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ゲーム人生 ~ゲーセンはもはや異世界である~  作者: ヨコアキ
第1章 (祝)ゲーム星人襲来
2/3

異星は毒舌少女?


 時計の秒針の音が妙にうるさく聞こえる。

 この部屋には人が二人。 若い男女が向かい合って座っている。

 二人が向かい合っている場所は、彰人のアパートの一室である。

 部屋は六畳一間の・・・・・・とはいかず、九畳一間で他にトイレ、キッチン、風呂場がついている。学生の一人暮らしでは贅沢すぎる広さだ。

 室内の管理は思ったよりも行き届いており、とても男子学生の一人暮らしとは思えない。

 家具などもシンプルなものでベッドや机など必要なもの以外は一切置かれていない。

 そんなアパートの一室で四角いテーブルを挟んでガッチガチに緊張しながら座る彰人と、部屋をキョロキョロと物珍しそうに見ている謎の少女。

 目の前の少女と彰人は先ほど知り合ったばかりだ。

 学校からの帰り道で急に変質者宣言をされ(弁解の余地なし)知り合いにも見られて、なにもわかってはいないが、どこか静かな場所でしっかりと話し合おうと思ってその場を逃げ出してたどり着いた先が彰人の家というわけだ。

 しかし、冷静になればなるほどこんな人を家にあげたことを後悔しはじめているのだ。

 だが、そんな状況にありながらも、こっちを見ていないことをいいことに彰人は少女を凝視している。

 ――さっきは遠くだったから見えにくかったし、近くで見ることにもなったけどあんなことがあったし・・・・・・。 でも改めてみるとすっごい綺麗な子だなぁ。

 つややかな銀色の髪をポニーテールで綺麗にまとめ、クリクリとした大きな真紅の瞳。

 ほっそりとしているが、しっかりと女性を感じさせる肢体。

 肌は透き通るように白く、凛としたおもだちに、薄くやわらかそうな唇。

 非のつけどころのない美少女だ。

 勝手に品定めされているが、当の本人は彰人の視線に気付く様子もなく、未だに物珍しそうにしている。

 「あー、お取り込み中のところすいません。 少々聞きたいことがありまして、先ほどの道端での発言についてなのですが・・・・・・」

 互いに無言で、なんの展開も起きない現状にシビレを切らした彰人が聞いた。

 すると、少女はこの部屋に来て初めて、彰人をまともに視界に入れた。

 まるでいま気付いたかのように少女は目を丸くして、居住まいを正した。

 「っは! 私としたことが失礼しました! 地球の方のお家に入るのが始めてで物珍しくてつい・・・・・・。 それでは、改めまして、私、グランと言います」

 ・・・・・・・・・・・・。

 え? それだけ? 名前は聞けたけど他のもっと重要な内容については、一切触れてないよこの子。

 「グ、グランさんですね、はい。 それでー、あのー、先ほどの質問には答えていただけない感じです・・・かね?」

 対応に困り、とりあえずの苦笑いで先を促してみる。

 「あれ? 私なにか聞かれてましたか?」

 「あ、ですよね! そうですよね‼ 大したことじゃないので忘れてください! ははは、はは、はぁ」

 ――こんな距離で話かけたのに聞こえてなかったのか、それとも聞いてたけど聞かれたくなったとか? どちらにしろよくわからない人だ・・・・・・。

 「本当にすいません。 でも、そう言っていただけると、私も助かります」

 いままでの無表情とは違い、微笑んだ顔があまりに綺麗で、変な人でも可愛い人だから気にしないでいいか! と、思いそうになる心をぐっと堪える。

 微笑みを向けられたことで緊張がほぐれた彰人が改めて聞いてみることにした。

 「えぇと、さっき路上で僕に

『私と共に、世界にゲームの良さを広める義務があります!』

こんなことを言ってきたのはなんでなんだろう・・・・・・とか聞いちゃっても大丈夫です?」

 チラっとグランの顔を窺う。そんな彰人にグランは目をパチクリとさせて、信じられないものでも見ているような顔をする。

「す、すみません・・・・・・。 そんな初歩的なことから説明しないといけないとは思いもしなくて・・・・・・」

 この少女―――グランは中々の毒舌っぷりだ。

 グランはピッと人差し指を立てながら話し出す。

 「この地球という星の方々は異星からの人をあまり受け入れてはいないみたいですが、この宇宙には地球という星以外にも沢山の人類が住む星があります。 私はその星のひとつから来ました」

