第038話
「ゴアァァア!!!」
やっぱり大したダメージにはなっていないようですが、それなりに嫌がらせにはなっているようです。ですが、これ以上の手が今は考えついていないのです。
「うーん、どうしようかなぁ」
「リリン殿、こちらでしたか。一体何をしておられたので?」
「あ、あのクソ王探してたんだった。クソ王は、そっちの囲いの中で気絶してるから、捕縛して連れてって。今クソ王が造り出したモンスター?と戦ってる最中だから、早めにこの場から逃げることをお勧めするよ」
そこに現れたのは元衛兵さん率いる一隊。どうやら私の姿が見えないのを心配されて、ゴーレム達に案内されて来たようだ。
「あ、そうですか。おい、捕縛して連行しろ。先ずは遠間から衣服を切り刻んで何も持っていないことを確認してからにしろよ。
で、リリン殿、そのモンスターと言うのは…」
「今あそこに閉じ込めてる。元は人間なんだけど、色々弄られてるみたいでもう人間やめてるって感じ」
「は、はぁ」
「ガアァァァッ!」
「ひぃっ」
クソ王が裸にされ、そのまま連行される。文字通り裸の王様だ。予想通り防御や反撃の魔道具を持っていたが、魔力を込めないと発動しないので、意識がない今はただのガラクタでしかなかった。
それよりも、問題は元上司。あ、そう言えばクソ王が持ってた水晶玉で何かしてたね。あれでコントロールできないかな。
私は元衛兵さんに水晶玉を拾ってもらうと、神様にコンタクトをとった。
『神様ー、これ何だかわかる?』
『これは対象の魔力を制御する制御玉ね。隷属の術式も動いているから、これに魔力を込めて命令したり、逆に相手の魔力を抑え込むこともできるわ』
『おー、それじゃあいつ倒すのに使えるね』
『でも、今はアレ理性もへったくれもないでしょ。命令は聞かないわよ』
『いいの。今回使うのはそっちじゃないから』
私は水晶玉に魔力を込めて命令した。
「お前の魔力を全て寄越せ!」
水晶玉が光ると、魔力が流れ込んでくるのがわかる。しっかし汚い魔力だねぇ。元上司の人間性が出ているような気がするよ。
私に流れ込んでくる魔力を使って、新たにゴーレム達を造り出していく。これはとりあえずの処置なので、あまり造形とかには拘らずに普通のゴーレムにした。懐かしのサ〇シャインマンかゴールドライタ〇かといった四角ばった造形だ。
それを百体くらい作ったところで、元上司の雄叫びがいつの間にか悲鳴に変わっていた。
さて、魔力もほぼ奪いつくしたのか水晶玉から流れ込んでくる魔力も微々たるものになってしまった。このまま放っておいても良いけど、どうしたもんかねぇ。あ、カっちゃんに相談してみようかな。
「ゲート」
私はゲートを開いてピース王国王城の執務室へ移動する。そこにカっちゃんが居るはずだ。だが、そこには誰もいなかった。
「あれ?カっちゃんはどこかな?」
私は探査魔法でカっちゃんを探すと、謁見の間に居ることが分かった。誰かと会っているようだけど、この魔力は私の知らない人だ。いや、似たのは知っている。それに、何人か死んでしまいそうな弱い魔力。これは急がないといけないね。
「もういっちょゲート!」
謁見の間にゲートを開いて移動する。そこは血の海と化していた。カっちゃんが何とか相手と互角に戦っているが、トーヤさんをはじめとする近衛騎士団は既に敗れ去り、中には既に斬り殺されている者もいるようだ。トーヤさんはまだ大丈夫だが、暫く動けそうにない。
「おぅ、姐さんか!ちょい手伝ってくれ!」
カっちゃんの相手は双剣の使い手のようだ。さっきは互角と言ったけど、カっちゃん側から攻撃ができる状態じゃない。私は木の棒を取り出すと、カっちゃんとは反対側から近づいて思いっきり振り抜いた。
「ガァッ」
