偉大な人間には三種ある。
遅れて申し訳ございません。これにて、一章青森が完結です。以前にもしばらく休みます。しかし、その間は他作品を作ったり、しています。おそらく『廃れた世界の魔石取扱人』、『花火師は空に舞う』、『新作』の順番で行こうと思います。下の作者マイページから見れるのでぜひ見てください。
俺とメランは男の身柄を引き渡してから、城に向かって走っていった。
そんな中、ある店に通りかかかる。するとその前に居た男から袋を投げられた。
「弓だ。いろいろと言いたいことがあるがこれだけ言っておけば大丈夫だろう。耳の穴かっぽじって聞いとけ。」
なんだろ?
「【吸血姫】の本名はイワクラ・サラだ。」
イワクラ……、岩倉!?。おじいさんの孫じゃないか。俺がここに来た要因でもあるぞ……。
ならなおさら行かなくてはな。それにしてもサラか。
「おっさん助かった。」
「師匠の孫さんだ。様子がおかしくなってるから気を付けろよ。」
また走る、城の中に入ったとき、俺たちは【血鬼隊】に囲まれた。
「メラン先行しろ。」
「了解っす。」
メランが迫る集団を気にした様子もなく進む。
勿論止めようと動くが、それは悪手、なぜなら俺から目を離したという時点でそれは死だからな。
「じゃあな」
【粘炎】
これを避けれないものは最初から戦うだけ無駄というものだ。そしてやはりこの違和感。操られているな。
耐えきった者達を一瞬で殺した後、俺はメランの後を追う。
(ヘカテ、念のため準備しとけ。)
<はい。>
長い……、この城デカすぎるだろ。あと敵が多い。
いちいち倒さないといけないのが大変だ。
ほらちょうど目の前にも敵が一人……。一人!?
こういう場合はヤバい。絶対に強いって。
<上位吸血鬼です。B+ですよ。>
へぇ~
【朱雀】
長剣を構え、振りかぶる。
しかし、弾かれた。
ここまでは計画通り。そのままアレッタは無視して行こうとするが。
背後に爆発が起きたのを確認し。振り向いた。
「【爆弾魔】か。」
クリスは笑った。
「へぇ、知ってるのか。」
「知ってるも何も、目の前で仲間を殺したのがお前だからな。」
「敵討ちだったら止めた方がいいぞ。俺は強い。先ほどのお前程度の力では勝てないだろ。」
「そうか、それを聞いて安心した。」
【太陰】
死を刈り取る鎌を呼び出し、走り出す。
【風閃】
下から上に切りつける。
クリスは反応することが出来ずそのまま蹲った。
「偽装に気づかないなんて所詮はその程度か。」
「何!?」
そのまま倒れてろよ。
【青龍】
念のため縛ってから俺はまた走り出した。殺すのは後だ。あいつからは聞き出したいことがたくさんある。
やっと最上階に着いた。
そこに見えたのは異質な光景だった。
部屋の中は血で埋め尽くされメランは倒れていた。
「アレっすか。すまないっす。」
「喋るな。」
メランを回復しながら、俺はサラを睨む。
しかし、その女の目からは色が消え去っていた。
「アレ、あいつは操られてるっす。スキルは【嫉妬】っす。」
なるほどな。……俺、嫉妬率高くないか?
女が殺意満々の光線を放ってくる。
俺はギリギリでそれを躱す。エネルギー的に当たったら死にそうだな、おい。
しばらくそれの応酬が続いたが、突如女は外を向き内側に飛んできた。
そこに現れたのは馬鹿でかい緑色の手。フィロの怪物だ。
「大丈夫か?」
案の定、拳が開かれフィロが出てきた。
「大丈夫だと思うか?」
「いや?見えないね。それよりも俺はどれくらい時間を稼げばいいんだ?」
「10分。」
「大変そうだ。」
俺は技の発動体制に入る。フィロの植物がそれを覆って行った。
フィロはサラへとゆっくりと歩きだした。繰り出される致死光線は避けつつだ。
「前に見たときはこうなっていなかったんだけどな。もしかして、本格的に奪われてしまったのか?」
サラは爪を伸ばし、立ち向かっていく。
【嫉妬の爪痕】
【死の蔓】
爪のような形をした、攻撃が来ようとフィロは止まらない。
このまま倒すかと思いきや、サラの体が赤くなり、いとも簡単に拘束を引き裂いてしまったためフィロはそれを断念する。
サラは異形の形をしたものに変わってしまった。
純粋な身体能力だけで、部屋が壊れていく。
どれだけ植物を伸ばそうとも勝てないその状況にフィロはいら立ちを覚え、焦り始めた。
しかし、その時アレッタから待ち望んでいた福音が聞こえた。
「問題ない」
【本とは一つの世界である】
アレッタはゆっくりとした手つきで札のようなものを出していく。
