王都へ
突然のナッシュの言葉にアーシェは驚いた。
今後の事とか考えていなかったし、巻き込まれた実感もなかった。
「う~ん、ごめん。
何も考えてなかったよ、だから、当分は一緒にいるよ」
「わかった」
その後、ナッシュは、置いておいた剣や服など必要な物をアイテムボックスに収納して家をでた。
家を出て、2人で街の中を歩いていると
大きな物音が聞こえて来たので、そちらに走って向かった。
走っている時も、時々音が聞こえてくるので魔獣か魔物がいるのかと思い、
警戒を強めながら近づいて行くと、人の声が聞えた。
そこは、町長の屋敷の中だった。
どうやら、物取りのようだったので静かに近づき様子を伺った。
「おい、何もないじゃないか」
「何か残っていると思ったんだがな」
「お前たちが全部持って行ったんだろ」
「いや、あの時は、俺達だけじゃなくて皆が取ってたんだから別にいいだろ」
「俺も、参加したかったな」
「ハハハ、でもよ、大きな声で言えないけど子爵様は、
生き残っていた住人を全員殺したんだぜ」
「そうだったな、でも、お前もそこにいたんだろ」
「ああ、だから、残っているかと思って来たんじゃねえか」
「5年も前だぜ、やっぱり残ってないな」
「諦めて帰るか」
「そうだな」
物取りに来ていた男達は、諦めて屋敷から出て来た。
ナッシュは、男達の後ろに回り、静かに近づき殴って男達を取り押さえた。
「答えろ、あの男は何処にいる」
急に押さえ付けられた男は、何が起こっているのか分からなかった。
「言え、何処にいるんだ!」
「ちょっと待ってくれ」
ナッシュは、剣を取り出し、男の首筋に当てた。
「5年前、ここを襲ったあの男は何処にいる」
「わ、私は知らない。
多分、王都か自身の領だと思う・・・だから助けてくれ!」
「お前たちは、あの時、逃げ惑うこの町の人達が助けてと言っても助けなかったじゃないか」
「すまなかった。
命令だったんだ」
「命令だから何でも許されると思うな」
ナッシュは、首に当てていた剣を引き、首を落とした。
アーシェに押さえ付けられてその様子を見ていた男は、震えていた。
「俺は、あの件には関わっていない。
だから、許してくれ」
「なら、あの男は、何処にいる」
「すまない、本当にわからないんだ。
ただ、王都か、領地だと思う」
「わかった、もうここへ来るな、それから今日の事は忘れろ」
「ああ、勿論だ」
ナッシュは、男を開放した。
少し考えた後、ナッシュは次の行き先を決めた。
「アーシェ、王都に行こうと思う」
「わかった、私も行くよ」
2人は、町を離れ王都に向かった。
王都に向かう道すがら魔獣を狩ったり、野宿や村に泊めて貰ったりしながら進んだ。
ナッシュが町を出て5日目、山を下りかけた所で盗賊に出くわした。
「ガキ二人か、良い値が付くだろう。
生きたまま捕まえろよ」
「アーシェ、戦える?」
「難しいかも・・・」
「わかった、僕の後ろに居て」
「うん」
ナッシュは、魔法を使った。
「風の神、アぺプの名において命ずる、かの者達を切り刻め」
ナッシュを中心に風が巻き起こり、囲んでいた盗賊達を切り裂いた。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「ひぃぃぃ!!」
風が止んだ時には、殆んどの盗賊が倒れていたが逃げて行く者達も居た。
ナッシュは、逃げた盗賊を追い、後を付けると盗賊達が洞窟に逃げ込む所を確認した。
「見つけた」
ナッシュは、魔法を使った。
「光の神、ルーの名において命ずる、我の体を隠せ」
ナッシュの体は消え、誰からも認識出来なくなった。
