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プロローグ
"プロローグ"
少女は夜の森を走っていた。手には杖を持っている。
先端が人の指先みたいな奇妙な杖だ。血を連想させる色合いといい、とても趣味のいい代物とは言えない。
「くそ、明かりのあるうちに仕留めて置くべきだった」
ダンッ
不意に銃声が聞こえる。
しかし狙いは大きく外し、離れた木に命中する。
「そこ!」
今度は少女が、杖を銃声のした方に向ける。
「はい残念。暗闇だと<人刺し指>が使えないと思った?」
杖の向けた方向で何かが倒れる。少女が近寄って見ると、黒いコートを着た男が倒れていた。地面には男の血が、池だまりを作っている。
「だから言ったのに。君じゃあ私には勝てないって」
少女が懐からナイフを取り出して男に向ける。
「せめて苦しまないように、早く殺してあげる」
ナイフを振り下ろす。
それはとある一夜の出来事。
とある少年が辿る、悪夢の始まりの夜だった。