血塗られた町{5}
台風ひどいですね。
喰種の殲滅を完了したとき、
尋常ではない、エネルギーの奔流を感じた。
(ヘカテ、障壁を)
<はい>
最高速度で走りながら、ヘカテが障壁を貼っていく。
パリッン そう音が鳴るとたちまち障壁が崩れていった。
(物理の方だ。)
<あ、了解です>
次々と岩の壁が貼られていくが、破られる。
何でこんなに館が広いんだよ。
来るときは近かった廊下が長く感じる。
<マスター、窓が>
(構わん、突っ切るぞ)
ようやく見えてきた窓に手で体を守りながら飛び込む。
いってぇぇ。
心の中で絶叫しながら俺は飛んだ。
【空駆け】
風の足場を作って空を駆ける技。中位魔法である。
<範囲外です。>
(助かったぁ)
アレッタが爆弾から逃げる一方、
この爆弾をもっとも利用した女がいた。
デリンとジャックは突然の爆発に驚いた。
しかし、デリンはアレッタから、どんな手段を使ってでもやると聞いていたので。これもその一環だと思い、立ち直る。
そして、呆けているジャックの懐にもぐりこんだ。
「全部弾かれるなら、体に当ててしまえば問題ないってね。」
体に銃口を向けて撃つ。
「ごめんな」
【エクスプローダー】
それは体の内部に入ったとき、爆発する弾だ。
元の世界では非人道的過ぎて禁止されていたが、ここは新世界、もとよりそんな条約など消えている。
「くそがぁぁぁ。」
普通、そんな弾を撃ち込まれたら、泣き叫ぶだろう。しかし、ジャックは流石だった。泣き叫ぶことなく、罵倒を吐いたのだ。醜態をさらしたくなかったその精神だけはデリンが認めることが出来た。
銃をしまい。空から降って来たアレッタのもとへ向かう。
「おい、大丈夫か」
「ああ、」
手で、ほこりを払いながらアレッタは立ち上がった。
「しかし、さっきのは何だったんだ?お前がやったのか?」
デリンが聞いた。だが、アレッタは困惑気味だったのだ。
「いや違う。」
「!?、一体誰が?」
「そのことについて知っていることがあるぞ。」
話し合っている二人に近づいてくる人影があった。
即座に戦闘態勢に入る二人。
それを見て男は笑った。
「君たちに危害を加えるつもりはないよ。それと、デリン。君は僕のことを知っているはずなのだけど。」
デリンは男の顔を凝視して……。
跪いた。
「デリン?どういうことだ?」
「安心してくれ、この方は危害を加えることはないはずだね。」
「別にいいが……。何者だ?」
「あたいの上司が居ただろ。」
上司……。あの人か。
「ああ」
「あの人の上司だね。うちらのトップだよ。」
へ?トップ?見たところ俺と年齢変わらないけど。銃まで持っているとなると結構やばいところのはずなのだが。それとこの顔どことなく見覚えが。
「久しぶりだな。いや、初めましてだったけ。」
「どういうことだ。」
男が話しかけてきた。相手は敬語ではない、ならばこちらも使わないようにしよう。
「俺の名はフィロ・ヴィセロ 【庭園】の主をしている。剣豪の件ではこちらが失礼をした。」
剣豪というとあいつらのことか。それと、どこかで見た顔だと思ったら、あの時の大将だ。
……ん?
「俺が作り出した俺の双子が暴走してな。すまぬ。」
「ああ、別に構わん。それよりもあの時の爆発とこの爆発は関係があるのか?」
「ああ、どちらも同一人物だ。【爆弾魔】クリス。問題児だよ。逃げるときに置いていきやがった。」
「おいおい、ここの治安どうなっていやがる。」
「違う、【吸血姫】が好きにするよう許可を出しているんだよ。対魔物の戦力としてな。」
「何だって!?」
「流石にあの時のようなことは予想していないだろうが。」
「なるほど。」
ここの【人形遣い】と手を組んだんだろうな。あの様子だともう青森にから逃げてるかもしれん。
「ッチ、逃がさなければ……。」
「すまない」
フィロが頭を下げてくる。
「違う、俺も【人形遣い】と接触したんだよ。その時に……」
「なるほど。しかし、あの女から戦力が少し離れたというのは吉報だな。」
「あの女?【吸血姫】のことか?」
「ああ、【新白虎隊】も対抗勢力として取り込むことが出来た。【伊達】があいつの懐刀となったのだけが計算違いだがな。」
「そんなにやばいのか……。」
「あれは化け物だ。あの女に匹敵するのは【巨氷狼】か【刀鬼】、辛うじて俺も対抗できるはずだろう。だが、勝てない。勝てたはずだったのはレヴィアタンを退けた奴だけだな。西日本は情報が入っていないからわからないが。あの女も日に日に強くなってしまっている。」
有名人だな。どれくらいの強さなんだ?
<【巨氷狼】は仲間も含めてですがA-ランクの討伐に成功しています。今の私たちでは不可能ですね。【刀鬼】はBランクををすでに10匹ほど連続で倒しています。こちらはまだ何とかなるでしょうね。>
一人なら匹敵する奴がいたぞ。喰種10体倒せたし。
「立ち話もなんだ。ついてこい。」
「ありがたい。」
完全に空気と化したデリンをしり目に俺たちは歩き出した。
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