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小さな書店
俺は朝霧悠真。町で小さな書店を営む30代の書店員だ。小さな時から本が大好きで、将来は本屋さんをやるんだと意気込んでいた。それが今では現実となり、客は少ないがいつも来てくれる常連の女性やご老人のためにも毎日まじめに働いていた。
そんな俺はいま炎に囲まれた書店で1人倒れている。閉店作業中で店の奥にいた俺は気が付かなかったが書店内で火事が起きていたらしい。小さな書店なので火の回りは早く、出口を塞がれた俺は気づいたら倒れていた。
ふとした瞬間、誰かの声が聞こえた。助けが来たのだろうか。いや、にしては早すぎる。たった1人のアルバイトの子は今日は早めに帰したし、ここは田舎の小さな町。消防団が来るにはまだかかるはずだ。
その声じょじょにはっきりとし、意識が遠のく中耳元でそっと囁いた。
「大丈夫です。あなたはこちらでもやっていけます。私と共に世界を作りましょう。」
俺はその言葉の意味もわからないまま意識を失った。