やれやれ、四天王の一人、†深海の蛇†アークアの処罰を決めたぜ
ナロウによるアークアの処罰は……?(*_*;
「アークア。あんた、俺達の仲間にならないか」
「な……なんですって!?」
俺はアークアを勧誘した。
「あんたのやってきた事は許されない。だが、あんたの力を失うのは惜しいと思ってな。どうだ?」
「あなた……阿呆なのかしら? ワタクシは魔王様に忠誠を誓った身。従う訳が……」
「敗れた今、帰る場所はあるのか?」
「ぐぅ……」
言い返せないのが何よりの証拠だ。
「そ、そもそもあの小娘が納得しないのじゃなくて!?」
「だろうな。これは俺の意見だ。あいつや他の者達が処罰を求めるなら俺はそっちに従う」
「ひいいいいやっぱりそうじゃないいいい」
ガクガクブルブルなアークア。やれやれ、また失禁されそうだぜ。困ったな。
「一応説得はしてみる。ルフは……難しいだろうが、他の皆からの信用はそこそこあるつもりだ。もしかしたら認めてくれるかもしれん」
「ひいいいい本当なのそれええええ」
かも、の話だ。絶対ではない。
「アークア。あんたが悪女なのは承知だ。故に皆お前に被害を受け、お前を恨んでいるだろう」
「ひいいいい」
「あんたを処刑しろ、なんて声もあるかもしれん」
「ひいいいい死にたくないいいいい」
アークアは漏らした。やれやれ、仕方ないだろうが困ったぜ。やれやれだな。
「俺はあんたに罪を償ってほしい」
「ひいいいい……え?」
「それで許される訳じゃない。だからといって、罪を償わなくていい理由もない」
あくまで俺の持論であり、一般論ではない。
「あんたが処刑されれば皆の気は晴れるだろう。だが、あんたの罪をそれで帳消しするには呆気ないと思われて、すぐに死なせてはもらえないかもな」
「ひいいいい怖いいいいい」
あえて脅すように言ってみたぜ。罪の意識を持ってほしいんだぜ。
「そうなる代わりに、仲間になって皆の役に立つ存在になるのはどうだと言いたいんだ」
「え…………?」
「皆はお前を恨んでいて、蔑んだり罵ったり、時には石を投げてくるかもしれん」
「ひいいいい石怖いいいいい」
身体が水で出来ているなら効かないのではないのか?
「それでも。罪を重ね続けるより、遥かに立派だろう。あんたが罪を犯した年数よりも長く、永く……続ければいつか、誰かが褒めてくれるだろうよ」
「褒めて……くれる……」
目を見開くアークア。やれやれ、過去に何かあったのだろうか?
「かつてワタクシは生きとし生けるもの達に飲み水を恵む精霊だったのよ……もちろん、人間にだって。しかし、棲んでいた海に毒が混ぜられ、ワタクシは存在ごと水を犯された。お陰でワタクシの水を飲んだ生き物は次々と死んでいった……かつて愛した動物、植物、大人も、子どもすらも。
悲しむワタクシに更なる悲しみが襲った。毒を混ぜたのは人間だったのよ。くだらない人間同士の戦争での作戦のために。その時からワタクシは人間への復讐に染まった。同じ種族で争うくらいなら、ワタクシが滅ぼしてあげようってね。
やがて魔王様にスカウトされて、四天王になったのよ」
そんな過去があったとはな。やれやれ、戦争ほど醜く虚しく弱者が犠牲になるものはないぜ。
「あんたにも、命を愛していた時があったんだな」
「ワタクシの言いなりになるものは全部好きよ…………でも、昔は――――――人間も好きだった気がするわ」
彼女もまた、犠牲者だったんだな。
「そうか……すまなかった。かつての人間が迷惑をかけてしまった」
「もう遅いわよ。何もかも……ワタクシもね」
アークアは、自分も加害者になってしまった悲哀を感じる表情をしていた。やれやれ、誰も救われないな、これじゃ。
「確かに遅いな。だが、早くないだろう」
「どういうことよ?」
「あんたが罪を償う気があるなら、行動に移すのに早い事はない。そうなら……俺はあんたを認めるよ」
「…………もしあなたがあの時いてくれたなら――――――救われていたのでしょうね。ワタクシも…………あの子達も…………」
強がっていたアークアは、やがて堪えきれなくなったのか静かに泣き出した。愛していた者達を己の水で殺してしまった。その原因が……愛していたはずの人間だった。彼女の心はその事実に耐えられなかったのだ。
チートの力を授かった俺でも、彼女の心を真の意味で助ける事は出来ない。
起きてしまった過去は……変えられないから。
無駄にされた
情が、まだあるというのなら……