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第034話

十日以上間が空いてしまいました。

以前のペースに戻すのが難しい…。

 取り敢えずニンジョールノは安全になったが、私がいなくなったら竜達も戻ってしまうだろう。そうなったら、また退却した軍がやってくるのは目に見えている。


『神様ー、ちょっとお願いしていいかな?』

『んー、内容次第だけど、何かしら?』


 神様にお願いして、王都の様子を見てもらう。特に第一王子の様子を重点的にだ。その間、私は古竜に話をして、おとなしめの竜達をニンジョールノの近辺に移住させてもらうことにする。


『ふむ、移住は多分できるだろうが、対価が必要じゃぞ』

『何が対価になるかな?』

『やはり食い物だな。彼等が言うには、年に一度で良いから人間の料理を奉じて欲しいとの事じゃ。』

『量次第だね。どのくらい?』

『そうさのう、ほれ、あの荷馬車十台分じゃな』

『年に一度で良ければ大丈夫だと思うよ。ちょっと領主さんにも聞いてくるね』


 領主さんにも了解を貰い、竜の移住も行われた。ニンジョールノの北にある森の中だ。そこは領主権限で狩猟を禁止してもらい、通常は竜の生活をそこで行ってもらうことにした。

 これで、ニンジョールノは大丈夫。村の方も大丈夫だから、こっちでやれることはやったって感じかな?


『王都、見てきたわよー』


 おっと、丁度良いタイミングで神様からの連絡だ。どうやら平民達には今回の事は知られていないらしい。知っているのは軍と王と一部の貴族だけだ。そして第一王子だが、軟禁状態にされる前に密かに逃げ出して、王都からこちらへ向かっているそうだ。


『今どこら辺?』

『リリンちゃんが最初に寄った村の手前ってところかしら。でも、追っ手が迫っているわよ』

『そりゃまずいね。ちょっとお迎えに行ってくる』

『その方が良いわね。行ってらっしゃい』


 私はゲートを開いて、最初に寄った村に向かった。



□■□■□■□■□■



「皆、もう少しで村に着くぞ。すまんが頑張ってくれ」


 私の言葉に、ついて来てくれていた数人の男女が頷き返す。その村からニンジョールノの街へと続く通称「ゴーレム街道」に入れば一安心だ。あそこは勇者が作ったゴーレムが常に監視をしていて、盗賊行為や襲撃があるとどこからともなく現れて盗賊や殺し屋共を叩きのめす。とても安心できる街道なのだそうだ。


「本来ならば王家が率先して行わなければならない事業なのだが、勇者殿にいらぬ手間をかけさせてしまったな」

「その勇者殿ですが、本当にお強いのですか?しかも旅に出ておられるそうではないですか」


 侍女のクレールは勇者に対して懐疑的だ。王の謁見の時のやる気のなさを聞いていたのだろう。だが、彼女は王家のためではなく国の民のためになら働いてくれるし、強さも相当のものだとわかっている。

 そんなやり取りは、後方の護衛の一言で終了させられることになった。


「殿下、追っ手です!数は三十!」

「父上はそこまで私が邪魔なのか。だが、あのままでは国が傾いてしまう」


 父王は派手好きで、古くからの重臣達から国費の無駄遣いを王太子の頃から咎められてきていた。だが、その性格は治ることなく王になり、それら重臣達を失脚させて自分に都合の良い者達を就かせて国政を混乱させている。父王が即位するまで蓄えられていた予備費は既に底をつき、国民には更なる税を取り立てている状態だ。

 私は事あるごとに父王へは具申していたのだが、それが煩わしくなったのかとうとう廃嫡を匂わせてきた。

 だが、常日頃王都で民の前に出て治安維持や物価調整の為の調査を行っていて人気が高い為にいきなり病気や素行に問題があるというのは体裁が悪く、取り敢えず監禁して人の目に出られないようにしようとしたようだ。それを事前に察知してくれた配下の者が間一髪のところで逃がしてくれたから、現在その追っ手から逃避行をする羽目になってしまっているのだ。


「王命である!王太子を騙る者共、全員捕縛せよとの事だ!大人しく投降せよ!」


 そんな事言われて投降するバカはおるまい。あくまでも王命であることを周囲に知らせるためだけのアリバイ作りだ。


「だが、とうとう追いつかれたか。ここは一戦するしかないのか」


 三十対六。しかも向こうは騎士団の騎士だ。最近の騎士団は質が下がったというが、数の差を覆すほどの技量差はない。


「お困りのようですねぇ。私に任せておきなさい」


 そんな声と共に、追っ手と私達の間に土壁が現れる。追っ手のうちの何人かは激突してしまったようだ。かなり大きな音が聞こえてきた。それよりも、私達を助けてくれた声の主はどこだ?


「ここですよ、第一王子様」


 その声は私の足元から聞こえてきた。下を見ると、十歳くらいの少女がこちらを見上げている。目が合うとにかっと笑った顔がとても可愛らしい。勿論この顔には見覚えがある。


「あ、あの、もしかして勇者リリン殿ですか?」

「うん、私はリリンだよ。丁度そこの村に移動したところで王子様達が追われているのが分かったんで、走ってきました」


 どうやら私達が追っ手に気を取られている間に到着したらしい。しかし、勇者一行は旅の途中ではなかったのだろうか?


「んー、魔王は倒す必要ないし、勇者装備も必要ないから気の向くままに旅はしてるよ。今回久しぶりに村に戻ったら、大変なことになっていたんで出張って来ただけ」


 私が発した疑問に対する勇者殿の答えがこれだった。


「そ、そうですか。聞きたい事が増えた気がしますがそれは後にするとして、これはどうしましょう」

「とりあえず、そのままはまずいから捕まえておこう。ニンジョールノまで連れて行けば、あとは牢屋にでも入れておけば良いよ」


 リリン殿はそう言われると、追っ手を一人一人土魔法でいったん拘束した後にこれも土魔法で作った手枷、足枷をつけて最初の拘束を解除するという作業を続けられました。


「よし、それじゃニンジョールノにゲート開くからついて来て」


 拘束作業が終わったところでリリン殿はそう言うと、何やら怪しげな空間を開いた。その向こう側には城門が見える。


「さあ、どうぞ。あそこに見えるのがニンジョールノの城門で、上空に古竜がいますけど気にしないで下さい」

「いや、古竜がいるっていうのは気にしないわけには…」

「問題無いです。私の知り合いですから」


 リリン殿の交友関係はどうなっているのだろうか。古竜が知り合いなどとは聞いたことが無い。

 そんな事を言っている間に城門から数人の衛兵達が大慌てで駆けてきた。それはそうだろう、城門前に怪しげな空間が開いたのだ。話によると昨日まで王国軍に包囲されていたそうだから、警戒するのも当然だろう。


「衛兵さーん、あと十人くらい来てもらえますか?ちょっと連れて行きたい人達がいるんで」

「はっ!勇者様、すぐに呼んでまいります!」


 衛兵の一人が城門に駆け戻っていく。声だけでリリン殿と分かったようだ。そんなにインパクトのある声だろうか?


「声がというか、ゲートを開いたからでしょう。あんな事ができるのは勇者様しかいらっしゃいませんから」


 私の疑問に護衛の一人が答える。そうだな、ゲートなんて魔法はリリン殿以外では見たことがなかった。あまりの衝撃にそんなことも失念してしまっていたようだ。


 とにかく、無事にニンジョールノには到着できそうだ。リリン殿やニンジョールノの領主殿と話してこの国を変えなければならない。私はそう決意を新たに、ゲートをくぐった。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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