表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/39

第004話

「よし、それじゃ再度王都にしゅっぱーつ」


 ゲートで移動すれば一瞬だ。先程の路地に皆移動し、手をつないで透明化をかける。手をつないだ理由は、各自透明化をかけると仲間でもわからなくなるからだ。

 一番前をカリーネさんが、次に私、その次がゲネートで最後にクワイトになる。ちょっと歩きにくいが、手をつないだまま一列でカリーネさんの家に向かう。気配探知で周囲の監視がさっきと変わらない事は確認済みだが、私達が家に向かっていても気付いた様子はないようだ。


「それじゃ、メモを玄関のドアに挟んで、軽くノックして下さい」


 玄関先に到達したところで、カリーネさんに私が小声で指示を出す。いきなり玄関をノックして出てきてもらっても、透明化しているので相手にはわからないし、挙動不審だ。だから玄関にメモを挟んでそれを確認してもらってから、その指示に従ってもらうようにする。因みに、メモは村であらかじめ準備してもらっていた。


「はい、あれ?」


 出てきたのはメイドさん。どうやらこの家に雇われている人のようだ。カリーネさんのおうちってお金持ちなのね。そのメイドさんはメモをしばらく外をキョロキョロしていたが、メモを見つけると、首を傾げながら玄関を閉めて行った。


「それじゃ、次はカリーネさんの部屋に移動だね」

「そうね、部屋の窓が開くのが合図よね」


 カリーネさんの部屋は2階だそうなので、全員を飛行魔法で浮かす。そしてその部屋の前までふわふわ移動したところで、ちょっと慌てたメイドさんが全力で窓を開け放した。

 私達はそのまま窓からカリーネさんの部屋に入り込むと、静かに窓を閉め、透明化を解除する。勿論、窓の外からは見えないように窓に偽装の魔法をかけた上でだ。


「ただいま、マーサ」

「お、お嬢様!本当にお嬢様なのですね!」

「ええ、お父様達は居るかしら?」

「メモにありました通り、今この家に居られる方々は全員居間に集まっておられます。旦那様も居られます」

「なら行きましょうか。あ、彼らは旅の仲間なので警戒しなくても良いわよ」


 カリーネさん、お嬢様でした。そして、メイドさんに促されるまま居間へ案内された私達は、私の村への移住計画を(主にゲネートが)説明しました。その間、カリーネさんのお父さんは難しい顔で聞いていました。


「だが、私達が普通に移動してもすぐに捕えられるのではないか?」

「あ、それはゲート使えば大丈夫ですよ。どうせ村を案内しないといけないですし、今から行きましょうか?」


 取りあえず、ゲートを開いておこう。いきなり人の目に着くところだと問題なので、私の部屋にしておいた。

 ところが、カリーネさんのご家族はこのゲートを通ろうとしない。どうやら知らない魔法なので怖いようだ。


「うーん、それじゃ、この魔法の効果をちょっとわかりやすくお見せしましょうかね」

「そんな方法あるなら、先ずはそれで納得させてからにしなさいよ」

「いや、怖がるなんて思わなかったもので」


 カリーネさんとやり取りしながら、同じ部屋の中でゲートの魔法を使う。私の後ろにゲートを作り、部屋の反対側にその先を設定する。ドアを開けると、反対側のドアも開く。私が通ると、反対側から出てくる。


「なるほど、こうなっているのですね。漸く理解できました。大変申し訳ございません」

「分かって頂けたら良いです。では、もう一回村にゲート開きますね」


 そんなわけで、再度ゲートを開いて、カリーネさんのご家族はその殆どがその日のうちに村へ移住していった。村では教会で回復魔法を使ってお医者さんのような事をメインにしていくのだそうだ。

 そして、ゲネートのご家族も同じように村に移住して行くことが決まっていった。ただし、こいつの家族の場合、大量の書籍と実験道具等があったので、それを運ぶのがめんどくさかった。

 なお、ゲネートのご家族は魔法学者の一家らしいのだが、魔力を流すと動作する魔道具を作る事ができるようなので、それらを作って売ったり、修理をしてもらうことにした。村人には魔道具作れる人なんていなかったもんねぇ。


 そんなこんなでカリーネさんのお父さんが無事に村に赴任と言う形で移住してきたので、私達は一旦旅の続きを始める事にした。形だけでも、旅をしているように見せる必要があったからだ。まぁ、最近は盗賊警戒の為に助けた村の周囲を見回っているというふうにしているので、足止め状態でも今は問題はない。だが、そろそろ出発しないとバカ王も焦れて来るだろう。


