魔物の襲撃
5歳になった年のある日、ナッシュは母と姉に連れられて教会に行った。
教会には、ナッシュと同じ年位の子が13人もいた。
教会に入ると、儀式が始まった。
神父が神アリエールに祈りの言葉を捧げ、両膝を付き祈る。
子供達も、同じ様に祈る。
そして、儀式が終わると、子供達は洗礼の儀式を1人ずつ受ける事となる。
洗礼の儀式を受けると、子供に授かっている恩恵が解るらしい。
ただ、恩恵は、誰でも授かるものではなく、数十人に1人位しかいないとの事だった。
順番がどんどん進み、ナッシュの番になった。
「さぁ、ナッシュ、こちらに来なさい」
神父の言葉に従い、教会の中にある、洗礼の間の中心に座り、祈りを捧げた。
神父の言葉が続く。
「我が、神アリエールよ、この若き者に、神の祝福を与え賜え」
神父の言葉が終わると、天井のステンドグラスから優しい光がナッシュに向けて降り注いだ。
その光の中に、薄っすらと女性の姿が見えた。
女性は、ナッシュの頬に手を当てて耳元で囁いた。
「また、会えたね。
この世界で幸せになってね」
そして、光が消えると、何事も無かったかのようにいつもの教会に戻っていた。
その光景をナッシュの周りで見ていた、母や姉も驚いた。
「あれは、誰なの・・・」
神父も驚いていたが、儀式の最中である事を思い出し、授かった恩恵を確認するために
手元にある魔法の石板を見た。
そこには、ナッシュの恩恵が書かれていた。
【アンノウン】
神父は、初めて見る恩恵に戸惑ったが、素直に伝える事にした。
「ナッシュ、あなたの授かった恩恵は【アンノウン】だ。
私も、初めて見るのでアドバイスもしてやれん・・・・すまんな」
「恩恵を授かっただけでも有難いです。
神父様、有難う御座いました」
ナッシュは、神父にお礼を言い、母と姉の元に戻った。
家に戻ると、母はご馳走を作り、ナッシュの恩恵を授かった事をお祝いしてくれた。
「母さん、有難う」
母に、お礼を言うと、横で、私には?って顔で待っている姉がいたので
お礼を言っておいた。
「姉さんも有難う」
ナッシュにお礼を言われたイヴは、思いっきりナッシュに抱き着いた。
「ナッシュは、ずっとお姉ちゃんの物よ!」
「ハハハ・・・」
ご馳走がテーブルに並んだ頃、父が帰ってきた。
「ただいま、シルビィ」
父は、母を抱き締めキスをした。
「ノーマン、お帰りなさい」
父と母は、2人でテーブルに戻って来た。
「シルビィ、今日は、ナッシュの洗礼の日だっただろ、どうだった?」
父は、恩恵を授かる事の難しさを知っているので、軽い気持ちでシルビィに聞いた。
「ナッシュは、恩恵を授かったのよ」
父は、驚き、喜んだ。
「やったな、ナッシュ、おめでとう!
それで、どんな恩恵なんだ?」
「それが、分からないのよ。
神父様が言うには、今迄に見た事のない恩恵らしいわ」
「そうか・・・それでも、授かった事には、間違いないのだから、良い事だ!」
父は、心底喜び、ナッシュに抱き着いた。
「ナッシュは凄い子だな、父さんは嬉しいよ」
「有難う、父さん」
しつこくナッシュに抱き着いていると、イヴが、父の手からナッシュを取り返した。
「お父さん!ナッシュは、私の物なの!」
イヴは、ナッシュを抱きしめて離さなくなった。
「あーあ、ナッシュが結婚したら、どうなるのかなぁ」
この母の爆弾とも言える言葉で、イヴは、ナッシュに言った。
「いい、ナッシュは、お姉ちゃんの物なの、だから、結婚したら駄目だよ」
ナッシュは、ブラコン怖え~と思いながら、笑っておいた。
その時、外から、雪崩のような大きな音がした。
ノーマンが、外に出ると、町の壁が震えていた。
「魔物だー!」
どこからか聞こえて来た声に反応し、ノーマンは、家に戻り家族に伝えた。
「魔物がこの町を、襲って来たみたいだ。
いいか、絶対外には出るな」
ノーマンは、それだけ伝えると母と姉とナッシュを倉庫に入れ、
剣を持って倉庫の前に立った。
「あなた!」
倉庫の中から、シルビィがノーマンに呼び掛けた。
「貴方も、この中に!」
「いや、俺は、お前達を守る。
だから、そこで静かにしていて欲しい」
「あなた・・・・・」
その頃、魔物は町に入り込み、人間を食っていた。
家の中に隠れていた者も、見つかり襲われていた。
それは、ナッシュの家族も例外ではなかった。
轟音と共に玄関が破られ、家の中に魔物が飛び込んで来た。
ノーマンは、剣を構え、果敢に攻めた。
長い戦いの末、ノーマンは傷つきながらも魔物を倒す事に成功した。
静かになったので、ノーマンが外に出て見ると、魔物はいなくなったが
町中が荒らされており、死体もあちこちに散乱していた。
ノーマンは、家族を倉庫から出した。
「あなた!」
ノーマンの傷ついた姿を見たシルビィは、泣きながらも
家族を守ってくれたノーマンにキスをした。
「ありがとう」
ノーマンは、照れながらも、笑顔で答えた。
魔物が去り、朝日が昇りだした頃に、武装した兵士達が町に到着した。
不定期投稿ですが宜しくお願い致します。