第037話
戦闘シーンって難しいですね。何度も書き直しました。
「ちっ!」
何だこのガキは。最強のはずの俺についてくるどころか、反撃までしてきやがる。しかし、この戦い方は「あいつ」に似ている。俺が罠にはめて殺した「あいつ」に。
「ふん、まだその身体を十分に使いこなせてないみたいだね」
木の棒が唸りをあげて襲い掛かる。俺は左手の剣でそれを受け流し、右手の剣を突き出す。銃はねぇのかよ。そしたらこんなガキすぐに殺せるのに。
やつの剣を躱す、受けるそして斬りつける、薙ぎ払う。こいつは攻撃が当たらないのを理解しながらもその手をやめようとはしない。そして、こちらの攻撃も当たらない。
ガキン
シュッ
ジャッ
武器を振るう音と剣がぶつかり合う音のみが鳴り響く中、一人蚊帳の外に置かれた人物が動き出した。
「ええい、やはりこのままではダメか。ちと危険だが、『制限』を解かねばなるまい」
こいつは何を言ってい…
「グオオオオオオオ!」
力が、力が溢れてくる!これで勝てル!カテルゾ!
□■□■□■□■□■
あのクソ王が手に持つ水晶に魔力を込めた途端、元上司の様子が一変した。そう、まるで「狂暴化」したかのようだ。
力は強くなったようだが、動きは荒々しくなり、目からは理性の光が消えている。これだと自分も危ないだろうに私を殺すことを優先したようだ。ただ、なんとなく今のままではダメだと思ったのか、力を溜めつつその身体を変異させている。
「ガァッアアアア」
「ちっ、今のままじゃまずいね。もう一段ギアを上げるか」
私は前世から、所謂「制限」を課して戦っている。今であれば木の棒だったり、魔法の連発を抑えたりだ。これは、そうすることで身体の使い方を鍛えるというのがあった。今ならば魔力の効率的な使い方の訓練も兼ねていた。
だが、アレはそう言う状態では苦戦してしまうだろう。負けるとは思わないが、万全を期しておきたいのだ。
「刀よ」
私は空間魔法で収納していた愛刀を取り出す。この刀はこちらの世界で造り出したものだ。鉄はおろか硬さでは定評のアダマンタイトやミスリルですら斬ることができる。こんにゃくだって斬れるぞ。
「さて、その前にクソ王には眠ってもらおうかな」
私がちらりと視線を向けると、まさにそのクソ王がこの場から逃げようとしていた。下手に逃げられると後が大変だ。私は土魔法でクソ王の周囲に壁を出現させると、更に上から金たらいを落として気絶させる。うん、一応生きているようだし、大丈夫だろう。
その間にも元上司の変異は続いていて、身体は鋼のように黒光りし、筋肉が膨れ上がっている。
「コ…コロス…コロス…」
「殺意だけの塊か。理性が残ってれば得意の搦め手やら罠やらできたでしょうに」
私は刀を晴眼に構え、元上司に相対する。元上司は変異を終えたのか、私を再度認識すると雄叫びを上げて襲い掛かってきた。
「ガァァァァァッ!」
「そんなんじゃ前世の私にも勝てないよ」
私は右へ交わしながら左腕を斬り落とす。元上司は違和感を感じたようだが、痛みを感じているようには見えない。よく見ると斬り落とされた左腕を探しているようだ。いやな予感がするので燃やそうとしたが、タッチの差で元上司に奪われてしまった。
「ガ、ガァッ」
驚いた。斬り落とされた左腕を一口で食べてしまうのにも驚いたが、その左腕が再生してしまうのにも驚いた。となると、再生できないようにしないといけないが、それは斬り落とした部位を食べられないようにしてしまうか、首を落とすしかない。さっきは燃やそうとしたけれど、あれは燃えるのだろうか?
「仕方ない、やってみるしかないか」
刀をしまい、長巻を出す。これは刀を作ってるときに調子に乗ってでかすぎる刀にしてしまい、仕方なく柄を長くして長巻にしたものだ。刀としての性能はさっきまでのと殆ど変わらないが、柄が長い分リーチがある。
私はそれを頭上で振り回して勢いをつけると、元上司に向けて振り下ろした。ただ、一回ではない。何度もだ。腕に魔力を通したのか、今度は中々斬り落とせない。だが、四回目の振り下ろしでとうとう右手が手首から斬り落とされた。ついでにそのまま別の場所も斬り落とそうとするが、それは右腕に阻まれた。
「炎よ」
長巻の攻撃は止めないまま、私は落っこちた右手に魔法を向ける。元上司は右手が気になるものの、私の攻撃を受けるのに精いっぱいで再生している余裕はない。
私の魔法で炎に包まれた元上司の右手はかなり燃えにくそうだったが、魔力を込めていたので何とか灰にすることができたこれでも再生できるのかな?
「グガ、ガァ」
右手を失った元上司が荒れ狂う。手の無い右腕を鞭のようにしならせて振り回し、左手で突きを放ってくる。途端に攻撃的になった元上司に踏み込むことができなくなったが、その場合は遠距離からの投擲か魔法だ。
「これはどうだっ!」
土魔法で鋼鉄の剣を多数造り出し、元上司の周囲に浮かべる。もう地中以外の全てを覆いつくす勢いだ。
「シュート!」
私の言葉に、全ての剣が元上司に降り注ぐ。そして、私は周囲を回りながら、元上司の動きを注意深く観察する。
どうやら、弱点は頭ではなく心臓のようだ。頭ではなく胸のガードを厚くしているので、間違いはないだろう。となると、先程自分の右腕を食べたのは必須ではなく、再生への補充という意味合いだったのか。
更に鋼鉄の剣を生み出したり、ガードされて弾き飛ばされた剣を再度突っ込ませてそちらに注意を引かせつつ、元上司の斜め後ろを確保する。まだこちらに対応できそうな感じなので、もう少し削っておこう。
暫く大量の剣による攻撃を続けていたが、先程から元上司の動きが変わってきた。弾き飛ばすのではなく敢えて腕や足に受けているように見える。そして、それらの剣はそのまま吸収され…って再生に使ってるの!?
「むぅ、そうくるとは思わなかったわ。ちょっと作戦を変えましょう」
私は一旦剣による攻撃を中断し、そのままその剣を壁に変えていく。足りない分も新たに作りだして厚さ一メートルの天井すれすれの高さの壁を元上司の四方に配置した。ちょっと作戦タイムが必要だ。
取り敢えず空気すら通らないようにぴったりと壁をくっつけて、天井にもくっつける。触れたものを全て吸収できるのなら困ったものだが、そうしているようには見えなかったから大丈夫だろう。
水で窒息。浮力で天井をぶち抜きそうだから却下。
このまま窒息を待つ。時間がかかりすぎ。それにその間に何等かの手を打ってきそう。
取り敢えずお酢でもぶち込んでみよう。嫌がらせにしかならないけどね。
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