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ゲーム人生 ~ゲーセンはもはや異世界である~  作者: ヨコアキ
第1章 (祝)ゲーム星人襲来
3/3

有名になるって難しい?

図書館につくと、グランと彰人は別行動をとることにし、約一時間経ったら正面玄関前の受付に集合する約束だ。

 グランは張り切って探しにいったが、彰人はそこまで乗り気ではなかった。

 最初にグランと別れた正面玄関の受付前に置いてある長イスに腰掛け、『有名になる方法』とスマホで検索したりするだけ。 とはいっても学生の身であり、お金も人脈もあるわけでもなく、部活にも入っているわけでもない彰人にあるのは、無駄に余った時間だけだ。 どう頑張ったところで有名になるわけもない。

 図書館の外にある自販機でジュースを買って、また長イスに戻ってちびちびと飲みながら「僕、一体なにをしてるんだろう・・・」と、真っ当といえば真っ当な感想が口を衝いてでた。

 そんなことを洩らすような人間がまともに動くわけもなく、図書館の職員が作ったオススメ書籍コーナーの本を適当に数冊選び元の場所に戻った。

 ペラペラとめくってみるが、さっぱりだ。 他の本でも探しに行こうかとまた立ち上がると、ふと目に入った棚があった。

 参考書のぎっしり詰まった棚だ。 

 彰人も今年は受験である。 いつまでも遊んでいるわけにもいかない。 

 よくテレビのCMで『春からでも遅くない! 志望校の幅を広げよう!』 『合格を決めるのはこの夏だ!』なんて常套句を生徒に向かって熱心に叫んでいるのをみると、心に焦りが出始める中学三年の春。

 そんな彰人だが、中堅の高校は受かるくらいには勉強もしている。 だからだろうか、参考書に無関心になりきれずに参考書の棚へと向かった。 すると、見知った顔に出会った。

 「あ、由梨・・・・・・」

 「・・・・・・ん? あ、彰人くん」

 そこで幼馴染の月見由梨と会った。

 腰まで伸ばした金髪に、慈愛に満ちた目。

 しっかりとした凹凸のある華奢な身体を、厚手のニットワンピース一枚で隠している。

 雰囲気こそグランとは違うが、彼女もまた美少女といって差し支えないだろう。

 「こんな場所で会うなんて珍しいねー。 いつも気にしないとか言ってたから心配してたけど、実はちゃんとやってたんだー」

 「あ、いや・・・・・・ちが・・・・・・」

 つい、いつものくせで否定しそうになるけど、由梨がそれで納得してるから適当にうなずいておこう。

 「そうそう。 僕も、もう受験生だしさ、さすがに勉強くらいするよ」

 由梨は嬉しそうに何度もうなずくと、なら、といって自分の持っていた参考書を数冊渡してきた。

 「自分で使おうと思ってたけど、見た感じいまから探すんでしょ? それなら私が使おうと思ってたやつ使っていいよー」

 ――っく! 悪気をカケラも感じない! 良心一〇〇%なだけにこの気遣いが辛い!

 本の状態は新品であり、買ってまだ間もないものだろう。 自分で使う予定だったであろう。そんなものも彰人に貸してしまう。 

 〝自分のことりも彰人のことを優先する〟

 由梨は長年そうやって彰人に接してきたのだ。 

 「あ、ありがとう。 由梨はいつもこの図書館来てるの・・・?」

 「そうだよー。 家よりも集中できるから・・・私、家にいるとすぐに漫画とかネットに逃げちゃうから。 そうだ、彰人君も勉強するんだよね? それなら彰人君の家で一緒に勉強しない?」

 はにかみながら由梨がノートを取るようなジェスチャーをする。

 そんな 

 「ごめん、このあと予定あるんだ。 んじゃまた」

 そういってその場を足早に離れる。

 背後から「あ、逃げた」と聞こえる。

 『図書館内は静かに、走らないようにしましょう』

 そんな注意書きが目に入り、疾走する僕に司書さんの突き刺さるような視線が痛い。 だが、由梨はしつこいし、少しでも話をするとその場のごまかしであることがバレてしまう。 そうなればカツ丼と四畳半くらいのせまい部屋が待っている。 それに、嘘をついたことに対するお仕置きも待っていると思っていい。 でも約束があるのは本当だ。 ただ、極端に乗り気がしないだけだ。

