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廃れた世界の魔石取扱人  作者: 八咫
青森
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血塗られた町{9}

久しぶりに長いです。

 

樹海(じゅかい)


 何処からともなく木々が生えていき、伸びていく。

 アレッタの嫌がらせに散々魔力を使った女にとってそれを止めるすべもなく、刀を構え、振りかぶることしかできなかった。


【三日月斬】


 その斬撃は綺麗な三日月の形になりフィロを襲う。


 しかし、その斬撃は木々によって飲み込まれ阻止された。


「貴様、こんなことをしたらこの町の人間に自分のことを知らしめるようなものだぞ。なぜ、大々的に力を使った。」


 女が慌てたように問う。


 フィロはそれに構わず木々を生やし森を侵食する。


「それに答えることはないということか。」


【三日月の祝福】


 女は焦っていた。自己強化バフを重ね掛けしてもなお、フィロに攻撃を当てることが出来ていなかったのだ。


【三日月斬】


「またそれか。芸がない。」


 あきれたようにしゃべるこの男に怒りを覚えながらも感情を抑えようと、必死に動く。

 行動と感情が矛盾していることに女は気が付いていなかった。


【十五夜】


【お月見】


【月兎】


 フィロを倒すのを諦めた女は淡々と一矢報いるために準備をしていった。


月兎の宴クレセント・フェスティバル


 樹海の上に根源するのは、三日月。


 フィロは女の雰囲気が変わったを感じ、振り向く。


 その月の光は町に広がる仲間へと降り注ぎ力を与えていく。


 そして、樹海の植物へ侵食していくのだ。


「はぁ、まためんどくさいことを。」


 フィロはすぐさま取り除くように指示を出す。


 女はフィロの注意が一瞬ずれたのを察知し、技を発動させる。


 サラ様、申し訳ございません。後は頼みます。


三日月龍(クレセント・ドラゴン)


 心の中で主に謝りながら発動させるのは継承式レジェンドスキル【三日月を望むもの】の最後の大技だ。


 その龍は使用者の魔力を糧に膨大なエネルギーを纏い、敵対するものに喰らいついていく。

 その力の奔流はフィロですら警戒度を最大値まで上げる何かがあった。



「賞賛に値する。」


呪縛緑獣(カース・ヴェール)


 フィロが発動した木で出できた。怪物を目にしたとき、女は全てを諦めた。

 あぁ無理だなこれは。そう思い女は最後の命令をだす。


 龍よ、この化け物を倒すことだけ集中するのだ。私の生命力を使え、できるだろ。







 同時刻、街では何処もかしこも戦闘が起こっていた。


 一般人の避難が行われた上でだ。避難場所はアレッタ達も利用した服屋だ。


「固まってろ、武器を持てる者は前に出とけ出とけ。」


 指示をするのは親方だ。その的確な判断は、避難者の恐怖を和らいでいく。


「大変だ、仲間が医者として【血鬼隊】に連れ去られた。助けてくれ。」


 男が駆け寄ってくる。しかし、ここにはその友人を助けることが出来るものなどいない。


 みんなが黙ってしまう中、声をかけた人物がいた。


 意外なことにそれはパブの店主だった。


「私が行きましょう。」


「いや、お前じゃ……。」


 親方が声をかけるが。店主はやんわりと否定した。


「大丈夫です。私の人脈は広い。彼を助けることが出来るはずですよ。」


「ほんとに帰って来いよ。」


「勿論です。私が無事に帰ってこれるかどうか、賭けでもしていてください。私が帰ってくると賭けた人には無料で酒を配りましょう。」


 みんなの期待を背負い店主は外に出る。

 想像以上の酷さに顔をしかめながら、探し始めることにした。


 五分ほど歩いたとき彼の周りには裏道の店主、デリン、デリンの雇い主でBと呼ばれている男がいた。


「準備は?」


「抜かりなし。」


「派手にやってますね。あちらは」


 その男たちが喋っていると、正面からやってくる者たちがいた。


「そこの者達、何をしている。」


「私たちはこういうものです。」


 表店主が名刺を出すと、その者たちは安心したようだ。


「なるほど。しかし、今は危ないぞ、中にこもっていた方がいいと思うのだが……。」


「いえ、こちらはあなた方に言いたいことがあったのです。」


「何だ?」


「あなた方に拘束されている医師の身柄を引き渡してください。」


 相手はいきなり殺気立った。


「無理な話だ。」


「そうですか、では武力行使で行くとしましょう【血鬼隊】さん。」


 その発言に【血鬼隊】は面食らったようだが、すぐに立ち直った。しかし、時すでに遅し、話しかけていたリーダー格の男はすでに絶命していた。


「デリン、気が早すぎだ。」


 男がたしなめるようにいうがデリンは聞く耳を持たない。


「こういうのは即決即断だよ。」


「本当か?殺す必要はなかっただろ。少なくともそいつは労働力として使えそうだったぞ。」


「そうだったか、まあ過ぎたものはしかたないね。」


「はぁ、計画を変える。殲滅するぞ。」


「「ラジャ」」


 店主の二人がお互いに距離を取り、Bが前衛、デリンが後衛を務める陣形で戦う。


 Bがいきなり酒を取り出し飲んだ。そしてそのまま酒瓶を投げ捨てる。

 運悪く前にいた男に酒瓶が当たったがBには関係ない。


【酔拳】


 酔ったまま、単体で【血鬼隊】に向かって行く。


 それをサポートするのは店主たちだ。


【酒は飲んでも飲まれるな。】


 味方にバフを与え、相手にはデバフを当てる凶悪な技だ。


 これを目にした隊員の一部が殺そうとしてくるがそれをビールの王冠を大きくした奴で応戦する。


【二十一の棘】


 王冠から飛び出るその棘は敵対するものを貫いていく。


 最後の一人デリンは拳銃片手に飛び回っていた。





 ここは郊外、ここでもまた怒号が飛び交っていた。


「プランCで行くぞ。」


「了解」


【剣豪連合】の別部隊と【茨】の武士。討伐しようとしているのはBランクの吸血騎士だ。


「囲め、陣形を切らすな。一人もかけてはならん。」


「先に馬を狙え。」


「やってますぅぅ。」


「足止めを」


【茨刀】


「ありがとうございます。」


 色々な声が飛び交う中、それを聞き取って的確な指示を出している男がいた。


 それはフィロに英才教育を受けさせられた植物の中の一人。フィロのために尽くすことを幸福と思う。変人の中の一人だ。

 今回の討伐対象が吸血鬼だったのでフィロは不審に思い、こいつに任せたのだった。


「そろそろ決めるぞ。」


「「了解」」


【茨の庭園】


 吸血騎士を囲うように茨が生えていき棘を伸ばす。

 それに合わせるように発動した【剣豪連合】の技に騎士は成すすべもなく倒れた。




一章があと一話ぐらいで終わると思います。月曜日に出せるかなぁ

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