私の木の棒を受け止めようとしたようだけど、そんなのでは受けられない。そのまま剣をへし折り、腹に一撃を食らって壁に吹っ飛んでいく。それを好機とみたカっちゃんが剣をそいつにぶん投げ、近衛兵の剣を拾いに行く。もちろん私も近衛兵の剣を操って突っ込ませていく。
「ギャアアア!」
ほぼ全身に剣が突き立ち動けなくなったところで、カっちゃんが首を落とす。そいつには再生能力や吸収能力はないようだ。そのまま動かなくなった。
「これは一体何があったの、カっちゃん」
「ああ、いつもは執務室で仕事してるんだが、こいつが押し入ってきたという報告を受けて謁見の間で待ち伏せしていたんだ。で、押し包んで倒そうとしたんだが…。近衛兵はこの国でも腕利きを登用していたんだが、この有様だ」
「これは、クソ王が送り込んできた刺客だね。私が思う通りに動いていないから、直接行動に出たみたい。でも、そのクソ王は捕らえたよ」
そう、こいつから感じる魔力は元上司から感じる魔力と似ていた。だが、元上司程の強さはなかったから、実験台か試作品だろう。あのクソ王ホントろくなことしない。
そんなわけで、ピース王国とベタルリア国の関係は最悪になってしまった。ただ、原因の排除と今後の賠償さえどうにかなれば両国の関係改善は可能だろう。何と言っても原因は既に捕らえられているのだから。
「取り敢えず、近衛騎士団を治そう」
私とカっちゃんは二人がかりで治癒魔法を使い、まだ息のある人達を治していく。トーヤさんも何とか動けるようになったようだ。しかし、たった二週間とは言え、自分と接したことのある人が死んでしまっているのは辛いね。
「このまま国境まで行こう。多分クソ王の命令で国軍が居るはず」
「そうだね。王子が攻めてくるって聞いたから、こっちを滅ぼして逃げてくる気だったんだろうね」
そうと決まればゲートと言いたいところだが、私はピース王国に来るときは古竜に乗ってきたから国境地帯に行ったことがない。
「古竜ほどの速度は出ないが、こちらでも飛竜の育成に成功した。それで行こう」
それなら大丈夫だ。私はカっちゃんと二人で飛竜に乗り込み、国境を目指した。
国境では、やはりベタルリア王国の軍が陣を敷いていた。カっちゃんは今国境を超えると問題がややこしくなるので、私だけ軍の中枢部に飛び降りる。カっちゃんは国境の向こう側で待機だ。
「何者だ!」
「私は勇者リリン。既に今回の命令を出した王は捕らえられ、王子が戴冠の予定だ。即刻軍を引け」
「そ、そんな。だが、まだピース王国には…」
「ああ、刺客は私とピース王国国王とで倒した。いつまで待っても来ないし、ピース王国国王はそれ、そこに居る」
私が国境を指さすと、カっちゃんがフル装備で立っている。あれって結構ボロボロになっていたはずだけど、予備でもあったのかな。
「くっ、ピース王国国王は一人だ。射殺せ!」
この将軍はやっぱり馬鹿なのだろう。ここに勇者、国境の向こう側には「魔王」がいるのに、勝てるつもりらしい。
「お前、私の存在を忘れちゃいないかい?」
私は将軍を殴り倒し、その側近共を土魔法で拘束する。そしてこの将軍より通る声で兵士達に通達を出した。
「私は勇者リリン。この戦は無意味なものだ。即刻軍を引き、王都へ戻るように。戻らない場合は私自ら相手になってやろう」
それを聞いた一般兵は、戦うのを辞めて立ち止まる。何人かの指揮官が喚いているが、そこに私はゲートで移動して「OHANASHI」させて頂いた。徐々に軍が王都に向かって退却を開始していく。カっちゃんも矢を斬りはらうために抜いていた剣を収め、退却を見守るのだった。
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