4th 氷姫
キャラ紹介
レンカ(水の巫女)
15歳
水の力を使う。ヒョウカの事が好き。
ヒョウカ(氷の巫女)
16歳
氷の力を使う。レンカをからかうのが趣味。
「ここがアーチ村か?……何か寒くね?てか、村中氷漬け……」
「人の気配もありませんね」
アーチ村には着いたが、そこは吹雪が舞う氷漬けの村と化していた。
「おかしいわね……。この村だけだしどうしてかしら?」
アニスも分からないみたいだな。
「兄さん、あそこに人影が!」
鈴鹿に言われて目を凝らすと広場の噴水の所に確かに人影が見えた。俺たちは急いで駆け寄った。どうやら、傷を負ってるみたいだった。
「大丈夫か?!」
「う……うぅ」
「この子は……!」
「知ってるのか?」
「えぇ、この子は水の巫女レンカ・アインズよ」
合流するはずの水の巫女がどうしてこんなことに……。俺たちはレンカを連れて村の外に留めた荷馬車に一旦戻り、レンカの回復を待つことにした。
「ん……んん、ここは……」
「目が覚めたみたいね」
「アニス……」
アニスが目覚めたばかりのレンカのからだを起こしてやる。そして俺たちの紹介も済ませ本題に入る。
「一体何があったの?」
「それが……。話すと長くなるんだけど、私はヒョウカと一緒にこの村にやって来たの。でも、人の気配が全くしなかった」
人の気配はレンカたちが来た時から?
「それで村を探索しているとある場所にたどり着いたの。そこにはこの村の人と思える石像が無数に置かれていて、その奥にあった石に触れた瞬間ヒョウカは……!」
その時の光景を思い出したのかレンカは泣き崩れていた。レンカとヒョウカは余程仲が良かったのだろう。
「じゃあ、この吹雪もそのヒョウカって子が?」
「そうみたいね。レンカ、ヒョウカが何処にいるか分からない?」
するとレンカは村の中を指さした。
「あの噴水の下にある地下空洞に……」
「あの下だな?みんなはここに居てくれ」
立ち上がり村に戻ろうとすると鈴鹿に袖を掴まれて引き止められた。
「兄さん、1人では危険です!」
「鈴鹿さんの言う通り……1人では危険。ヒョウカは……巫女最強なの。王様でも叶うかどうか」
鈴鹿に続きレンカもそう言ってきた。ヒョウカってそんなに強いのか?
「私の力は火なのですよね?!だったら、氷には有効のはず!兄さん、私も行きます!」
「鈴鹿……」
「ヒョウカは……私の親友…私も行く」
「全員でヒョウカを正気に戻しましょう!」
結局4人全員で行く事になった。
俺たちはレンカに案内され、噴水の前までやってきた。
「ちょっと待ってて」
そう言い、レンカは噴水の脇にあったらしい隠しスイッチを押した。すると、噴水が移動し地下へ続く階段が現れた。
「みんな、行くぞ」
下は暗くなっていたが鈴鹿の力でみんなの頭上に灯りをともしてもらった。暫く進むと柱が無数に立っている開けた空間に辿り着いた。
「ここか……」
「うん、ここよ」
当たりを見渡すとレンカの話通り村人らしき人々が石化されていた。どうやら、の子から逃げ出そうとする時石化したのだろう。
「兄さん、危ない!」
鈴鹿が咄嗟に俺の前に炎の障壁を張り氷のつぶてを防いだ。
「ありがと、鈴鹿。あれがヒョウカか?」
「うん……」
再びレンカは震え始めてしまった。あれがヒョウカ。確かに強さが桁違いみたいだな。
「俺とアニスでヒョウカを引きつけよう!鈴鹿は隙を見て攻撃してくれ」
「分かりました」
俺とアニスは左右に周りヒョウカの注意を引くことにした。
「レンカさん!いつまでそうしてるつもりですか?!」
攻撃をしながら鈴鹿はレンカに問掛ける。
「だって……」
「だってじゃないです。あなたにとってヒョウカさんは何ですか?」
「私にとって……ヒョウカは……とっても大事な親友。だから、ヒョウカと戦うなんて……できない!」
レンカは気持ちが爆発したように大声を張り上げた。
「私とレンカは……物心着いた時からずっと一緒で……家族同様に育った。2人して巫女の力が発現した時は喜びあった。ヒョウカは、巫女最強クラスの力を持っていた。私は大切な家族みたいな親友であると同時にヒョウカに憧れていた。そんなヒョウカと戦えるわけない!戦っても勝てない!」
「それは違います」
鈴鹿が優しく窘める。レンカを諭すように。
「大切だからこそ戦うべきです。もし、兄さんが闇に囚われてしまったら私が体を張ってでも兄さんを救います。兄さんの為なら命だってかけます。まぁ、こんなこと兄さんの前で言ったら怒られるでしょうね。『そんなこと言うな!お前は生きてくれ』って」
「鈴鹿さん……」
「だからレンカさん。一緒にヒョウカさんを救いましょう。ヒョウカさんを救うにはレンカさんの力が必要です」
