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第036話

「全軍、出陣!」


 王子の号令が響き渡る。一応私も風魔法を使って、王子の声をニンジョールノ一帯に届かせた。尚、この王子の出陣に先立ち、我がゴーレム部隊は既に王都方面へ進軍を開始している。

 ゴーレムと作成者とは魔力で繋がっていて、どんなに離れていてもその魔力を通じて指示を出したり報告を受けたりできる。まるでカメラ付きのラジコンだ。

 そのゴーレム達からの報告では、最初の村近辺の制圧は既に終了して王都方面への街道を巡回制圧中との事だった。今のところは順調だ。ただ、順調という事は、向こう側がカードを切ってない事を意味する。国軍では相手にならないのはニンジョールノ包囲の時に分かっているはずだが、どうしようと言うのだろう。


「うーん、暗殺かなぁ」

「え?どうしたの?」


 私がついうっかり漏らした独り言が聞こえたのか、カリーネさんがこちらに尋ねてくる。幸い内容までは聞き取れなかったようだ。私はあいまいに返すと、主要人物の暗殺対策に取り掛かった。

 まぁ、暗殺対策と言っても大したことはしない。主要人物達にバフをかけまくるだけだ。おかげで王子なんか対物理攻撃無効、対魔法攻撃無効、状態異常攻撃無効状態になっている。これが十日程続くので、九日目くらいにこの戦いが終わらなければ、再度かけ直せば良いだろう。


「あ、ゴーレムからの報告。街道は制圧できたけど、王都は門を閉じてるって。住民を人質にするつもりなのかな」

「あの父の事です。城壁の上に並べて弾除けにすることも考えられます」

「それはちょっと国王としてはダメだね。うーん、そうだ。もう三体ゴーレム作るね」


 私は三体のゴーレムを作る。この三体は五百体のゴーレムと違い、諜報に特化させた。そう言えば諜報部隊も必要だったんだけど、魔力が繋がってるのが私で、報告とか全部私に来ちゃうから国とかでは使えない。


「んじゃ、王都に忍び込んで情報収集お願い」


 諜報ゴーレム達はしゅたっと右手を上げて返事すると、すごい速度で走っていった。機動力と各種隠蔽能力を上げた代わりに、戦闘能力はちょっと強い人程度でしかない。なので慎重に侵入してほしい。




 ニンジョールノを出て八日。王都が見えてきた。やはり城壁の上には住人達が並ばされている。


「これでは弓矢で攻撃できません」

「そうだよねぇ。ちょっと私が魔法使ってみてもいい?住民には攻撃しないから」

「ええ、この際城壁や城門が多少壊れても仕方ないです。リリン殿のおかげで隣国から攻めてくる可能性は殆どありませんから」


 そうだよね。ピース王国はまだ国としての体裁すら十分ではない。アルファーノ王国はクーデター騒ぎが収まったばっかりだ。両国とも自国の事で精いっぱいで、外に目を向ける余裕なんかないのだ。


「よし、それじゃあ行くよ。『土魔法』」


 作るのはトンネルだ。と言っても、地下ではない。土魔法でアーケードを作り、それをお城まで作る。城門周りは周囲を補強して崩れないようにした上で門の周りだけを崩した。これで通れるはずだ。崩れた門は、トンネル内に穴をあけてそこに放り込んで埋めておく。


「これで、お城まで一直線で行けるよ。先頭はゴーレム部隊が出口を確保するから、次に本隊が行って」

「分かった。ありがとうリリン殿」


 ゴーレム部隊百体がトンネル内をお城へ進んで行く。トンネル内は当然だが真っ暗なので、ゴーレム部隊と一緒に私も移動して魔法で灯りを灯していく。


 トンネル出口には、余程慌てて来たのだろう近衛兵達が肩で息をしながら待ち構えていた。そんなに息があがっていてはロクに戦えないだろうに。


「人はあまり殺したくないんだよねぇ。あ、これでも使うか」


 取り出したのは十本ほどの丸太。以前街道を作ったときに伐採した木をちょっと加工したものだ。これをゴーレムに持たせて二列に編成し、丸太を横に持たせたまま突進させる。

 そして、ゴーレムが丸太で近衛兵を押しやり、左右に分かれると、次のゴーレム達が同じように前方の近衛兵を左右に押しやる。この繰り返しで城に続く道が出来上がった。勿論ゴーレム達を壁にしておくのはもったいないので、土魔法で新たな壁をつくり、ゴーレム達には城門の破壊に向かわせる。


「ここまで戦いらしい戦いはなし、か」


 王子が呆れたように呟く。本来なら、まず王都の門を破るための戦いがあり、それに勝てても城門を破る戦いが待っていたはずだ。数で負けている王子軍は戦いを避けれるのなら徹底的に避けた方が良い。住民の被害もないし。


「さて、城の中は流石に戦う必要があるでしょうね。先ずは一階から?」

「そうだな。あとは王家しか知らない抜け道があったはずだ。そこを抑える」

「抜け道はゴーレム達に任せて。兎に角城を抑えて正当性を主張した方が混乱も少なくて良いと思う」

「そうしよう。クワイト殿、ゲネート殿、私と玉座に行くぞ」

「「はっ!」」


 私はゴーレム達と一緒に諜報型ゴーレムが探した抜け道に向かう。流石諜報型。いつの間に城の抜け道なんて見つけ出したんだろうね。カリーネさんは典型的な後衛タイプなので、回復魔術師部隊を率いてトンネル内に待機だ。ちなみに護衛は元衛兵さん達がやっている。


「おや?魔力が高い場所がある。例のスライムとかを造り出したところかな」


 抜け道はゴーレム達に任せておけば大丈夫。私は一人、魔力が高まっている場所へ向かった。



「ふん、勇者一人か。我が研究所の研究成果を試すにはいささか物足りないが、勇者をも屠る力を見せつければこんな反乱等すぐに鎮圧できるわ」


 城の地下には研究所があった。新たな魔物を造り出し、意のままに操って他国に攻め入ろうとしていたようだ。カっちゃんと比べて、どちらが魔王なんだかわかりゃしない。


「さて、出でよ!」


 クソ王の背後にあるでかいカプセルが開き、中から出てきたのは全長三メートルくらいの「人間」だった。黒い髪の毛に浅黒い肌。性別は男性のようだ。まだ目を閉じているが、この時点でもかなりの威圧を感じる。体には必要な筋肉だけがつき、無意味な筋肉や脂肪は殆ど無いようだ。だけど、どっかで見た顔だなぁ。


「起きろ!異世界の奴隷よ!」


 よく見ると首にかなりでかい首輪がついている。どうやら奴隷の首輪の強力なやつらしい。それに異世界って言ったね。カっちゃんみたいに異世界から召喚した人を奴隷にしたんだろう。しかも肉体改造とかしてそうだね。


 彼が目を開く。あぁ、思い出した。見たことがある顔だよ。前世の私の上司だった男だ。私は前世、彼のせいで死んでしまった。ここでその憂さを晴らさせてもらうよ。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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