第031話
結局、報告に来た兵士さんに伝言を頼んで、私は団長さんと港までやってきた。
「うっ、ここからでも見れるなんて本当に大きいんだね」
「そうたろう。だが、二匹はきついな」
いつもは一匹しか出てこないので、触腕の範囲外から魔法で攻撃して追い返しているのだそうだ。魔法を使える者が総出で一匹に対応するがやっととの事だったので、二匹だと火力不足なのだろう。
「じゃあ、まずはここから魔法を打ち込んでみますね」
私は火魔法で火球を出すと、それを圧縮していく。元々は三メートルくらいあった火球が五十センチ程度になり、色も青白くなる。あとはこれを高速で飛ばすだけだ。
「よし、行けっ!」
火球を弾丸のように飛ばす。速度もかなり出ているので、防がれてもダメージは食らうだろう。
「グギャアッ!」
案の定、火球に気付いたクラーケンが触腕で海に叩き落す。火球が海に落ちた瞬間、ものすごい音と共に爆発が起きた。水蒸気爆発だ。
水がものすごい高温の物体と触れることで急激な蒸発が起こる。水が液体から蒸発して気体になると体積が約千七百倍にもなるため、その付近の空気をその速度で押しのける。この現象が水蒸気爆発だ。そして、その結果はと言うと。
「おい、クラーケン二匹とも死んでるように見えるんだが」
「うん、私もそう見えます」
どうやらクラーケンは、その衝撃に耐えきれなかったようだ。二匹ともズタボロな状態で浮かんでいる。探査魔法でも死んでいるみたいだし、とりあえず回収しに行ってみよう。
私は飛行魔法でクラーケンのところまで飛んでいき、空間魔法で回収する。流石にバラバラにはなっていないが、全長十メートルを超える大きなイカだ。収納は一瞬ですむが、出すところに困るだろう。
「よっと。回収してきたよ」
「ああ、すまないな。だが、あれだけの大物、解体する場所が街中にはないぞ」
団長さんも同じように考えていたみたい。少し遠くなるけど、街の外で解体するしかないかな。
「仕方ないですね、街の外で解体しましょう」
「それしかないだろうな。おっと、ギルドに連絡しないと」
「ギルド?」
「冒険者ギルドだ。知らんのか?」
異世界物の定番、冒険者ギルドってあったんだ。団長さんに聞いてみたところ、国に所属しない独立した機関で大陸毎に本部が一つあり、各国の主要都市に支部が、必要と思われるところには出張所が作られているそうだ。
そして、登録可能な年齢は十五歳。あと五年もダメなのか。だから誰も教えてくれなかったんだな。
とりあえず、団長さんとその冒険者ギルドの支部へ向かう。支部は港からそう離れていないところにあり、結構大きな建物が三つ並んでいる。出入口は一番右側の建物だ。
団長さんはギルドにずかずかと入っていくと、近くの受付に行く。私はその後ろをきょろきょろしながらついて行く。
「あら、団長さんじゃないですか。何事ですか?」
「ギルマスいるかい?クラーケンの件で話がある」
「クラーケン!?はい、少しお待ちください」
受付のお姉さんが慌てて裏へ走っていく。私は団長さんの隣でぼーっとしている。そう言えば、冒険者の姿が見えないね。どうしたんだろう。
「ギルマスがお会いになるそうです」
「ああ、いつものところかい?」
「いえ、そのクラーケンの件で隣に居ます」
「そうか。それじゃ行こうか」
受付のお姉さんと団長さんについて行き、隣の建物へ向かう。そちらの建物は倉庫みたいなところだけど、今はモノではなく冒険者が沢山居た。
「ギルマス、お連れしました!」
「おう、クラーケンの件と聞いたが、おめえらも討伐するのか?」
「いや、もう討伐は終わった。それを報告に来たんだ」
「はぁ!?」
随分とガタイの良いお爺さんが素っ頓狂な声を上げる。団長さんはニヤニヤしている。
「おい、どういう事だ。俺んところには災害級クラーケンが二匹出たってところまでしか来てないが」
「そりゃ、さっき討伐したばかりだからな。こちらのリリン殿が」
