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第009話

「ところで、このまま行くとして、最終目的地はどこになるんだっけ?」

「はぁ!?」


 私は魔王を倒す気がないから特に決めていなかったが、最終目的地は必要だろう。そう思って皆に聞いてみたところ、意外そうな顔が返ってきた。


「いやいや、一応魔王のところじゃないの?」

「そうよ、倒すかどうかは別にして、魔王には会った方が良いんじゃないかしら」


 それもそうか。あのクソ王の事だ。きっと「勇者が魔王を倒す旅に出た」って事を大々的に言っているに違いない。なら、魔王のところに行って、釈明くらいはしておいた方が良いだろう。


「そっかー、んじゃ、次の目的地は魔王のところね」

「いきなり!?」


 だって長々と訪問を伸ばしても良くないじゃん。こういう事はちゃっちゃと済ませた方が良いのだよ。


「で、魔王の国ってこっからどう行けば良いの?」

「それは西の方ですから…あっ」


 私達は王都を出て東の方に向かっている。という事は、魔王の国とは真逆の方に行ってるって事なのかぁ。でも、今更王都に戻るのもいやだなぁ。ついでだし、ちょっと大回りに王都を迂回してから魔王の国に向かいましょうか。ここからなら、北にもうしばらく行くと私の村に通じる街道に出るはずだ。やはり私の村を拠点にあっちこっちに行くのが良さそう。


「と、いうわけで、一旦私の村に戻ります」

「そうですね、王都以外に拠点を決めるなら、どうしてもあそこになりますもんね」


 ゲネートよ、あんたは家族に会いたいだけだろ。この男、実は妻子持ちで単身赴任状態なのだ。カリーネさんは知っていたようだったが、クワイトは知らなかったらしく、私と一緒に愕然としていたな。

 まぁ、反対者はいないようなので、ゲートで村へ戻る。そういえば、ニンジョールノからこの村に道を作っても良いかもしれないな。


 村に戻って、この日は解散する事にした。カリーネさんとゲネートはそれぞれご家族の元へ、クワイトは宿屋へ向かった。私は村長の家に向かうと、ニンジョールノとの道について話をした。


「ふむ、そのような領主なら大丈夫じゃろ。道は3人くらいで作ればすぐにできるじゃろうから、リリンはニンジョールノの領主にこの事を伝えてくれれば良い」

「はーい。あと、ニンジョールノに土魔法使いも何人か出してもらうかも」

「その話を聞けば当然じゃな。任せておけ。あと、2人だけじゃが空間魔法使いも出てきておる。ゲートも使えるようじゃから、そのうち連れて行ってあげて欲しいのう」

「なら、明日一緒に連れて行ってくるよ」

「まかせたぞい」


 村長とは他にも色々と話をしてから、その日はそのまま村長の家で寝てしまった。


 次の日、私の元に二人の魔法使いがやってきた。一人はゲネートの親戚でコノワールさん。もう一人は以前から村で農業に従事してたソーダ・テルノという13歳の少女だ。


「では、良いですか?『ゲート』」


 私はニンジョールノへのゲートを開ける。二人は吃驚した顔をしているが、この魔法使えるんじゃないの?


「いえ、使えると言っても、必要な魔力も多く、長い詠唱も必要でこんなに簡単には開けませんよ」


 コノワールさんがそういう隣で、ソーダさんもうんうんと頷いている。そうか、スキルはあるけどレベルが足りないんだ。ここはドラゴン・ブート・キャンプかな?と思ったとたん二人が全力で頭を横にぶんぶんと振った。


「むぅ、レベルとステータスアップは必須だよ」


 結局ドラゴンの肉である程度ステータスアップを行ってから、村の狩人と一緒にレベル上げをする事に決定した。村の狩人にとっても空間魔法での帰還ができるのなら、狩りがだいぶ楽になる。なんかドラゴンの肉を出した私だけが損している気がする。

 まぁ、それは後の事として、ニンジョールノへ移動し、領主さんに面会する。と言っても大まかな話は既にしてあるので、始めるよーって言うだけだ。


「これはこれはリリン様、ようこそいらっしゃいました」

「いらっしゃいませ、リリンお姉様」


 いつの間に私はマーガレットちゃんのお姉さんになってしまったのでしょう。領主さんもなんか苦笑いしてるよ。


「同じ年なのに何でお姉様なのかな?マーガレットちゃん」

「同じ年でも、お姉様はお姉様としての格があるからです」


 意味わからん。ソーダさん、カリーネさん、二人ともこっそり笑わない。他の男共も肩が震えてるの分かってるんだからね!

