討伐
冒険者登録を済ませ、依頼ボードを確認したが、字が読めず、受付に戻って順番を待った。
ナッシュの番になり、先程のお姉さんにお願いをしてみた。
「依頼下さい」
「はい?」
「字が読めません。
依頼をお願いします」
「あっ、はいはい、ちょっと待ってくださいね」
受付のお姉さんは、席を立ち、依頼を確認に行った。
暫くして、お姉さんは、依頼書を持って戻って来た。
「お待たせしました。
君の出来る依頼は、この3つですね」
ナッシュは、お姉さんに読み上げて貰った依頼の中からファングウルフの討伐を選んだ。
「この、ファングウルフ5匹盗伐でいいですね」
「はい、それをやります」
「では、頑張って下さいね、場所はこの地図に書いておきましたから。
それと、私はキャロットです」
「キャロットさん、有難う」
ナッシュは、地図の示す場所に向かった。
街を出て、北に向かうと森があり、その森にナッシュは入っていった。
森に入ると、直ぐに魔獣が襲って来た。
ラビットファングだ。
大きな牙を生やした狂暴な魔獣で、体が小さいのに後ろ足の脚力で飛んで襲ってくる。
ナッシュは、襲って来たラビットファングを取り出した剣で倒した。
倒れたラビットファングをアイテムボックスに入れてから先に進んだ。
その先でも、魔獣と遭遇したナッシュは、次々に倒した。
収納しながら進むと、到頭ファングウルフの群れに遭遇した。
ファングウルフの数は7匹、予定より多いがナッシュは、正面から攻め込んだ。
「一閃」
ナッシュの繰り出した武技により襲って来たファングウルフ達は、
飛び上がった瞬間に切られて倒れた。
地に落ち、暴れるファングウルフ達に止めを刺し、アイテムボックスに収納した。
予定より、2匹多く仕留めたが、気にせずギルドに戻る事にした。
森を抜けるまでの間にも魔獣に遭遇したが、ナッシュは全て倒し、
アイテムボックスに収納していった。
街に戻り、ギルドに戻ると、ナッシュは受付に並んだ。
順番が来ると、受付のキャロットに魔獣退治の報告をした。
「キャロットさん、終わりました」
「ナッシュさん、それでは、あちらで魔獣を提出して下さい」
ナッシュは、言われた場所に行き、魔獣を取り出し報告をした。
「ファングウルフ5匹、狩ってきました」
「そうか、確かに受け取った。
報奨金の銀貨1枚と銅貨50枚だ」
ナッシュは、受け取ってギルドを出て行った。
お金を貰ったナッシュは、市場に行き、屋台で売っていた串焼きを買い、
食べてから、ギルドに戻った。
ギルドに戻っても中には入らず、人のいない裏手に行き、座り込み、
そのまま朝を迎えた。
ナッシュは、ギルドが開くのを待ち、開くと同時に受付に向かった。
「依頼をください」
キャロットは、ナッシュの顔を見ると、微笑み、席を立った。
昨日と同じ様に手に依頼書を持ち、戻って来るとナッシュに説明をした。
「ナッシュさん、今日は、この2つです」
キャロットが説明すると、ナッシュは、討伐の依頼を受けた。
「今日は、ラビットファング10匹です。場所は昨日と同じ場所です」
ナッシュは、会釈をし、森に向かった。
昼頃にギルドに戻って来たナッシュは、受付で報告してから、買取カウンターに行き
ラビットファングを10匹を提出した。
「おっ坊主、今日はもう、終わりか。
確かに、10匹あるな、ほらっ報奨金の銀貨2枚と銅貨50枚だ」
ナッシュは、報奨金を受け取ると市場の屋台で串焼きを食べ、ギルドの裏手で座った。
1週間、同じことを繰り返し、少しずつお金を貯めた。
翌日も、ギルドでキャロットさんに依頼を貰い、森に向かった。
しかし、ナッシュがギルドを出た後、キャロットに向かう冒険者達がいた。
「おい、キャロット、お前アイツを優遇しすぎじゃないか」
「いえ、字が読めないので、依頼書を読んで渡しているだけです。
別に、優遇などはしていません」
「それなら、なんでアイツは、依頼を楽に熟しているんだ」
「それは、ナッシュさんの努力でしょう」
「嘘を言うな!優遇しているんだろ、だったら俺達にもその依頼を受けさせろ!」
「ですから、優遇などしていませんから。
仕事の邪魔です。
そこから離れて下さい」
「てめぇ、ギルドの職員だからって調子に乗りやがって・・・覚えていろよ」
キャロットは、ため息を吐き、通常業務に戻った。
何も知らないナッシュは、依頼を終わらせ、ギルドに戻って来た。
「戻りました」
ナッシュは、キャロットに挨拶をしてから買取カウンターに行き、
獲物を買い取って貰い、市場に向かった。
「おっ、兄ちゃん、今日も来たのかい、いつものでいいか?」
「はい」
ナッシュは、串焼きを買い食いし、ギルドに向かって歩いていると、
男達に囲まれたキャロットに出会った。
ナッシュは、キャロットの様子がおかしかった事に気付き、後を追った。
人気の無い場所に連れて行かれたキャロットは、
男達に腕を掴まれ身動きが取れなかった。
「キャロット、俺達のいう事を聞く気になったか」
「ですから、優遇などはしていません」
「まだ、喋らないのか、なら、ちょっと痛い目に遭って貰うぜ」
「ゾーンバインド」
キャロットは魔法の蔦で身動きが取れなくなった。
「おい、これで何でもできるぜ」
男の下卑た笑いにキャロットは背筋が凍る思いがした。
「離して下さい。
私は、優遇などしていません!」
「そうか、言いたくないのだな」
男は、キャロットの胸に手を伸ばした。
その時、通路からナッシュが顔を出した。
「キャロットさん、何をしているのですか」
男達は、振り向きナッシュを見た。
「ご本人登場か、これはいいな」
男は、ゆっくりとナッシュに近づいて来た。