03
一方その頃レイラは南区の大通りにいた。
「•••どう、しましょうか」
いつもと変わらない無表情だが、内心はとても焦っていた。
監視役として対象をこうも簡単に見失うなど、あってはないことだからだ。
もう一度南区の大通りを見回すが、やはりウィルの姿がない。
「まだ広場にいるかもしれません。ですが、戻って入れ違いになればとても面倒臭い」
うーんと唸って考える。
しばらく考えた結果。
「はい、ここで待ちましょう。迷子になった時の鉄則です。ついでに買い物もしたいですし」
焦りはどこかへ消えてしまっていた。
レイラは恐ろしくマイペースな人間だった。
「そろそろ冬も近いですし、防寒着が欲しいですね」
目に付いた服屋にふらふらと引き寄せられていく。
南区の店舗はどれも簡易式で、布が壁代わりになっている屋台のような形だ。
多くの人が狭いスペースで商いをしている。
その内、肌黒の男店主がでんと構えている店に向かう。
レイラの行きつけの店だ。
「お、またあんたか。今日は財布持ってきたんだろうな」
「当然です。神に仕える者、そう何度も同じミスはしません」
「何度も? おかしいな、おれはもう両手では足りないほど覚えがあるんだが」
「•••」
いつもと同じように