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第006話

ブックマークありがとうございます。

「いや、そりゃダメだろ」


 私の提案はソッコーで却下されました。

 却下された案は、道がそこにしか無いのなら、道の通りに行かずに道を新しく作ってしまえば良いじゃないというもの。勿論、どこに着くかはその時になってみないと分かりません。


「じゃあ、道を作らずにその辺の森を通り抜ければ良いじゃない」

「うーん、それなら大丈夫かな?」


 道を作らなきゃ大丈夫って、後で理由を聞いてみたところ、今回寄りたくない街の領主に因縁つけられる可能性が高いので、ショートカットとか作るとメンドイ事になるそうなのです。あ、街の名前も教えてもらいました。ムシリトールの街と言うのだそうです。本当に行きたくなくなりますね。


 でも、やっぱり道が無いのは面倒です。ここは魔法で作りましょう。因縁つけられたら、その時に考えましょう。勿論、実力行使対策はしときますけどね。


「風魔法で伐採、土魔法で地慣らし、重力魔法でローラーかけて、結界魔法で森からの襲撃防御」

「「「やめろー!」」」


 いやー、もう発動させたから、少なくとも森を抜けるまでは術は解除されないよ。うん、出来上がった道もそんじょそこらの街道よりも上等だ。あ、伐採した木材もあるし、野営しそうな箇所に簡易の宿泊施設も作ってあげよう。


 こうして、私達はムシリトールの街をパスし、その北にある割と評判の良い領主さんが治めるニンジョールノの街へとたどり着いた。

 このニンジョールノという街は、ムシリトールと比べると税金とかも安く治安も良い街なのだそうです。ただ、交易街道は南のムシリトールを通っているので、商人とかの交通はそんなに多くなくて領主さんは大変なのだそうです。


「なんで、こっちに交易街道を通さないんですか?」

「ムシリトールが国に多額の献金をして、無理矢理通したらしいわよ。今でも献金してるそうだから、かなり儲けているんでしょうね」


 そっかー、だから簡単に道を作っちゃダメって言われたのか。

 でも、こっちに道通した方がどうやら距離としては近いみたいで、ムシリトールまで一週間かかるところが、ほぼ同じような位置になるニンジョールノだと4日で到着しています。やっぱりこっちの方に街道通した方が良かったんじゃないかなぁ。


「そういえば、作った道は管理を誰にさせよう?」

「え、作りっぱなしじゃないの?」


 そんな無責任な事はしませんよ。話を聞く限り、ムシリトールがこの道に何等かの妨害工作を仕掛けてくるは分かっているのです。なら、そうされないための対抗処置もしておくべきでしょう。


「神様ー、何か良い方法あるかなー?」

「えー、ゴーレムでも巡回させといたら?」


 あ、ゴーレムって手がありましたね。魔物としてご認識されないように分かりやすい服を着せておけば良いでしょう。


「それで、この数のゴーレムってか。しかも途中で狩りまくった魔物の魔石まで使って自動魔力補充までやるとか…」


 作ったゴーレムは約百体。しかも魔物の魔石を使ってます。魔物の魔石を使うと、稼働時間が大幅に伸びるので、こういったのに向いているのですが、それでも限界があり、一年も経つと魔力が切れてしまって動かなくなります。

 そこで、道の途中にゴーレム用の魔力補充装置を作っておき、通常はこの補充装置に入れた魔石に大気中に漂う魔力を補充しておきます。そして、規定値以下になったゴーレムはこの装置の場所まで来て、魔石を交換するという風にします。これでゴーレム達は、魔力切れを気にすることなく働けます。