洞窟に入り進んで行くと、盗賊達は荷物をまとめ、逃げる準備をしていた。
ナッシュは、静かに近づき、1人づつ倒し、
最後の1人を倒すと、魔法を解き、姿を現した。
その後、洞窟内を探索し、荷物や宝を見つけアイテムボックスに収納した。
さらに、洞窟の奥に捕まっている人達を見つけた。
「ここから出たいですか」
「助けてくれるのか」
「はい」
檻を破り全員を助け出した。
助け出した者達の名前は、カーラ、グレタ、オリガ、アーニャの4人。
「これからどうしますか?」
「はい、近くの街まで連れて行って欲しいのですが」
「わかりました」
4人を連れて旅をする事になった。
ところが、野宿をした時、捕虜になっていたグレタが
食事について文句を言って来た。
「もっとマシな物は無いの?」
「ありません」
「牢屋の方が良かったわ」
「なら、戻りますか」
「ふんっ!」
野宿初日で文句を言われたことに、アーシェは驚いた。
盗賊から助けて貰えただけでも有難い事なのに
食事に文句を言うという身勝手な女に助けなければ良かったとさえ思った。
翌日、街に向かって歩いていたが、グレタは、足が痛いと言って
1人だけ馬で移動をしていた。
その日の夜、野宿の準備をしていると
馬車に乗った別の旅人達が近くで野宿の準備を始めた。
グレタは、その人達に近づき、話をしていた。
ナッシュとアーシェは、気付いていたが気にしなかった。
ただ、食事になってもグレタは戻って来ず、旅人達と食事を共にしていた。
夕食後、旅人の中の一人がナッシュに話し掛けて来た。
「君、ちょっといいかな、私は、ゲイルと言うんだが、
君の所の彼女が私達と行動したいと言って来たんだが」
「そうですか、いいですよ」
「そうか、なら彼女の荷物を渡してくれないか」
「え、ありませんよ」
「そんな事はないだろ、彼女は預けていると言っているよ」
ナッシュや他の皆も何を言っているのか分からなかった。
「あの、本当に荷物はありませんよ」
ゲイルは、ナッシュに疑いの目を向けたままだった。
「本当の事を言った方がいいよ。
こう見えても私達は、Aランクの冒険者なんだ。
痛い目を見る前に、素直に渡した方が身のためだよ」
ゲイルの仲間がこちらの様子に気付き、近づいて来た。
「ゲイル、どうした、手を貸そうか」
「いや、大丈夫だ、聞き訳の無い子供に言い聞かせているだけだ」
グレタは、ゲイルの仲間達の元でニヤつきながらこちらを見ていた。
「いい加減に渡して貰えないだろうか」
「本当にないよ」
ゲイルは、脅しにでた。
「いい加減にしろ!これ以上嘘を吐くなら痛い目に合わせる」
「嘘は、言ってないけど、好きにしたら」
「このガキ!」
ゲイルは、剣を抜いた。
それと同時に、ゲイルの仲間達も近づいて来た。
「さぁ、大人しく渡せ」
「脅しですか?
本気ですか?」
「ふざけるな!」
ゲイルは、ナッシュに蹴りかかった。
ナッシュは、剣を抜き、ゲイルの片足を切り落とした。
「ぎゃぁぁ!」
転げ回るゲイルに、ナッシュは、冷たい目を向けていると
ゲイルの仲間が、剣を構えてナッシュに襲い掛かった。
「このガキがぁ!」
ナッシュは、剣を躱しながら相手を切り倒した。
「うぎゃぁぁぁ!」
腕や足を切られ転げ回るゲイル達を無視してグレタに近寄り、
殴り飛ばした。
「ここからは、付いて来るな」
ナッシュは、吐き捨てる様に言って荷物を纏め始めた。
「アーシェ、行こう」
「わかったわ、それと馬車を貰っていいかな」
「いいと思うよ」
アーシェは、馬車ごと荷物を奪い、その場を離れた。
不定期投稿ですが宜しくお願い致します。
暖かい目で見て頂ければ幸いです。