団長さんが私の頭を軽くポンポンと叩く。お爺さんだけでなく、受付のお姉さんや冒険者の人達も口を開けた間抜けな顔をしている。
「お、おい、冗談は…」
「冗談じゃないぞ。魔法一発で終わっちまった。もうすぐ報告が来るんじゃ「クラーケンが討伐されました!」ほら来た」
私達は討伐後に冒険者ギルドに直行したが、ギルドの職員はその討伐内容等がなかなか理解できなかったらしく、しばらくあたりを調べまわっていたらしい。そのため、私達の後に戻ってくる事になったのだ。
「わ、分かった。だが、倒したクラーケンはどうした?まさか沖合に放ってあるんじゃないだろうな」
「そんなわけないだろう、災害級だぞ。ちゃんとこのリリン殿が空間魔法で回収しているよ」
団長さん、さっきから私の個人情報駄々洩れなんですが。私のジト目に気付いたのか、団長さんはゴホンと咳ばらいをして、お爺さんに提案した。
「ふむ、クラーケンの解体をのう。この倉庫では手狭かの」
「そこでだ。街の外で解体をしないといけないんだが、人手が欲しい。解体の専門を何人か寄越してもらえないか」
「タダでか?」
「報酬はこちらから出そう。一人銀貨三枚でいいか?」
「…四枚は欲しい。できれば五枚だ」
「四枚だ。何しろ図体がでかいんでな。人数が必要だ」
「分かった」
解体要員も確保できたみたいだし、街の外、広く開けたところへやってきた。私と団長さんの他にはギルマスのお爺さんと受付のお姉さん、あと解体要員で十人のおっさん共がいる。
「それじゃ、まず一匹出すね」
「おう」
私はクラーケンの一匹を空間魔法から取り出す。うん、やっぱりでかい。触腕とか長すぎて伸ばすのは大変そうだ。
ギルマスさんやお姉さんは吃驚した顔をしていたが、おっさん共は解体に気合が入ったようで、テンションが上がっていた。
「じゃあ、解体お願いします。あと、もう一体あるから、そっちもお願いしますね」
そう言った瞬間、おっさん共がクラーケンに群がって、でかい包丁らしきものを突き立てていた。解体に対する情熱が半端ないね。
私は邪魔になるだけなのでそこから一歩引き、たまにある素材を引き取るかどうかの質問に答えるだけの存在になった。とりあえず、欲しいのは魔石。あとゲソはいくつか欲しいかな。
「おーい、魔石取れたぞ!洗っとくか?」
「そのままでいいでーす。そっち行きますねー」
魔石もでかかった。五十センチはあるだろう。色も綺麗な藍色だ。そして、一匹目の解体に約二時間かけ、二匹目も終わったときは、夕方になっていた。
「魔石、何に使おうかなー」
「本当は売ってほしいんだがな。それだけの大きさで色も濁りのない藍色と来たら、水属性魔法の補助としては申し分ない」
うーん、水属性の補助なら、魔法を常に発動させる道具と組み合わせれば、水源にできるね。それならこっちで使うよりは、もっと内陸部の水がないところで使ってもらいたいな。
結局、魔石は売らずに私が持っておくことにした。あと、ゲソに限らずクラーケンを食べるという考えがなかったようなので、身もゲソも私がもらうことができた。ちょっとイカ料理でも作ってみよう。
逆に皮は水を殆ど通さないので、防水布として使われるようだ。かなりあちこち敗れてはいたが、そもそもの大きさが半端ないので、問題はないらしい。
イカ墨はインク替わりにも使えるらしく、道具屋に卸すそうだ。そして、骨。これもかなり硬いので、盾等に使うらしい。水に浮くからサーフボードとかになりそうなんだけど、そんなスポーツこの世界には無いし、盾は特にいらないのでそれも売った。
さて、今晩はゲソでも焼いて食べてみようかな。
「魔石」の扱いについてすっかり忘れてたので、いつ書いたかなーと探してしまいました。
きちんと設定も整理しないとダメですね。
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