家族
到着した兵を指揮するのは、この辺りでは知らない者のいない悪名高き貴族、
バウマン ラディッシュ子爵だった。
子爵の兵とわかったシルビィは、思わずノーマンの影に隠れた。
「あなた・・・」
「ああ、わかっているが、さすがにこの状態では何もしないだろう」
バウマン子爵は、辺りを見渡した。
男は、戦い死んでいったので、残っているのは殆どが女性だった。
兵は、バウマン子爵からの命令を町民に伝えた。
「この町の生き残っている者達は、すぐに集合せよ!
これは、バウマン子爵様からの命令である」
兵は、大きな声で町中を回り、バウマン子爵の前に生き残った者達を集めた。
「子爵様、生き残った者達を集めました」
「ご苦労」
バウマン子爵は、町民達の前に立った。
「私は、ラディッシュ家当主、バウマン ラディッシュだ。
この度の事で、この町は崩壊した。
よって、男達は、この町のすべての私財を今日中に集めよ。
それと、我々は遠方からの進軍で疲れているので、女達は、兵を癒し食事を与えよ」
兵達は、ニヤついた顔で喜び、バウマン子爵は、集まった女達の中から
自分の好みの女を探していた。
だが、その時、ノーマンが前に出た。
「待ってくれ、それは一体どういう事だ!
貴方の言っている事は、女は、貴方達の相手をしろと言っているように聞こえるのだが」
「そうだ、この町は終わりだ。
ならば、ここまで来た謝礼代わりにそれくらいの事をしてもいいだろう」
「そんな事が許されると思っているのか!」
「「そうだ!」」
「「そうだ!」」
ノーマンに賛同する町民達が一斉に騒ぎ始めた。
すると、バウマン子爵は、兵に命令を下した。
兵達は、ノーマンを捕らえ、近くにいた町民を躊躇なく切り捨てた。
「きゃぁぁぁ!」
女性達の間で悲鳴が上がったが、バウマン子爵は、何事も無かったかのように振る舞い
ノーマンに、言い放った。
「貴族に逆らったから、不敬罪だ。
お前も、死にたくなければ逆らうな」
そう言うと、バウマン子爵は、女達を物色し、ノーマンの妻シルビィに目を付けた。
「おい!あの女を連れて来い」
バウマン子爵の命令に兵士が、嫌がるシルビィを連れて来た。
「いい女だな」
それを見たノーマンは、激高し、押さえ付けていた兵士を吹き飛ばした。
「シルビィを返せ!」
その様子を見て、バウマン子爵はシルビィに言った。
「お前も、あ奴が死んだ方が諦めも付くだろう。
殺せ」
バウマン子爵の命令に、兵士達が、一斉にノーマンに切り掛かった。
ノーマンも持っていた剣で抵抗するが、魔物との戦いで体力を失っていた為に
徐々に、傷ついていった。
「早く、始末してしまえ!」
バウマン子爵の言葉に、兵達が襲い掛かったが、町の人々の援護により
ノーマンは、九死に一生を得た。
「ここは、俺たちの町だ、死んでいった者達の為に最後まで戦うぞ!」
町民達の奮起により、一時は、兵達に抵抗したが、時間と共に
1人、2人と殺されていった。
「平民風情が、構わん、全員殺せ!」
兵達は、バウマン子爵の命令に、女、子供、構わず殺し始めた。
隙を見て、シルビィを取り返していたノーマンだったが、既に力は残っておらず
追って来た兵士に、槍で付かれ、動けなくなった。
「シルビィ、子供達と逃げるんだ」
「あなた・・・」
「頼む、子供達を・・・・・」
ノーマンは、最後の言葉を言えず、息を引き取った。
「あなたぁーーーー!」
シルビィは、泣きながらノーマンが握っていた剣を持ち、兵士に向かって構えた。
「夫の仇は獲ります。
イヴ、ナッシュの事を頼みます」
「お母さま!」
「早く行きなさい!」
その声に、イヴが反応した時、飛んできた矢によって頭を貫かれ、シルビィが倒れた。
「お母さま!」
イヴは、ナッシュを連れて森の中に逃げて行った。
イヴは、途中で動物の掘った横穴を見つけ、ナッシュを入れて、
上から枯葉をかけて隠した。
「いい、ここから出たら駄目だよ。
後で、迎えに来るからね」
イヴは、そう言うと、走って反対方向に逃げて行った。
その頃、町では兵士達により、町民は全員殺されていた。
そして、バウマン子爵は、兵士に、生き残りの捜索と私財の回収を命じた。
私財の回収が終わると兵達に撤退を命じた。
2日が過ぎ、動物の穴に隠れていたナッシュは、コッソリと外に出てみた。
辺りを見渡してから、ゆっくりと街の方に歩いていくと
枯葉の中から、動かなくなったイヴを見つけた。
「姉さん!!」
ナッシュは近寄り、ゆすってみても、頬を叩いてみても、イヴが起きる事は無かった。
「ねえさーーーん!」
ナッシュは、思いっきり泣いた。
転生する前の日本で、家族を亡くし、また、この世界でも家族を亡くした。
もっと自分がしっかりしていれば・・・・
もっと大人になっていれば・・・・
もっと力があれば・・・
もっと・・・・・
ナッシュは後悔をし、自分を責めながら、思いっきり大声で泣いた。
そして、いつしか泣き疲れて眠っていた。
不定期投稿ですが宜しくお願い致します。