 まぁ、そんな事はあったものの、道と土魔法の魔法使いの件は問題ないことを連絡、今後は空間魔法使いの二人がメインでゲート係になることも伝えた。


「本当にありがとうございます。ニンジョールノがもっと暮らしやすくなるよう、皆で努力していきます」

「今までより確実に街の規模は大きくなるからね。こないだ連れてきた書記官さんも居るし、振れる仕事は皆に振ってね」

「本当、リリン様は10歳とは思えませんな。その知識はどちらで?」

「神様です」


 本当は前世の知識なんだけど、神様に前世の記憶などもそのままに転生してもらったから嘘というわけでもない。ここは神様に全てを押し付けちゃおう。


「神様ですか」

「ええ、神様です。ついでに、魔王さんは悪くない人という事も、勇者の装備に何の効果もない事も神様から教えてもらいました」


 別に口止めされていたわけではないので、この際全部言ってしまいましょう。あ、転生者であることは言わない方が良いか。


 そんなわけで、転生者であること以外言い切った私は実に晴れ晴れとした気分だった。それに比べ、勇者パーティの仲間達は頭を抱えていた。特にカリーネさん。


「神託でも、リリンちゃんの言った内容に間違いはないそうよ。どうしましょう?」

「こりゃ、本当に魔王のところは挨拶だけして、村(?)に閉じこもっていた方が良いかもな」


 何故村に(?)がつくのでしょう。そりゃ、最近は規模もでかくなって、村と言うよりはもう街と言った方が納得できますけどね。それよりも、引きこもりは良くない。私は色々見て回りたい。


「色々見て回りたいけど、魔王を倒さないとおっさん(王)がうるさい。なら、いっそのこと…」

「何考えてるのかは分かるけど、それは一応無しで」

「えー」

「えーじゃなくて。あれでも王だから、居なくなると国中が大変なことになるのよ」


 カリーネさんに全力で止められてしまった。なら、旅は続けて、何か言ってきても無視って事でいいかな。いいよね。


「まぁ、そのくらいだろうな。無視しても俺らには力ではかなわないだろうし、この村を人質にしようにも無理だし、ニンジョールノも同じようにするんだろ?」

「勿論、城壁には飾りに擬態させたゴーレムを配置するし、こっちからも何人か行ってもらう予定」

「なら大丈夫か」


 無視ってことで決まってしまった。まぁ、旅に出るときも大したお金や装備は渡されなかったし、ありがたがる必要もないね。


「それじゃ、次はこっから西に向かおうか。西には何があったっけ?」

「ここから西だと、お前が入り浸っていた魔物の森になるな。そこを抜けると魔王の国との国境の街ハテイシに着くな」

「魔王の国って意外と近い?」

「因みに、魔物の森を抜けるには一カ月程度はかかる」

「そのくらいなら「「「却下で」」」ええっ!?」


 魔物の森ってちょっと強いモンスターがうろうろしている程度だよ。レベリングにも最適だし、まっすぐ抜けるだけなんだから良いじゃないの。


「リリンちゃんのステータス基準で言わないで。私達はまだ村の人達よりも弱いのよ」


 あっ、そうだった。今の村の人達って、だいたいレベル60くらいはあるからなぁ。ならレッドドラゴンの肉食べてもらって暫くレベリングしましょう。うん、それが良い。


 と言うわけで、私の旅の仲間達のレベリングが決定したのでした。


次回は第5話以来のメンバーレベリングです。

でも、レベリングする必要あるかな。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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