 由梨が来ないような妙にメルヘンチックな棚に逃げ込み、ターゲットが上に上がっていくのを確認してから正面受付に戻ってきた。 手には由梨から渡された参考書。 彰人が探しに行ったのは〝有名になるための本〟である。 さすがにひとつも成果を挙げずにいるのはまずいということで、冗談九割でひとつだけ案を考えてはいる。

 時間を確認すると十二時を数分過ぎていた。 

 ――律儀そうにみえたのに・・・・・・もしや迷子? それとも、ちょっと遅れたくらいを気にするなんて、なんて器の小さい男なのかしら! みたいなノリかな?

 それからさらに数分が経ち、時計の長針はそろそろ一〇を指そうといったところだ。

 「あぁ・・・・・・やっとついたぁ・・・」

 グランが疲れきった顔でのそのそと背中を丸めて現れた。

 グランのあの様子だと、この広い館内を迷子になって随分と歩き回ったのが伝わってくる。 ねぎらいの言葉をかけようと思ったが、ふと思いとどまる。

 グランにはどこか舐められている節がある。 ここは手負いをグランに強く当たって、地球人としての威厳を取り戻そうと思う。

 そうと決まればもうノリノリである。 自分の思いつくかぎりの嫌味を考えながらグランに擦り寄っていく。

 彰人は遅刻してきたグランに腕時計をしているかのように、わざとらしく手首を叩きながら言った。

 「あれ? 遅刻ですか? それに本も見つけられなかったのですか・・・僕には時間がないんですから時間は守ってくださいね」

 手ぶらで帰ってきたグランに、彰人はこれでもかといわんばかりに嫌味をぶつける。

 ニヤニヤとする彰人に対して、グランはキッと彰人を睨んだ。

 「・・・あ、あんた、なんで十二時十分にここにいるのよ⁉  これじゃあまるで私が遅刻したみたいになるじゃない⁉ アキヒトも男なら私が着いたのを見てから、少し遅れてくるもんでしょ‼  ど、どう責任取ってくれるのよ!」

 肩で息をしながら、理不尽な八つ当たり。

 言った本人も通じるとは思ってないのか、言ったそばから赤くなって彰人を睨んでいる。

 睨まれた彰人はあまりの傍若無人ぶりに絶句して言葉が出ない。

 なんともいえない空気が二人の間を通り抜ける。

 そんな空気も大声を出したせいで周りから集まる興味と嫌悪の視線によって掻き消えた。

 「・・・・・・あっちで勉強しようかグラン」

 「そ、そうね。 それがいいわ。 すぐ行きましょう」

 頷きあった二人はすごすごと二階の休憩室に逃げ込んだ。

 二階の自習室は一人分の机を板で区切られて数十人と収容可能な自習室と、自習室を通り抜けて大きな会議室で使うような縦長のテーブルが置いてある休憩室に分かれている。

 幸い由梨は自習室にも休憩室にもいなかった。 上の階の自習室を使っているのだろう。

 二人は誰もいない休憩室を独占して、なぜか隣に座らず向かい合って座る。 まさにドラマで敵の会社と自社でプレゼン勝負でもするような感じだ。

「さて、じゃあ先にそちらの報告からお願いします」

 彰人は背もたれに体重を預け、妙に芝居がかった態度でグランに話かける。

 しかしグランは彰人の芝居など完璧無視をして、スカートから数冊の本を取り出した。

 「んぉ⁈ 」

 意味不明が言葉が口漏れて、何事かと言う前に「科学力の差よ」と、理解はできても納得できない説明に黙るしかなかった。

 グランが彰人に見えるように本を差し出した。

 


 「後世に語り継がれる人ならざる者達」 「全米を震撼させた伝説の」 「世界中のムショ巡り、こうして彼は世界中のムショで有名になった」 「日本を震撼させたあの事件から10年。 〝俺は絶対に有名になってやる″彼は中学卒業のときにこう言った」 


 ・・・・・・。

 って、おい!

