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XYZの悲劇  作者: uehara1971
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 沢木がひげをそり終わってテントに帰ってきたところに矢沢がいた。


 矢沢が言った。


 「沢木さん、タバコ一本くださいよ。」


 本来なら断るところだが、矢沢には銀行預金口座を借りるのにアウトロー業者を斡旋してもらった経緯もあり意外に使える男だったので無下にも断れず、やむをえず言った。


 「一本だけだよ。」と言って沢木はラークのメンソールを矢沢に渡した。


 「あー、うめー」と矢沢はタバコを吸いながら言った。


 「沢木さんは今日も女の所に行くんですか?」


 「まぁ、そうだが・・・」


 「いーなー、沢木さんには女が沢山いて」


 「君も作ればいいじゃないか。」


 「はっ、こんな、ホームレスの状態じゃ女なんて夢のまた夢ですよ。あーあー、俺もナマポゲットして

アパートすみてーー」いうなり、矢沢はプーと煙を沢木の顔に吹きかけて去って行った。


 沢木は水と洗剤と下着とジャージの入ったバケツをかきまぜて手動で洗濯をした。


 洗濯をし終わった後は、テントの外の木の枝につるしてある物干しロープに洗濯物をかわかした。


 ここは、赤石のおかげで秩序がとれていた。盗みを犯した者はこの公園から永久追放となるのであった。だから、よほどの大金が置かれてない限り誰も盗みはしないし、そのような大金が置かれることはなかった。


 矢沢は食事は、月・水・金は新宿中央公園に行きキリスト教ボランティア団体の炊き出しで食っていた。それ以外の日は、アルミ缶拾いをやっていた。どうにも困った時は、赤石が面倒を見ていた。


 夏場はまだいいが、冬場はホームレスにとって地獄だった。身なりが汚いから図書館にも逃げ込めなかった。寒いから、トイレの水道で体を洗うのも辛かった。

 

もちろん、沢木もアパートはあるとはいえ、冬場も週に5日は代々木公園ですごした。


ホームレス仲間にアパートの場所は絶対に教えなかった。


一人を泊めさせると全員を泊めさせなくてはならず、かつ、赤石にも人間関係のトラブルになるから、アパートには公園の連中は泊めてはいけないといわれていた。


 まだ、香のとこに行くには十分に時間があった。朝食を食べるために、代々木八幡駅近くのマクドナルドに行くことにした。


 マクドナルドでハンバーガー2つ。200円と無料の氷水。そんなに節約しなくても十分に暮らせるのだが、沢木は食が細くなってきた。


 夏場は水が命だった。沢木は夏場だけはリュックにペットボトルをいれておいた。公園周辺にはスーパーは無かった。スーパーで冷えたコーラーの1.5リットルのペットボトルを買うには代々木上原まで歩かねばならなかった。


 といっても大した距離ではなかった。マクドナルドでコーラーのエルサイズを頼めば300円かかるが、スーパーまであるけば200円以内で冷えた1.5リットルのコーラーが飲めた。


 このように、公園を拠点に歩くことが沢崎の日常であり、ホームレスの連中の日常でもあった。


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