実戦{3}
一方でアレッタは全速力で送られてきた地図が示す場所へ向かっていた。
道中追手が来ていないか確認しなければいけないためどうしても遠回りになるがなんとか朝に着くことに成功した。
土まみれで入ってきた俺を伝令だと思ったのだろうか、その街にいた兵士が急いで駆け寄ってくる。
「大丈夫か?」
「ああ。それよりも魔女様に伝えたいことがある。」
「魔女様に?……わかった、伝令があることを伝えてくるからそれまでにその服装をなんかしてくれ。」
「助かる。」
まぁ、そうだよなぁ〜。この格好で会いに行くのはまずい。
時間が惜しいがしょうがないか。
簡単な朝食をとり、服を着替え終わる頃に先ほどの兵士が呼んできた。
「いいぞ。」
案内された場所は街の中でも一際目立つ建物だ。
そこで兵士は立ち止まった。
ここから先は一人で入らなければいけないのだろう。
ドアを開けると、聖堂のような場所に着いた。
教会の目印などはないが構造的に元は聖堂として使われていたのだろう。
その奥に大きな魔力を纏った気配が三人。
「お初にお目に掛かります魔女様。ヴァセロ帝国名誉公爵アレッタでございます。」
隠していた魔力を解放する。
決して圧力を掛けないように自身の周りだけだ。
「伝令と聞いたが?」
面白そうに魔女が笑った。
「えぇ、伝令です。現在【死霊術師】クトが防衛を任せている街に新たな敵戦力【神子】が現れました。」
「【神子】?」
「文字通り神の子でございます。その力は貴方様と同等の規模、私が全力で戦っても勝てない可能性があるので援軍を要請しにやってきました。」
「おちょくっているのではないだろうな?」
「まさか。こちらはヴァセロ帝国の代表者として派遣されたのですよ、国家の顔に泥を塗るようなことはしません。」
「うーむ。それもそうだが…….。」
「ここは信用致しましょう。」
口を開いてきたのは魔女の横に座っていた骸骨だった。
「彼らには恩があります。その代表者の言葉を疑うわけにはいかないでしょう。なんでしたら私が行きます。」
「そうね。【神子】と言ったかしら。あちらがその気ならこちらもだしましょうか。」
「っ……」
骸骨が驚いている。
「えぇ。【暁月の魔王】を出すわ。」
「【暁月の魔王】?」
「私たちの秘匿戦力であり、吸血鬼よ。」
「こちらにいる。【吸血姫】とは違うのか?」
「そちらは吸血鬼の真祖でしょ。あの子に吸血鬼という肩書きは意味がないわ。吸血鬼とは別系統の吸血鬼……いや、吸魂鬼と言った方が適切ね。」
「吸魂鬼か……。」
「まぁ、細かいことはいいわ。すぐにあの子を行かせる。貴方はもう少し待って、帝国の意思を貴方自身から聞きたいわ。」
「わかった。」
そう、俺が返事をすると魔女の左右にいた二つの骸骨が出ていった。
同時にテーブルが運ばれ、菓子や紅茶も出てきた。
優雅に椅子に腰掛けながらも常にこちらに視線は外してない。
従者が席を外した時、やっと魔女が口を開いた。
「わからないわ」
「何がだ?」
「貴方のことよ。報告によれば貴方は【旅人】のヴィアや【妖精女王】、もう一人の子と一緒にAランクの【虚焔の餓狼】を倒したという。旅人の話では一番活躍したのは貴方だと言う。でも今、貴方と喋っているとそんな気配は全くしないのよ。魔力量は確かにあるけど……。」
「なるほど。見事な観察眼だな。」
そうアレッタが言うと、その姿が突然狐に変わった。
「あちゃー、バレちゃったか。僕は白狐、アレッタ様の使い魔だよ。」
「なるほど。そう言うことでしたか。…本物のアレッタ殿はどこへ?」
「何やら面倒な奴らと接敵しなければいけなくなったみたい。宮廷狩人?って言ってたよ。」
「【宮廷狩人】ですか。……正直助かりました。この街が見つからずに済みそうです。」
「強いの?」
「ええ。教会の勢力の一つで暗殺者とはまた違った暗躍に長けているわ。奴らの索敵能力でこの街も見つけられるところだったわね。」
「随分と安心しているんだね。」
「ええ。あの帝国の公爵殿ですから」
「でも今、魔力の使いすぎで実力発揮できない状態だよ。」
「え?」
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