とある少年の始まりの日 4
ひらけた部屋で、左右には古びたロッカーがある。
牢獄と同じく窓がないため、小さな灯りだけで薄暗い。
ウィルはそのうち渡されたカギと同じ番号のロッカーを開けた。
中には衣服一式と、愛用の二丁のリボルバーが入ってある。
黒を基本としたロングコートと、それに合わせたその他の衣服。
宗教国家のリングヴルドの兵士にしては陰気すぎる服装だ。
「これが兵士と飼い犬の違い、か」
首についてある首輪に触れてみる。
それほど重みは感ない。
鉄の冷たさにもすぐになれそうだ。
だだ、消えない烙印を押されたような気分だけは、いつまでたっても晴れそうになかった。
ロッカーから服を取り出しながら、先のコンパスの話を思い出す。
『それは拘束用の呪具だよ。効果はいたってシンプル。術師の意思によって装着者の命を奪う、というものだ。凶暴な飼い犬につけておくにはもってこいの代物さ。。ああ、ついでに言っておくけど、術師が死んだ時は道連れで装着者も死ぬから、術師を殺せば•••なんてことは考えない方がいい。じゃあ、せいぜい飼い犬ライフを楽しんでくれ給え』
「何が飼い犬ライフだ。馬鹿馬鹿しい」
毒づきながら服を着替えおわる。
サイズは見繕ったかのようにぴったりだった。
加えて銃用のポケットや、弾倉入れまで完備してある。
まるで、ウィルがここに来ることを前もって知っていたかのような手際の良さだ。
最後にリボルバーの調子を確認した後、ウィルは部屋を出た。
部屋から出ると、待ち構えていたように横から声をかけられた。
「準備はできましたか?」
あの銀色の、レイラという少女の声だ。
「ああ、準備万端だ。でも、よくこんなにサイズぴったり!?」
振り向いて驚く。
レイラは身の丈ほどもある黒い巨大な背負っていた。
よくみるとそれは棺桶のようだ。
五角形の黒い棺桶で、よく吸血鬼などがはいってそうなあれだ。
装飾はほとんどないが、グルグルに巻かれた鎖が不気味さを増大させている。
「おま、それなに!?」
「それ? [黒棺]のことですか?」
「くろひつぎ?」
あの馬鹿でかい棺桶は[黒棺]というらしい。
「[黒棺]は私の呪具です」
「呪具ってことは、やっぱり呪術師なのか? 」
「はい」
ウィルの読み通り、レイラは呪術師だった。
だが、ここまで異形な呪具は、ウィルも初めて見る。
レイラはウィルが準備できていることを確認すると、相変わらずの口調で話しはじめた。
「では改めまして。あなたの監視役の任につきました
、レイラと申します。よろしくお願いします」
「あ、ああ。よろしく」
あくまで捕虜の立場にあるはずのウィルに対しても、レイラの敬語口調は変わらない。
おかげで危機感が薄れてしまう。
「では、行きましょう」
レイラは簡単な挨拶だけ済ませると、暗い廊下を歩き出す。
ウィルはそれに黙ってついて行った。
首輪のサイズは合ってないので、歩くたびに首輪が上下する。
(まずはこの首輪を外さないとな)
黙ってついて行く。
命令には從う。
だが、いつまでも捕虜として飼われる気は無かった。
なにより、リングヴルドがいつまでもウィルを飼っている保証などない。
いづれトカゲの尻尾切りに会うのは、目に見えている。
チラリとレイラを見て見る。
無表情の顔でなにを考えているのかわからない。
監視役ということは、首輪の術師はレイラだろう。
ウィルはまず、彼女をどうにかしないといけない。
(脱走だ。必ず逃げ出してやる。それまで何としても生き残る!!)
密かに決意を新たにする。
廊下の先からは、久しぶりの太陽の光が目を刺していた。




