いまはじまる復讐劇!
「君が悪いのではないのだ。フリーゼ」
「私何も悪い事してませんわ!」
「うん、そうだね……それはわかっている」
わかっているのならどうして?
婚約破棄なんていうのですか王太子様? 私はお勉強も礼儀作法も王太子妃としてのお勉強もずっと頑張ってきましたわ!
「でも……ごめん、君は私には幼すぎたんだ……」
王太子様は座ってこちらを見ています。目線を合わせようとしてくれているのはわかりますが、臣下に膝をつくのはいけませんわ!
幼すぎるって酷いですわ、私は確かにまだ7歳ですが、後10年もすれば王太子様と釣り合うってみなさん……。10歳の年齢差があっても!
「2年前に君の申し出を受けた私が悪かった。いつか諦めるだろうと……」
「私は王太子様一筋ですわ!」
「いや私には心から愛する人が出来てしまったんだ」
金色の髪に青い瞳の私の王子様、2年前の舞踏会からずっとずっと好きでした。
王太子様のお嫁さんになりたいって言ったらみんな笑ってました。
でも公爵令嬢だし、10年もすれば釣り合うかって私が婚約者になりましたの!
青い顔をしてこちらを見ていますわ。
苦笑されましたわ。私は本当にあなたを愛していますのよ!
ずっとずっとずっと王太子様のお嫁さんになるためにお勉強をしてきましたのよ。
なのになのに、フリーゼは悪くないけど婚約破棄したいってどういうことですの!
隣でアリスさんがこちらをみてにやっと笑っています。巨乳だからって胸をはってこちらをみるのはやめてくださいですわ!
「私は嫌ですわ!」
「私はアリスを愛してしまったんだ……」
「アリスさんが庶民とかそういうことじゃないですわ。私は王太子様と婚約をしていましたのよ! なのに他の人を愛するなんて道理に反すると思いますの!」
「難しい言葉を知っているね……」
額に汗が流れております王太子様。でも私はずっとずっと王太子様のお嫁さんになる17になるまで頑張って相応しい令嬢になろうと努力してきましたの。
公爵令嬢フリーゼ・カーディアの名にかけて、頑張ってきましたのに……。
金髪碧眼で麗しい乙女、将来的には美貌を兼ね備えた王太子妃になると王にも言われてきましたのよ!
魔法学園なんて所でアリスさんっていう王太子様と同い年の17歳の女狐に……愛しい王太子様をとられるなんて思ってもみなかったのです。
「絶対嫌です!」
「もうこれは決定事項なんだフリーゼ」
「私は!」
「君はまだ幼い、将来的に相応しい相手が現れるよ。婚約破棄は君の傷にはならないからね」
「申し訳ありませんフリーゼ様」
むう、なんでしょうか、幼い子供に言い聞かせるようなその感じ。
お母様にこれ以上ケーキはありませんよ。だからご飯が食べられなくなるからこれ以上は駄目って言われている時の気分です。
「絶対に嫌です!」
私一人が駄々をこねている状態でしたわ。父上もこれを受け入れ、私との婚約はなしにされ、また新しい婚約者を見つけてあげるからねって父上は言うのです!
王も王太子様もすまないというばかりですけど……。
私の心の傷は深いのですわ。ずっとずっと王太子様の妃になるために頑張ってきましたのよ。
小さいからって……馬鹿にしてません?
私はずっと面倒をみてくれた執事のじい……じゃないテオドールを伴い、王家に復讐をするために旅にでることにしたのです!
私じゃあ力がありません。
それに王太子様の横にいたアリスさんはふって、馬鹿にするようにふって笑ったのですわよ。
自分の方が胸があるからってえらそうに! 私だって後10年したらあれくらいの胸になります!
「それでお前っていうか……えっと」
「フリーゼですわ魔王様!」
「思考ぶっとんでない? なんで魔王のところにきて復讐叫んでんの?」
うーむ、魔王っていうからには角があって羽があって怖いお顔のおじ様と思いましたら、私より少し年上位の男の子でした。
黒髪に紅の目の男の子は驚いたように玉座からこちらを見ています。
「んで、そいつ」
「テオドールですわ。我が家の執事ですの!」
「そいつだけでうちの部下全部を倒すってなに? 元勇者とか?」
「テオはじいでうちの執事ですわ!」
「いや普通の執事が魔王の城にきて部下全部倒して、魔王の所に直行なんて普通できないから……」
後ろに控えるテオドール。私が小さい頃からずっと面倒をみてくれましたの。
執事でなのですわ。うちの父もいつからいるのかな? っていうくらいのおじいさんです。
私の後ろでたいしたことはなかったですよとぼそっというテオ。
おひげに白い髪、生まれた時からこの姿でした。
執事の服にはホコリ一つついていませんわ。でも魔王様の部下が弱過ぎです。
テオがぶんって手を振っただけでよろけて壁にどんって!
「私はフリーゼ様のお供です。魔王様の部下とやらがたいしたことがなかったと思われますな」
「だそうよ!」
「いやだからさ、その執事使って王家転覆図れば? 魔王の部下倒せるほどの化け物なら大丈夫でしょ」
「テオはテオです!」
「いや……まああの」
お腹すきましたと思ったらぐうっとお腹が鳴りました。これはいけません、お食事の支度をとテオが言うとだからどうしてそうなる? と頭を魔王様は抱えています。
普通の男の子にしか見えませんが……。顔は確かにきれいですけど、いえいえ王太子様のほうがかっこいいですわ!
「厨房はどこですかな? 魔王様」
「いや勝手に料理するとか……」
「厨房はどこですかな?」
「あ、そこの入り口を出て右いって……突き当り」
「かしこまりました。お嬢様、メニューは私が決めてもいいですか?」
「うんテオのつくるものならなんでもいいわ」
「はい、では早速……」
テオが一礼して、厨房に向かいます。さすがテオ、手際がいいです。
私と魔王様が二人きりになると、玉座に座った魔王様がため息をついて、お前の執事わけわからんなとまた溜息をつきました。
「テオはじいで、テオです!」
「それはわかった。んで、復讐ってどうするんだ?」
「まず、魔王様の軍を強くして、王国に攻め入ります。そしてあのアリスさんを捕まえて……」
「俺は平和志向の魔王で……いきなりそんな女をつるしあげる趣味はない」
「まず部下が弱すぎるので、鍛えて」
「お前の執事が変なんだ! 元勇者とかか?」
「テオはうちの執事でじいですわ」
「それはもう聞いた!」
黒づくめの衣装を着た男の子にしか見えませんが、これが世界を征服するのを狙っている魔王です。
なら魔王を使って私は王家に復讐します!
私がぐっと手をつきあげて宣言すると、お前らで勝手にやってくれよと魔王様はため息をついたのでした。