第①・2節 オリエンテーション
司会からもらった私の整理券には「8番、松の間」と書いてあった。司会は数人に整理券を渡しながら叫んだ。
司会:「皆様、押さないで。整理券をもらった方は、大統領府の中の指定された部屋へ移動してください。焦らないで。」
Fさん:「菖蒲の間というは、どこへ行けばよいのでしょうか?」
Gさん:「朝から並んでいたのよ、なんで私が703番なのよ!」
Hさん:「ちょっと通してください。向こうに行きたいだけなのですが!」
私は人々の混乱をさけ、遠巻きに大統領府の案内板を探した。3ヶ所に人々が集まっていた。どうやら三か所とも案内板のようだった。私は一番人が少なそうな右側の案内板へ向かった。
私:「ちょっとすみません。案内板を見せてもらっていいですか?」
Iさん:「どうぞ、私は見終わったので。」
Jさん:「何か言って入ってくるのはえらいですね。何も言わず押してくる人が多いのに。」
私:「ありがとうございます。どれどれ、松の間は・・・、3Fの右奥の部屋か。3Fへ行くには、中央の階段から一気に行けそうだな。」
Jさん:「おぉー、エレベーターは使わないのですね。関心関心。」
私:「ありがとうございます。一応40代なので、歩いた方が健康に良いかなと。」
Jさん:「私は8Fなので、エレベーターを使わせてもらおうかと思います。ではこれで。」
私:「はい。では。」
松の間は豪華なシャンデリアの付いた部屋で、整然とパイプ椅子が並べられていた。その数30席。私は、部屋の前にある張り紙で指定された番号の席に着いた。部屋には既に10人程が座っていた。
それから30分後、30人全員が着席したのを確認した係員が、そのまま前で説明を始めた。
係員:「え~、皆様には今から1時間後、整理券に書かれた順に大統領と直接面接をしていただきます。持ち時間は1人5分です。自己紹介と、抽選で選ばれた職種の説明をしてください。合否判定は10日前後かかりますので、面接が終わり次第、家に帰っていただいて結構です。私が待合室までご案内いたします。待合室の隣には化粧室がありますので、1時間以内に用は足しておいてください。では、移動します。皆様、付いてきてください。」
Kさん:「おい、合否判定ってなんだ!俺たち、選ばれたんじゃないのか!」
Lさん:「面接なんて聞いてないわ。何を言えば良いかわからないのだけど。」
Mさん:「係員何か答えたらどうだ!」
Nさん:「そうだそうだ!」
係員:「皆様、大統領の前に行かれるのですから、私語を慎んで、私に付いてきてください。質問は受け付けていません。いやなら帰っていただいて結構です。」
Kさん:「なんて横暴なんだ。俺は帰るぞ!」
Nさん:「ああ帰ろう。もう二度と来るものか!」
5・6人がその場を離れ、残りは係員の指示に従って応接室に入り、1時間待った。
執事風の人:「お待たせいたしました。只今より、面接をはじめさせていただきます。1番の方どうぞ。」
1番の方:「はい。」
執事風の人:「こちらです。お入りください。」
1番の方:「はい。失礼します。」