飲んでしまった。
「ど、どう?」
俺がそう問いかけると、レナは息をはいて一言いった。
「温かい……ポカポカする……」
次の日、俺らは味噌汁をミソルとしてメニューとして売り出した。俺はミソルを飲んだあとの害を気にしていたが、少しだけボーッとするだけであまり害はないようだった。
俺らの売り出したミソルはたちまち街中で話題となった。依頼主のガフさんはありえないといった表情を浮かべながらミソルを飲んでいたが、怪訝そうな顔からボーッとした表情に変わるのを繰り返しており、ヘレナがそんなガフさんを終始笑っていた。
なにはともあれ伝説のミソルを作った店として、アサギリ書店は有名になった。レナが持ってきた国が発行している新聞にも俺らのミソルの話は載っており、お客さんも安定して入っていた。
そんなある日、ある客が来店した。
「いらっしゃいませ!」
ヘレナがそう言っても、その客は黙りこくったまだった。全身を黒いマントで覆い、フードを被った明らかに怪しい風貌をした彼はカウンターに手紙を置いて去っていった。俺が追いかけたその時には街の人混みの中に紛れて消えてしまっていた。
「なんなんですか、今の人?」
「さぁ……なんか手紙置いていかなかったか?」
「開けてみますね。」
すると、突然奥から声がした。
「だめだめだめだめ!!!」
レナが慌てて出てきてヘレナの手から手紙を奪った。普段温厚なレナが大きな声を出したことに驚いたヘレナはしばらく固まってしまった。
「どういうことなんだ?」
俺がそう尋ねるとレナは神妙な面持ちで言った。
「これ、殺人予告です……。」
「「は?」」