 「・・・・・・これは」

 呆れてものも言えないといった彰人に、

 「ふっふっふ。 私のセンスの良さに言葉もないようね! 私は優秀なんだもの」

 自信満々に腕組みをしながら仁王立ちをする。

 相当な勘違いをしているグランに彰人は苦笑まじりに言う。

 「・・・・・・グラン、これ、全部犯罪で名を残した人達だよ。 僕は犯罪を犯して有名になるのは嫌だよ」

 グランは、本の題名だけでは本の中身が予想できなかったようで、彰人が中身を開いてみせるとやっと理解した。

 「まぁ、そっちの星だと優秀かもしれないけど、やっぱり地球のことは異星人にはわからな―――」

 そこまで言いかけて彰人は驚いた。 顔面蒼白でグランが震えている。

 ――そんなにショックだったのか・・・。 確かにまだ地球にきて数日しか経ってないんだもんな・・・・・・。

 自分が自信満々に持ってきた資料が、全く役に立たないことを知って、あまりのショックで震えていると思った彰人がオロオロしながら慰める。

 「わ、悪かったよ。 ちょっと言い過ぎたよ・・・。 グランはまだ地球に来て数日なのに、こんなに頑張ったんだもんな」

 大人気ないことをしてしまった彰人が必死にグランを慰めるが、グランの耳にはその慰めは全く入っていなかった。 

 なぜなら―――

 「地球って有名になるのがこんなに大変なのね・・・・・・」

 彼女は盛大に勘違いをしていた。

 グランの殺人的な誤解を解いて、改めての話し合い。 地球のことは地球人に、ということで話し合いの主導は彰人が取ることになった。

 「そんなに言うなら、アキヒトはさぞ有効な手段を知ってるんでしょうね?」

 未だに拗ねているグランはアキヒトを睨め付ける。 彰人はその視線を受け流しつつ苦笑いを浮かべる。

 「正直グランのことを言ったわりには、僕もあんまり知らないんだ・・・」

 「なーんだ。 アキヒトも知らないんじゃない」

 それ見たことかと、いやらしいニヤつきでこちらを覗くが、すぐにつまらなそうに視線は窓の外へ向けられる。

 「あーあ、結局また振り出しかぁ」

 つまらなそうに外を眺める姿を見せられ、まともに調べてもいないくせに彰人はどこか面白くないと感じた。

 「いや、でも全くないわけじゃないよ」

 彰人はイスから立ち上がり、休憩の前方にあるホワイトボードまで移動した。 そこで机に手をついて話をする。

 「じゃあ僕がいまから〝有名になる方法〟を列挙していくからちゃんと聞いておくこと。 いいね?」

 また芝居がはじまったとばかりに、明らかに面倒くさそうなグランにこちらを向くように言い得意げに話しだす。

 「今日は・・・〝有名になる方法〟についてだ。 ひとつめは、ユーチュ――」

 「バーになることはもう調べてあるわよ」

 ――や、やるじゃないか・・・・・・。 でも次はどうだ!

 「ふたつめはツイ――」

 「ッターで相互フォローで知り合いとかを増やすってのも知ってるわよ」

 ――この人酷いよ! 最後まで言わせてくれないよ・・・。 

 「それくらい調べてるわよ。 でもそれじゃあ時間がかかり過ぎるし、ユーチューバーは、まぁわからないでもないけど、ツイッターに関しては別に有名になれるわけじゃないじゃない。 ただ数字が増えるだけ。 それなら近所のボランティアに参加したほうが知り合いも増えて有名人に近づくわ」

 その場にくずおれる彰人を見てため息をつく。 

 「はぁ、もうアキヒトもない感じでしょ? 今日はもう互いに個人で調べましょ」

 グランは広げた本をまたスカートに戻して休憩室から出ようとする。

 「待って! まだ、僕にはまだ最後の一手が・・・・・・」

 ――まずい‼ このままじゃ使えない奴認定される! ここで一発ブチかまして、使える奴だって思わせないとイケン!

 使える使えないという認定をグランにされていることに、疑問すら抱いていないところに彰人の性格が垣間見える。

 出入り口で止まっているグランを先頭に二人は由梨がいないことを確認しながら図書館を出た。 


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