蓮のいない日常{2}
3。
同時刻、裕也らがいる反対側でも異変が起こっていた。
「まじで、なんなのよ。」
鬱陶しそうに髪を巻き上げるのは月見美穂である。その横で指揮棒を振っているのが藤原梓だ。
「そんなことを言ってても何も変わりませんよ!!」
「それは分かっているのだけれど……。」
「ならば今は会話に無駄な労力を書けないでください。」
梓は美穂をいなしながら状況を把握した。
(なぜ突然、魔狼が現れたのかは知りませんが厄介ですね。裕也たちからはゴブリンが出ていけないという話を聞きましたが……。なぜゴブリンごときに手間取っているのでしょうか。おっと学習しない個体がこちらに来ましたね。)
【火よ狼を燃やせ】
彼女がそう告げると彼女の周りから光が出ていき狼に襲い掛かった。
「良い子たちです。【火よさらに燃え上れ。】」
火が勢いを増していった。
「相変わらず。あんたのヤバいわね。」
頬を引きつらせながら美穂が言った。
「誉めったってなにも出ないですよ。それよりも速く行ってきて。」
「誉めてないのだけれど……。まぁ良いわ。」
彼女が構えるは細剣しかし、そのつかには少し穴が開いていた。
「鳴け【死音】」
対象を魔狼に絞り放たれた範囲攻撃は聞く者を魅了する。
直にくらった美穂周りの魔狼は瞬間的に息絶えた。
「全く、まだ生きているの。本当に面倒くさいわね。」
【死者の音】
響くのは先ほどとはまた違った音。不気味でいてなぜかそれが心地いいと感じるその音は彼女に敵対するもには体をを蝕み、不気味な地獄からの音へと変化する。
「あらかた消し終わったかしら。」
「大丈夫だと思います。皆さんお疲れさまでした。」
一緒に戦った戦闘班の人たちをねぎらっていると悪寒を感じ梓は後ろを見た。
そこにいたのは灰色の巨狼だった。
その物の名は【一匹狼】通常一匹狼は群れから追い出された負け犬のことを指す。しかし、彼は違う。彼は自分のスキルを見たとき自分から群れを去ったのだ。
魔物にもスキルは存在する。特に彼の家系は特殊であった。
「我の名はグリース・アントゥ。曇りの巨狼である。」
「喋った?」
「ていうか名有りですか……。」
周りの驚きを無視して彼はその中で一番強い二人に話しかける。
「そこの二人。我と決闘をしないか?さすれば我が勝ってもお前たち二人の首だけにしてやる。」
「どうする?」
「やるしかないでしょ。この狼やばいよ。」
「そうですね。受けましょう。」
上位種との格の違いを見た二人はなるべく被害を少なくするために決闘を受けた。
「有難い。正直全員でかかられてもあまり変わらぬのだが鬱陶しいのはあるからな。」
「言ってくれるね。」
一定以上の強さを持たぬものは数に入らない。それは戦闘班の者にとっても同じ考えで、だからこそ力になれない自分達を悔やんだ。
かくして戦いが始まる。
「では行くぞ。」
【刺音突】
先に攻撃したのは意外にも美穂だった。
名の通り音速で走り出し、突き刺す。しかしそれは毛皮にすら触れることが出来なかった。
「結界か……。」
「ッそれならば【灯よ、私たちを妨げるものを除外せよ。】」
光が結界をどけていったが狼に届くことはない。
「やるな。しかし遅い。」
次の瞬間狼は美穂の後ろにいた。あまりの速さについていけなかった美穂は気づいたら宙に浮いていた。
【雲海】
辺りが雲で包まれ狼の姿が消えた。
「梓。どうする?」
「払うまでです。」
【光よ】
「うむ、相性が悪いな。しかし、その程度量で勝つぞ?」
梓が照らした光は瞬く間に雲で覆われていった。
「頑張るしかないね、これは。」
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