「それじゃ、明日には出発するとして、この先どこに行こう?」

「うーん、勇者の装備ってどこにあるってのは明らかになっていないからなぁ」

「あ、勇者の装備って、特別な力は無いって神様言ってたよ。ただ頑丈なだけなんだって」

「「「え、そうなの?てか神様とお話しできるの?」」」


 勇者の装備よりも、神様とお話しできる方が驚かれました。そう言えば、この前神様とお話しするのに、カリーネさんでもあと10レベル以上必要なんて言ってたっけ。


「そっか、そうだったね。カリーネさん、あと10レベル以上ちゃっちゃと上げましょう」

「え、私10レベル上げないとダメなの?何で?」

「神様のお話し相手になってもらうためです」

「まさかの神託!?あと10レベルで神託聞けるようになるの!?」

「そうですよ。神様がそう言ってました」

「分かったわ!それじゃ明日から魔物をバンバン狩っていくわよー!」

「あ、その辺はちゃんと考えてますんで。計画通りなら、3日で10レベル上がりますから」


 さて、明日からはカリーネさんのパワーレベリングですかね。他の2人も、一緒に上げときましょうか。



□■□■□■□■□■



「と言うわけで、これから皆にはそこの森でレベルを上げてもらいまーす」


 リリンちゃんが、にこやかな顔をして絶望的な言葉を吐く。こんな王都からもそう離れていない森でレベル上げなんて、そんなにちょうど良いレベルの魔物なんて居ないんじゃないの?


「大丈夫ですよー。森の中央から手前の方にオークの集落が5つ、そっから中央に向かう途中にオーガの集落が3つありますから」

「ちょっと待って。オークやオーガって、ここ辺境だっけ?」

「いや、王都から一番近い村のはずだが…」

「彼らはそれなりに知恵が回るようです。これまでは兵の巡回も上手く隠れてやり過ごして居たらしいですし、旅人を襲うのも、目立たない程度に抑えてます」


 オークやオーガにそんな知恵があるなんて、初めて知ったわ。普通、オークもオーガも兵に対しては突撃一本槍っていうイメージしか無かったからね。

 でも、そんなに知恵の回る魔物だったら、私達も見つけることはできないんじゃないのってリリンちゃんに聞いてみると、彼女は「気配探知」ができるので、魔物の位置を把握するのは簡単らしい。という事は、巡回の兵って気配探知を持っていないか、持っていてもレベルが低いって事よね。巡回の意味ってあるのかしら。


「神様が言うには、カリーネさんだけでオークの集落を全滅させれば、10レベルくらいあがるそうですが、頑張ってみます?」

「いえ、せめてリリンちゃんも一緒に戦ってください」

「えー、メンドイ」


 何だかんだ言いつつ、私とリリンちゃん、クワイトとゲネートの2組でオークの集落を攻略することになった。クワイトとゲネートは、リリンちゃんに言わせれば「脳筋」との事なので、もうちょっと頭を使った戦い方を身に着けて欲しいのだそうだ。10歳の女の子に頭使えって言われる大人って…。


 そんなこんなで、私達はオークの集落の近くに潜んでます。どうやら、集落にはオークが50匹程いて、多分旅人なんだと思われる女性が6人程捕まっているのが見えます。リリンちゃんは神様と何やら打ち合わせみたいなことをしています。あ、今終わったみたいです。


「カリーネさん、これを使ってみませんか?」


 そう言ってどこからか取り出してきたのは、一本の杖でした。ただ、杖というよりは棒です。先端に特別な魔石等の処理はされておらず、ただ石突のような処理がされているだけです。


「この杖、魔石は見えませんが、魔力補助はしっかりやってくれますからね。それに軽くて戦いやすいんですよ」

「そ、そう」


 私は一応、神官戦士としての訓練も受けてきています。ですが、その成績は平均よりかなり下。下手すると足手纏いです。ですから、補助や回復に特化した戦い方だけを行ってきました。

 勿論レベルを上げるには、戦わなくてはなりません。チームやパーティでは、基本的に貢献度で経験値配分が決まってきます。補助や回復はそれが必要な戦いでは多くの経験値がきますが、そうでない場合はただ眺めている人になってしまうのです。


「あ、今から言っておきます。私、あの女性達を助けたら、手を出しませんから」


 リリンちゃん、鬼です。でも、神託を受けれるようになるには、レベルを上げるしかないのです。ここは覚悟を決めましょう。では、リリンちゃん、行きましょうか。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

ご意見、ご感想、評価やブックマーク等お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