この領域魔法式が発動できなかった理由は圧倒的な魔力不足によるものである。
しかし、【陰陽師】を獲得したことによって得た、【魔力符】というのは魔力をためて置けるものだった。
これを利用し、アレッタは魔力が余っている時は、常にこの符にため込んでいた。
そして今その努力の集大成が解き放たれる。
この技の権能は、小世界を作り出すことにある。本来なら物理的にそれが現れるのだが、今回は違う。
【嫉妬】のスキルを抑え込むことが出来る世界をサラの中に作ったのだ。
サラが突如崩れ落ちる。それを抱えながらフィロは言った。
「これで終わりか?」
アレッタが答える。
「そうだ。」
しばらくしてサラが起き上がった。
「ごめんなさい。」
目を真っ赤にさせて謝ってくる。
「別にいいよ。」
「過ぎたことだし。」
「ありがとう。」
「それよりも、今は話したいんだ。」
「分かったわ」
「まずはこの町のことだ。サラ、この町乗っ取ってもいいか?」
「いきなり何?と言いたいところだけど。本当に腐敗が進んでいるのね。いいわ。でも理由だけは教えてくれるかしら?」
「ああ、サラは十五歳ぐらいだろ?」
「そうね。」
「その年で、俺のような例外を除けば、こんな大規模な街をまとめるには大変だっただろ。そのせいで自分でも気づかぬうちに、恐怖を使った政治になっていたと思うんだ、一番簡単だしな。それとコレを見てほしい。」
沙羅に渡されたのは白い粉だった。
「麻薬?」
「そうだ。お前が承認していた【喰種】の中にこれを作れる奴がいた。正直俺はお前は疲れているんだと思うんだ。元のスペックは高いだろうがな。」
「そうね。」
「その点俺は問題ない。父親が早くに亡くなったせいで組織を小さいころから運営してたからな。」
「どんな家よ、それ。」
完全に空気と化しているが確かに組織ってなんだよ……。
「まあいいわ。貴方が王になったほうが良さそうね。譲るわ。」
「ありがたい。そして今からこの国は帝国とする。」
「え!?」
ん?どういうことだ?
困惑する俺達を前にしてフィロは話し始めた。
「正直、青森だけにこだわっているとこのまま世界が復興してきたときに敵わなくなるからな。今のうちに東北、北海道、ロシアの一部を領土にしておきたいんだ。魔物とかが攻めてきたときにもこれは有効だ。」
「だから帝国か……」
他んい案があるんだろうが……。まぁ、良いか。関係ないし。
「アレッタは別として。ここで最初の貴族を決めようと思う。」
え!?俺を除くとしたら治療を受けているメランと、治療してる男の人と、サラしかいないんだが……。
「今ここにて、イワクラ・サラを公爵に任命する。よろしくイワクラ殿」
「喜んで」
あっさりとしてるな。男の人全く動じていないが……。
「そして、もう一つ役職をつけたい奴がいる。爺さん。帝国直属の医師になってくれないか?」
「分かった。」
「やっぱり無理か……って今なんて言った?」
「良いと言ったんじゃ。どうせ岩手もこの王国の一部となるのだろ。別にいいわい。ただし器具とかは融通してくれ。」
「勿論だ。」
【神の左手】の人じゃん。
「最後に、メランとアレッタ。仕えなくていいから一代限りの名誉公爵に任命する。」
「喜んで」
フィロが突然窓を開けた。拡声器を使うようだ。
「今からこの国をヴィセロ帝国とする。今のところの貴族はサラ公爵のみだ。皆も武勲を上げよ。」
歓声が沸き起こる。窓を閉めてフィロが転がっていた椅子に座った。
「【伊達】のことなんだが……。」
「分かっているわ、つながりが切れたもの。あの子も馬鹿ね。」
「遺体は持ってきている。後で丁重に葬ってやれ。」
「分かっているわよ。」
「あと、【血鬼隊】だが。殆どが死亡だ。しかし、その中でもまじめにお前に忠誠をささげていたものがいてな。そいつらだけは城に集めている。いいな。」
「ありがとう。」
そういえば、忘れてた。
「サラ公爵、貴方のおじいさんから祝い物です。後で見てください。」
「分かったわ」
「お前のところか?馬車が到着したらしいが……。」
「そうですね。」
「行くのか?。」
「ええ、ただすぐにとは行かないでしょうが。まだ謎な部分もあるしな。それに少しぐらいは公爵に見合った命令も聞くぜ。」
「そうか……、頼らせてもらう。」
俺たちは気が済むまで笑いあった。
休みの期間に出すとすれば、くいの組織潰しや、幼馴染たちの奮闘を書くつもりです。
評価お願いします。
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モチベになります。