何とか起こさないといけません。
「アレク、アレク」
慌てた様子で大きな声で名前が呼ばれる。
目を開けると、マティスが心配した様子で、アレクの額に手を当てていた。
「マティス、ありがとう起こしてくれて」
アレクはマティスの声を聴いて、今は夢の中ではないと安心した。
あのまま地下牢に入っていればどんな怖い目にあわされていたか予想がつかない。
「うなされていたから、二時間しかたっていませんでしたが、起こしました。何があったのですか?」
アレクを心配しながら、夢の内容を聞いてきた。
「ミラ様が見つかりはしたが、夢中死願者で俺の作った夢を乗っ取って書き換えた。」
「そんな、幸せな夢の中で死にたいという願いは理解できますが、本当に実行しようとしているのですか?」
マティスは目を開き驚いた様子で聞き返す。
「ああそうだ。夢で終わらせてといってた。」
アレクは、強制的に起きたせいで、めまいと頭痛を感じ、頭を抱える。
その様子を見て、マティスは、諭すような優しい声でアレクに話しかける。
今の状態のアレクには、脳に言葉を伝える伝心魔法は負担にしかならないからだ。
「このまま彼女が、暴走状態のままでなくなってしまう。
睡眠と夢魔法での抑えが聞かなくなる。
このあたりが更地になってしまう。」
それほど、暴走者の夢中死は危険なのだ。
「それにミラ様は少し夢魔法を使えるようで、夢を作れるほどの技術はなかった。
けれども、俺が作った夢に少し夢が覚めない細工を行ったようだ。」
「もう、だったら夢の中に潜ることはやめましょう。
彼女が見ている夢はもうアレクが管理できるものではない。
ガラス球を割って、起きて、暴走状態になっても、従業員たちと私が本気を出せば何とかなるでしょう」
マティスはアレクの手から、ガラス球を取り上げる。
「そんなことをしたら、たぶんしばらくマティス達が宿を経営できなくなる。
まだ手段はあるから。」
そう言ってアレクは、夢の中であった出来事を話す。
「二人姉妹で一人兄がいる家でなおかつ妹がすでに亡くなっている家。」
「うん、あと食事の内容や文化は、この国の東の辺境と似ていた。」
「それで、絞り込んで、彼女の兄を探して。たぶん兄は生きているはずだから」
アレクは必ず夢を作るとき、目覚めるルールを作っている。
一つは、満足したらおきること。
二つ目は八時間が過ぎれば覚めるようにしていること。
三つ目は身内の声でおきるようにしていること。
ミラ様はどうやら、少し才能があった夢魔法によって、二つ目を消したか、変えてしまったようだ。
三つ目を変えていないことを願いながら、アレクは彼女の兄を探すことをマティスにお願いした。
「マティス、俺はいったん寝る。つかれた。」
アレクは、目を閉じて、夢を見ない眠りについた。




