--- 現実の変化 ---
翌朝目を覚ましたタカシは何か変化が無いかを探そうとした。
(小学校5年生だからなー。あの後、あやふやなまま別れたりしていてもおかしく無いか。まあ、とりあえず会社行くか。)
朝の仕事が終わり10:00の休憩時間になった。するとスマホからピンポンとラインの着信音がした。
「何だ?」
タカシはスマホを取り出しラインメッセージを見て見た。
朱雀「おツー、仕事だりぃー。」
朱雀「タカシー、今夜飲みイコー。」
(誰だ朱雀って?っていうか俺のアカウント玄武ってなんだよ?)
タカシは朱雀に思い当たる人物が居なかった。なぜ自分が玄武なのかもイマイチよくわからない。
だけど、このラインといい、誰かが俺と飲みにイコーなんてこの世界に何か変化が起こったに違いない。この朱雀という人物に会ってみないと。
玄武「おツー、こっちもだりー」
玄武「飲みOK 何処に集合?」
朱雀「新橋日比谷口 19:00集合」
玄武「OK」
18:30になった。仕事を切り上げ、新橋へ向かった。電車を降りて日比谷口に行くとまだ10分前だった。
(一体だれが来るんだ?)
「だーれだ?」
誰かが後ろから目隠しをして来た女の声だ。こいつがきっと朱雀なのだろう、こんな女友達が出来ていたのか?
「その声は朱雀さんだね。」
「あったリー」
振り向くとそこにはOLらしき女性が立っていた。
「タカシくーん会いたかったよー」
そう言うと女は両手を広げてハグをしてきた。仕方なくこっちもハグをしてよしよしと落ち着かせてやる。何だこの女もう酔ってるのか?
「もー、タカシは「朱雀さん」って何よ、それ名前じゃないし、今更「さん」ってなに?いつもみたいにアカネって呼んでよ」
(何!! アカネだと、まさか種田茜なのか?そう言えば化粧をしているから判らなかったが面影があるような)
「アカネもう飲んでるのか?」
「思いの他、早く終わっちゃって先に1軒回ってきちゃった。」
(だったらラインしろよ)
「まあいいや、じゃあ居酒屋でも行こうぜ、お腹空いたよ。」
「OK here we go! 」
(どうやらアカネで間違い無い様だ。しかしどういう関係何だ付き合っているのか?)
「それでさー、ハゲの上司が言うわけよ、「アカネさん、昨日も同じ事言ったよね」だーって、何回でも言えよこのタコ!っていう話だよ。」
「すいませーん、手羽先3つ!」
取り留めのないアカネの愚痴を聞きながら食べていると、
「ねー、タカシ、あんたずっと一人でいるつもり?」
(何? それじゃ自分は結婚しているとでも言っているのか?)
「ああ、相手がいないしな。それに一人の方が気楽でいいかもな。」
「アカネは幸せなのかい」
「そうね、竜二に不満はないけど、可も無く不可もなくね。子供もいないからいつでもバツイチになれるんだけどね。タカシー、私と一緒になる?」
(竜二って誰だ?アカネは退屈な夫婦生活を送っている様だな。)
「何言ってるんだ。アカネ、今の性はなんだっけ?」
「何言ってるのはこっちの話よ、伊藤に決まってるでしょ。あなた結婚式に私の友人で呼んだでしょ?」
(そうなんだ、伊藤って誰だ、まさかあの飼育当番の伊藤か?)
「ねえタカシ、観覧車でキスした時の事覚えてる?私とあなたのファーストキス。」
「あのドキドキが無いんだよね。」
「いつの話してるんだ、ガキの頃の話だろ、それに伊藤だって良い奴じゃないか。」
「そう、いい人過ぎるのよね。私怒られる事も無いんだ。ねえタカシもう一度キスしてみようか。」
「冗談はよせよ。不倫なんて柄じゃないんだ。それにアカネだって良い人だろ?」
「そうなのよね、私もいい人だからずるずると続いちゃうのよね」
「もう飲みすぎだそろそろ帰ろうぜ。」
そう言うとタカシは会計を済ませタクシーを拾った、
「アカネ、どこに住んでるんだっけ?」
「あー? 目黒、青葉台よ。」
「はい、目黒区青葉台ね。」
タクシーの運転手は聞いていたのかそのまま走り出した。
「おい着いたぞ、大丈夫なのか?」
アカネはふらふらになっていたので、肩を貸して降りた。
「何処なんだ?アカネ。」
「うん?あー、あそこあそこの角の家。」
「タカシ上がってく?竜二と会うのも久しぶりでしょ?」
(そうだな、今の状況把握の為にも、伊藤に会っておいた方が良さそうだ)
「ったく仕方ないな。」
タカシは歩けないアカネをおぶって玄関の呼び鈴を押した。
「こんばんわ」
「こんばんわー!今帰ったわよー!ダーリン!」
背中でアカネが喚いている。
「こんばんわ、やあ仙石君じゃないか! アカネ!また酔っているのかい? 代わるよ。」
「いや、面倒だからこのままベッドまで連れてくよ。」
「じゃあこっちへ。」
タカシは案内された寝室のベッドにアカネを降ろし、後の事は竜二に任せてリビングへ行った。
「いやー、仙石君、悪かったね。アカネが迷惑掛けたみたいで。」
「いや良いよ。大した事無いから。それよりうまくいっているのか?」
「アカネ何か言ってたかい?最近毎日飲んで帰って来るんだ。」
「いや、会社の愚痴とかそのくらいだけど。」
「遠慮しなくていいんだ。俺との関係とかも愚痴っていたんじゃないか?」
「まあ、多少はあったけどな。」
「正直、俺もどうしていいのか分からないんだよ。」
「もっと正直に、アカネに合わせるんじゃなくて自分をもっと出せば良いんじゃないか。お互い我慢していたらストレスも溜まるだろ。」
「そうだな、ありがとう仙石。」
・
・
それから結婚した経緯や、俺とアカネの関係何かも聞けて、深夜になった。
「ああ、じゃあ、もう遅いから俺、帰るわ。」
そう言うと、タカシはタクシーで自分のアパートへ帰って行った。
(竜二の話から得た情報では、俺とアカネは中学三年生の半ばで受験勉強もあり自然消滅した様だ。そうすると俺が去ってからの俺に甲斐性が無かったというわけだ。その後社会人となってからアカネと伊藤は付き合い始めて結婚したらしい。それで今の俺はアカネにとって、なんでも言える親友という立場になっているらしい。
中学時代の俺は何をしていたんだか。この不幸な未来を回避する為にも今夜の過去変は、中学時代の俺にもっと積極的アプローチをかけるべきなのだろうか? いやそもそもおれはアカネに声を掛けられなかった自分を悔やんでいたのであって、声を掛けてキスまでしたのであれば目的は十二分に達成出来たはずである。だとすればこれ以上アカネに固執する必要も無いのではないか。だが同時に小学校でのアプローチが無かったおれは、中学時代になってもアカネに告白出来なかった事を後悔はしていたはずだ。だとするならば、中学時代も付き合いが継続するように過去変をした方が良いのではないか? しかし、この後、大学時代には同じサークルの子に惹かれ、その彼女にも告白できなかった事も後悔している。)
タカシは迷っていた。アカネを継続すべきか大学での彼女にアプローチすべきか。しかし最終的に大学時代の彼女ともうまくいくとは限らないし、アカネとうまくいくのであればそれでいいのだからとりあえず今夜は中学時代にタイムリープする事にした。
タカシは帰って早々に眠りについた。