偽宇宙
大晦日、本来なら祝う日であったがフィロたち本部の人間たちは頭を抱えていた。
「クリスマスと同じような物は来ないだろうな……。」
「分かりませんね~」
「対策しようがないだろうよ」
アウム、フィロ、エトアル、俺の四人が話しているのはクリスマスのことだった。本来なら祝福なのだがどうにも違和感が拭えない。そして、あの声は皆が聞こえていたのに俺たちの察知能力に引っかからなかったのだ。
「天の声の関係者か?」
「それ以外いないだろ。」
「だよなぁ」
今までのことから、世界の理を大幅に変える能力など魔物を除いてないことが分かっている。もしかしたら、あるのかもしれないがスキルを与える能力はそれこそ天の声、もしくは同じような者以外できないはずだ。
「本当に面倒くさいなぁ、各自の判断で良いか?」
「それしかないんじゃないですかね」
「だな」
俺たちは一回思考を放棄してとりあえず新年を祝うための準備を始めることにした。
「蕎麦配るか?大量にあるが。」
「頼む、代金は後ほど払う。」
別にいんだけどなぁ。貰え得るならもらうが。
俺らの存在のことはこの数日の間に知れ渡っている。大体納得してくれた。
そして、深夜十二時前、いよいよカウントダウンが始まった。
「新しい年か、干支は何だっけ?」
「辰年だ。」
「龍か……。」
「速く、この混乱が終わることを願うよ。」
「そうだな」
『10』
『9』
『8』
『7』
『6』
『5』
『4』
『3』
『2』
『1』
「「「明けましておめでとうございます。」」」
辺りいっぱいに声が広がった。
そして、同時に花火が撃ちあがる。
これがエトアルのサプライズだ。
「少しでも明るくなればいいという思いを込めました。」
「凄いなぁ」
「まったくだ……ッ!?」
その花火の音の中に突然別種の爆発音が混ざった。
「エトアル、今のは?」
「知りませんね」
「ということは……。」
「敵だな。しかも、人間だ。」
「すぐに向かいましょう」
俺、エトアル、フィロ、メランがいち早く察知し走り出した。
「植物たちを先行させる。」
「了解した。」
そう言いながら俺も【植物馬】を出した。
「それ使ってくれているのか。」
「便利だからな。」
フィロもエトアルを乗せている。メランも一匹持っている。
拡張された五稜郭の一角に穴が開いていた。あたりを見ると七面鳥に乗った人間が暴れている。
応戦しているのは自警団だろうか?
【樹海】
【朱雀】
【星剣】
フィロが【樹海】を出している間に俺らは獲物を取り出した。
「聞きたいことがある。生け捕りにしろ。」
「「了解」」
【魔符:紫電檻】
後方に檻を設置し逃げられないようにする。
敵は、樹海が現れた瞬間に知ったようで少し慌てている。
【重力】
「加勢します」
そんな時に通常有り得ないような重さのものが乗っかって来たらどうなるだろうか。七面鳥に乗っているとはいえ普段の動きはできなくなっただろう。
俺が連れてきた3人組が遅れてやって来た。それぞれの武器を構え飛び掛かっていく。
「エトアル、こいつらはどこのものだ?」
「経済都市小樽、ここと並んで大型の都市圏で人間が大きく暮らしている場所です。」
「何でそんな奴が来るんだ?」
「方針の違いです。こちらでは自警団と一般人の差別はありません。しかし、小樽では自警団いや、小樽防衛軍と一般人には大きな隔たりがあります。基本的に一般人に対して何をしても良い決まりが出来ています。」
「なるほど。」
「それに対抗する組織もいるそうですが、何分力不足で……。それで、方針の違うここを警戒し時々兵をよこしてきます。騎兵ですので捕まえることが難しいのです。」
「おい、【三日月】聞いていたな。」
「はい。」
「すぐさま兵の準備をしろ。帝国領の【五稜郭】に喧嘩を売ったのだ、どうなるか見せてやろう。」
「はっ」
あ、そういことになるのか。う~ん。
「フィロ、一応俺が視察を兼ねて小樽に降伏を促す使者としていくか?」
「ああ、頼む。ただ、メランは貸してもらうぞ。対人特化の暗殺者に調べてほしいところがあるからな。」
「小樽も混ぜた方がいいぞ。情報はあいつの分野だ。」
「了解だ。それと、いい加減こいつらを倒さなければな。エトアル、力を見せろ。」
「御意。」
殆どの騎兵が倒されたのにもかかわらず動じない騎兵が一人いた。
【領域魔法式:【鶏の舞踏】】
「領域魔法か、どうする?」
「問題ないです。」
【領域魔法式:【偽宇宙】
エトアルを中心に無と輝きが混じる空間が生み出される。
本来なら凶悪なものを生み出すはずのその魔法式は発動する前に終わった。
エトアルの空間から無数の光が溢れたのだ。
その光は光線となって騎兵を襲う。
致命傷を避け、光線は騎兵の体を貫いた。
「さぁ、反撃ののろしを挙げましょうか。」
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