 グランは立ち上ると、スカートのポケットからなにやら薄っぺらい紙を取り出して机に置いた。

 するとそこから立体の地図のようなものが浮き出て、グランは地図上のふたつの丸い球体を交互に指し示しながら話を進める。

 「ここが私達の星です。 そして、こっちが地球です。 地球がある銀河系から北に何百光年か進んだ先に私の星があるのです。 ですから、こちから行き来したりはできても地球の科学力ではまだまだ観測する程度が限界のようですね」

 微妙に地球を馬鹿にされたように感じるが、とりあえず黙って話を聞く彰人。 

 それから十分ほど宇宙と科学の話は続き、理科の授業ですらヒィヒィ言ってる彰人には科学の話は拷問でしかなく、早々に聞き流していた。

 「あ、あの~、難しい話の途中ですいません。 よくわからないので、もう簡単にお願いできますか」

 地球を馬鹿にされているような口ぶりに、地球代表として負けるわけにはいかない! と勇んで話を聞いていたものの、もはや地球のあらゆる言語を飛び越えて、彼女の母星の言葉じゃないかってくらいに理解できなくなった。

 「・・・・・・わかりました。 地球の教育水準は極めて低い・・・っと」

 『地球探査報告書』と、どうにも穏やかじゃないタイトルの紙に、随分と不名誉な文字を書き込んでるのが見えるし、聞こえたが、この際無視だ。

 「えーっと。じゃあ端的に言いますね。」


 『ガタガタうるせぇ、いいから言うこと聞け』


 「む? ・・・・・・ん? ・・・・・・え?」

 おいおいおいおい、せいせいせいせい。 この人絶対おかしいよね⁉ 端的にとは言ったけどさ、それって理由を端的に言って欲しいって意味で、自分の言いたいことを端的に言えってことじゃないよ‼ しかも言葉遣いも急に悪くなったよね? あの微笑みは嘘だったのか・・・恐ろしい子!

 苦笑いすら通り越して真顔な彰人とは対照的に、ニコニコしているグランを見て、彰人は身震いする。 

 スカートをゴソゴソしだすグランをみて、頬を伝う汗を意識しながら彰人は聞く。

 「要は・・・・・・僕はグラン・・・・・・さん?と一緒に、世界にゲームの良さを広めないといけないと、そういうことだと」

 「まぁ、そうことです。 私達の星は、色んな星に行ってはゲームを広めているのです。 いちおう報告では半世紀ほど前からこの星でも広めてるはずですけど・・・・・・。 思ったよりも広まっていないし、調査によるとあまり良い目で見られていないとか。 悪いイメージを払拭して、良いイメージに変えようと思うわけです」

 グランはまるで彰人が世間に悪の印象を植えつけた張本人であり、彰人を心底恨んでいるような目で見下ろしている。 さらにスカートのゴソゴゾは加速する。

 「そんな目で僕を見ないでください・・・・・・。 ぼ、僕はゲーム大好きだし、悪いイメージがなくなるのは大歓迎ですよ。 でもなんでそんな重要なことを僕なんかと一緒にやろうと思ったんです?」 

