蓮のいない日常{5}
裕也と奏斗、鬼塚の戦いを遠くから見ているものが居た。
彼のスキルは【祭司祭】今回、彼はスキルの確認をしようとしていたとき謝って変な方向に飛ばしてしまったのだ。
それがあの事件の真実である。
「ふ~、良かった。」
彼に悪気はなかったのだ。彼は善に傾いている人間だったし、あのことが起きたときには顔を真っ青にして倒れてた。
そもそも、レジェンドで、物凄い意志が込められていない技などあのような変化が起こる方がおかしい。つまり、彼の技を増幅させたものがいる。
*
ジークは森の中を走っていた。
すると突然何かにぶつかった。
「ナ、ナンダ?」
「それはこちらのセリフだぞ。ってゴブリン?」
「ゲッ、オオカミのジョウイシュカ……。」
【灰牙】
【流水斬】
全く同等の力が加わり相殺される。
「ム、手ゴタエガナイ?」
「ゴブリンごときが……。」
狼が忌々しそうに吐き捨てるとそれをジークが否定した。
「我ナはジーク、小鬼の英雄王ナリ」
「ふむ上位種、しかも特殊進化か……。まぁいい。」
狼も名乗り返した。
「我の名はグリース・アントゥ。孤高の巨狼である」
「ナルホド、名持チカ。戦イガイガアリソウダ」
【孤城】
【鬼人化】
小さな城がたち、反対側では鬼が現れた。
【鬼断】
【空蝉】
ジークの剣が迫るがグリースは体をねじることで避けた。
そして、そのまま手と足を使い。ジークに追撃を入れていった。
突如、ジークの攻撃手段が変化する。
今までの一撃必殺の攻撃から速さを意識した攻撃に変わったのだ。
「やるではないか。」
【雲海】
グリースは形勢を立て直そうとするがジークによって雲が晴らされて行ってしまった。
「なめるな」
【孤色・灰】
【巨灰狼】
【断頭鬼人】
グリースとジークは同時に走り出し、最強の技を放とうとした。しかし、
「グルゥゥゥ」
「ぐるぅぅぅ」
同時に二人のお腹が鳴ったのだ。
あまりのタイミングに思わず敵の前にも関わらずずっこけてしまう二人であった。
「…シバラク休戦ニシナイカ」
「それが良いな。」
二人には相手が嘘をつかないことを知っている。たとえ交えた剣閃は少なくてもすでにお互いの気質ぐらいは分かったのだ。
地面に腰をつき、各自、入れている飯を取り出して食べ始めた。
「言い戦いぶりだな。」
「光栄ダ、シカシ出来るモノナラ万全ノジョウタイデ戦ってミタカッタゾ。」
「同感だ。ゴブリンがそこまで強くなるとはな。人間といい、魔物といい、侮ることはできん。」
「オマエハ、ツヨイニンゲンハ知ッテイルノカ?」
「ああ、ついさっき戦った人間は強かったぞ。油断したとはいえ我にあれを使わせたからな。」
「キグウダナ、我が輩モサッキ強イアイテトタタカッタゾ……。」
「面白いな。強さと言い境遇と言い我たちは似ているな。」
「ソウダナ……。」
「我と手を組まないか。」
「ナゼ?」
「人間は強い。個の力では魔物はいつか倒れることになるだろう。そのために手を組みたいのだ。」
「ナルホド、……イイダロウ」
グリースとジークは手を重ねる。
「我の名はグリース・アントゥ」
「我ナはジーク、小鬼の英雄王ナリ」
「「自らの名において同盟を結ぶことを誓う。」」
その時、そこには絆が生まれた。そして、それは改変をもたらす。
《【一匹狼】が【一匹狼】に変化します。》
これは後に、王となった二種の魔物の物語である。