「うん、これで大丈夫。例え広範囲殲滅魔法を打ち込まれても、この道は穴の一つも空かないよ」

「そ、そうなんだ。因みに盗賊とかはどうするんだ?」

「それもゴーレム達の仕事にしてる。捕えて王都近くの村か、こっちのニンジョールノの街へ連行する事にしてる」

「安心、安全な道か。他のところもこんな風にできれば良いのにな」


 クワイトはそう言いますが、普通の人は多分ゴーレム三体作るだけで精いっぱいだと思うよ。それに、そんな風にしたら冒険者さん達のお仕事が激減してしまう。


「こっちの守衛さんに、ゴーレム達の事を教えておかないとね」

「ああ、そうだな。それより、道を作ったという事の方を報告しないとダメだろう」


 ゲネートの言う通り、道を作ったことを報告しとかないとね。

 私達は、ニンジョールノの正門前に並んで、順番が来るのを待ちました。と言っても、そんなに並んで居たわけではないので、すぐに順番が回ってきます。


「はい、次の人。ステータスプレートか、他に身分証明になるものを見せて頂けますか」

「あ、これでいいですか?」


 この世界、10歳のスキル判定で「ステータスプレート」というものが発行される。このステータスプレートが各自の身分証明書の代わりになるのだが、このプレートは名前と種族、年齢の他にも各種ステータスやスキルまで表示ができるようになってしまっている。

 勿論、他人に公開しない設定もできるのだが、その場合には自分も確認できない為、ついうっかり全公開にしている人もいるようだ。そんなの見せたらメンドイ事確実なので、しっかり称号やステータスを隠して、名前と年齢、それから種族を公開にしたステータスプレートを見せる。


「はい、確認しました。ところで、森の方から来られたようですが、そちらには道は無かったはずですが?」

「あ、それ報告しようと思ってました。道を作りました。保守はゴーレムがやってくれますので、安全ですよ」

「え?」

「え?」


 守衛さんは理解ができていないようです。固まってます。そんな守衛さんに他の守衛さんも気付いたのか、ちょっと身分の高そうな人がやってきました。


「おい、アール、どうした」

「あ、すいません、隊長。この子がちょっと理解できない事を言ってきたので」

「一体どういう事だ」

「なんでも、森に道を作ったそうです」

「はぁ!?」


 あ、隊長さんも固まった。アールという守衛さんも困った顔をしています。

 しばらくすると隊長さんも復帰してきたので、私達は隊長さんとアールさんをその道へと案内する事にしました。


「ええと、その道はどこに続いているのかね?」

「王都の近くの村ですよ」

「ではムシリトールは…」

「勿論、通りません」


 隊長さん、何故か顔がにやけてます。そんなにムシリトールが嫌いなのでしょうか。まぁ、わからないではないですが。

 そんな隊長さん達に道や保守しているゴーレムについて報告をしたところで、隊長さんから是非とも領主さんに会って欲しいとお願いされました。何でも、今の領主さんはとても良い人なんだけど、この街は主要な街道から外れていたせいでちょっとお金が無かったのだそうです。

 それがこの道ができることで、この街も活気が出てきそうだという事を領主さんに話して喜ばしてあげたいのだそうです。

 それくらいなら、全く問題ありません。これが褒美がどうの、宴がどうのとか言い始めたらすぐに逃げますけどね。


 そんなわけで、隊長さんに連れられて私達は馬車で領主館に向かいました。馬車は、隊長さん達警備隊のものを使わせてもらいました。乗り心地はあまり良くはありませんが、まぁこんなものでしょう。


「領主さんて、どんな方なんですか?」

「領民にとってはとても良い人だよ。税も他の土地に比べれば安いし、治安なんかにも力をいれている。でも、その分貴族間のやり取りがあまり無いから、他の貴族には好かれていないようだね」


 貴族の間での交流はとにかくお金がかかります。ここの領主さんは税を安くし、治安等にお金を使うことに注力しているので、貴族間の交流にかけるお金がないようです。なんとかしてあげれたら良いのですが、ここの領主さんなら道一つを有効活用して街をもっと発展させてしまいそうです。


 そうしているうちに、領主館が見えてきました。ここの領主館は、2階建ての質素なお屋敷です。どうやら1階に役所としての機能を持たせ、領主家族はその2階に住んでいるようです。


「領主様は自分達の事については、本当に金かけないからなぁ」


 とは隊長さんの言葉です。これはこれで部下が萎縮してしまいそうなのですが、領主さんが自分達は贅沢に慣れていないだけなので、皆が贅沢できるようになって教えてくれるのを待っているんだと言っているそうなんです。なので、皆領主さんに贅沢を教えれるようになるよう頑張っているという話は、私達にとってとても新鮮なものでした。


 さて、いよいよ領主さんとのご対面です。何を話しましょうかねぇ。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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