 恐怖のスカートからなにが飛び出すのか気が気でないまま言いたいことをいう。 

 その言葉を聞いて、スカートのゴソゴソをやめ、グランが急に正座をして真面目な表情をした。

 雰囲気から先ほどの会話とは違い、ここからが遥か彼方の異星から来た彼女の本題なのだと確信し、彰人も崩していた足を正座にする。

 「私はあなたに会ったときにビビッときました! アキヒトさんの引きこもりオーラは他を遥かに凌駕してましたし! その年齢でその素質は恐ろしいものです・・・・・・」 

 完璧なプレゼンができたといわんばかりに拳をグッと握りこむ。

 目はキラキラと輝いており、自分の正義を一切疑うことを知らない目だ。

 ――すごいな・・・・・・悪意があるのかないのか。

 どちらしろ、その満足そうな表情は彰人の期待を裏切るには十分だった。   

 「あー、わかりました。 グランさんのいうとおりに協力します。 ・・・・・・だけどこれだけは聞かせてください。 どうしてグランさんの星はゲームを広めようとしているのでしょうか?」

 グランの目的がわかり、人選の理由もわかった。 最後にわからないのはそもそもの原因だ。 なぜゲームを銀河を超えてまで広めようとしているのか。

 しかし先ほどとは打って変わって、グランはつまらなそうに答えた。

 「そんなもの簡単ですよ。 よくわからない、が答えです」

 「あれ? グランさんって特別な任務を受けてこの地球に来たんですよね? なのにわからないんです?」 

 グランの急な投げやりな態度に少しの怒りを覚える。

 「いえ、私の星では一部の人間以外は成人すると他の星に行きゲームを広めます。ですから私が特別なわけではありません。 それに星を挙げての行動の意味を理解してる人なんていませんよ。 地球に住むあなた方にも国というものがありますけど、国がやること成すこと全てを理解してるわけではないでしょう? それと同じことです」

 確かに言われてみれば、国がなにをしてるかを気にしたこともないし、国を挙げてなにかをやっていて、皆がやっていれば一緒に理由も考えずにやっていると思う。

 「・・・・・・そっか、そうだよね・・・・・・」

 冷静に考えると怒りが収まっていく。 

 なにせいまこの子は異国すらも飛び越えて、異星にたった一人で来てるんだ。 自分とそんなに歳も変わらないであろう目の前の少女が。

 そう思うと変な人という感じよりも、自分の中で凄い人という考えに変わっていくのを感じる。

 会話が途切れたことで丁度いいと思ったのか、グランが切り出した。

 「協力も取り付けられたことですし、そろそろ私はお暇します」

 グランは正座に慣れてないのか、立ち上がるとき一瞬顔をしかめてよろよろと歩き出す。

 「あ、見送るよ! っつ!」

 グランのあとを彰人も痛みを堪えてよろよろと追いかけていく。

 グランは玄関で靴を履き扉を開けると、外は既に夜の帳が下りており、肌寒い空気に彰人は身を震わせた。

 「また来ます」と言って扉を閉めようとしたグランに、彰人がふと思ったことを口にした。

 「グランさんってどっか泊まるところとかあるんです?」

 なんの気もなしに口を衝いて出た言葉であったが、言ってからすぐに気付いた。

考えすぎかもしれないが、自分がいま危ない発言をしたような気がすると。

 ――仮にグランさんが泊まる場所がないと言ったとしたらどうすつもりなんだ? 僕の家で泊まっていきなよって言うのか?  まま、まさか! それじゃただの下心丸出し野郎じゃないか!

 異星から来た彼女にどう伝わったのかはわからないが、妙にそわそわして顔が赤くなった彰人を見てなにか察したようだ。

 「ホテルに泊まります。 それに私には先に地球に下りてきている仲間もいますしね」

 盛大にテンパっている彰人に苦笑を返しつつ、それじゃあ、と言って扉を閉めた。

 一人相撲をしているのを察せられて、異星人に気まで使われた彰人。 一人取り残された彰人は、「時間よ、戻ってくれ・・・」そう言って顔を覆った。

 それから十分ほど彰人は誰もいない部屋で「下心はなかったんだ」と釈明しながら身悶えることになった。

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