「わかった」
レンカは立ち上がり、鈴鹿の隣に立った。
「くっ、流石に強いな」
「私の風を使えばもう少し注意を惹き付けられるはず!エンチャントウィンド!」
俺はアニスの風を借り縦横無尽にヒョウカを攪乱していた。すると、鈴鹿の隣にレンカがたっているのが見えた。
「ヒョウカァァァァァーーーーーーーーーー!」
レンカが大声でそう叫ぶと声に反応するようにレンカの方へと向き直り、ゆっくりと歩み出した。
「レンカの声に反応した?」
「もしかしてまだ意識が!レンカ、続けろ!ヒョウカに呼びかけ続けるんだ!」
レンカは頷くとそのまま続けた。
「ヒョウカ!私、ずっとヒョウカが憧れだった!綺麗で強くて。でも、同時に家族のように大事な存在だった!だから、戻ってきて!私にはヒョウカが必要なの!」
ヒョウカの動きが若干鈍くなった。レンカの声は確実にヒョウカの心に届いてる。そう思った瞬間ヒョウカは氷の刃をレンカに向かって放とうとしていた。
「エターナルバインド!今よ!」
投げる寸前の所でアニスがヒョウカの動きを止め、レンカ達によびかける。
「古の炎よ、我が願いによりかのものを癒せ」
「大いなる水よ、龍となりて闇を喰らえ」
「エンシェントフレイム!」
「海龍の咆哮!」
火と水2つの力が合わさり炎の球体の周りを水の渦が囲う。
「「ユニゾン!火と水のロンド!」」
炎と水の一撃はヒョウカに命中した。ヒョウカは無傷のままその場に倒れた。
「やりましたね」
「うん!」
鈴鹿とレンカ、なんか仲良くなってるな。
「後はあの石を壊して、村人を元に戻さなきゃな」
「でも、兄さんがヒョウカさんみたいになってしまう可能性も!」
「大丈夫。俺は大丈夫だから。何かそんな気がするんだよ。鈴鹿、俺を信じろ」
俺は鈴鹿を窘め、奥の石へとたどり着く。
「頼むぜ、相棒」
その一瞬剣が光ったように見えた。俺は石へ向かい思い切り振り下ろし、石は粉々に粉砕した。
すると、石像と化していた村人達が元に戻り始めた。
「兄さん、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。信じろって言ったろ?」
取り敢えず、この村の危機は救えたな。石の事とかまだ謎は残るがひとまず一安心だな。と思った矢先、脳に声が響き渡った。
『見事だな、剣の王と巫女達よ』
「なんだ……これっ」
「兄さん、何か……頭の中で」
「これは……」
「この声……どこかで」
みんな聞こえているのか!一体何なんだ?!
『だが、一足遅かったな。その村の住人はとっくに消したわ』
消した?そんなはずは無い、確かにそこに村の人達が……!いない……。
『あれは我が用意した幻よ。まぁ、今の我ではこれが限界だがな。だが、世界は我が手で滅ぼしてくれる』
こいつ、一体!通信は一方的でこちらの声は届かないようだ。
『剣の王、巫女の1人が妹なのだな。そいつを殺ったらどうなるのかね』
てめぇ、好き放題いいやがって!
『ははは!まぁ、いい。ではな』
「一体何だったんだ!?」
「あの声、間違いない。昔の映像で聞いたジャグラスの声よ!」
俺が怒気を込めた口調で言うとアニスが答えた。
「ジャグラス……。あいつが!鈴鹿は俺が守るから安心しろよ」
「兄さん……」
「んん……いたたた」
ジャグラスの通信が終わってまもなくヒョウカが目覚めたようだ。
「ヒョウカ!」
レンカは思い切りヒョウカに抱きついていた。よっぽど寂しかったのだろう。
「痛いよレンカ」
笑いながらヒョウカが言うとレンカは惜しみながら離れた。そして、ヒョウカはレンカをハグして……。
「ごめんね、私レンカのこと傷つけた」
「いいよ!こうしてヒョウカが無事に戻ってきてくれただけで私は嬉しい!」
「そっか。あんまり覚えてないけど『ヒョウカは私のモノ』とか言ってたような……」
「そ、そんなこと言ってない!」
「えぇぇ、じゃあなんて言ったのぉ?」
「やだ!もう言わない」
「いいじゃんいいじゃん」
「やだ!」
「そうかぁ。私はレンカのこと世界で1番愛してるのになぁ。レンカは言ってくれないのかぁ」
「ば、バカ……。私だって、レンカのこと……」
「え、聞こえない。なんて言ったの?」
「うぅぅ〜……」
そんな2人のやり取りを見てほのぼのした。良かったな、レンカ。俺は鈴鹿をいや、鈴鹿も含めた全人類を救う。今回の件でハッキリと意志が固まった。ジャグラス、お前は絶対俺が倒す!
今回も読んでいただきありがとうございます。今回は軽めの百合入ってましたね。ジャグラスも登場しました。これからも楽しみにしてください。
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