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第029話

出張やら何やらで随分と遅れてしまいました。

忘れてたわけじゃないです。

「そっちは無事ですかー?」

「あぁ、嬢ちゃん達が加勢してくれたおかげで、こっちは無事だ」


 私達は、オークの集団から助けた馬車に向かう。護衛の人達は武器をしまい、私達に感謝の意を伝えてくる。ふむ、身のこなし、装備、どれをとってもそんじょそこらの冒険者達とはランクが違う。ただの護衛じゃないな。


「いえいえ、丁度通りがかったものですから無事で良かったです」


 こういう時はゲネートに任せよう。目で合図すると、ゲネートが苦笑しながらも私の代わりに護衛に対応する。

馬の世話を始めたクワイトは放っておいて、私はカリーネさんとナナコちゃんと一緒にゲネートの近くに行き、こそこそと魔法陣について話し合う。


「ねぇ、こんな感じの召喚陣から出てきてたんだけど、こんなに強力な召喚陣って見たことある?」

「うーん、ないわね」

「私も無いです」


 そうだよねー。知ってたら逆に吃驚だ。あ、カっちゃんは召喚されたって言ってたな。ちょっと聞いて来ようかな。でも、あの護衛達は私達の方も見ているので、今転移するのは良くないな。


「あとでカっちゃんに聞いてみよう」

「お父様にですか?」

「うん、カっちゃんはこちらに召喚されたんだから、召喚に関しては私達よりも知識があると思うんだ」


 私達が話していると、世話が終わったクワイトがやってきた。ゲネートも一緒だ。


「あの馬車、公爵家のものだそうだ。今回のクーデターとは関係なく、元々この時期に領地に行く予定だったらしい」

「そっか。なら、この襲撃は公爵家をターゲットにしたので間違いないね。これもクーデター軍の仕業かもしれない」


 私はこの国の細かいところは知らないので、王家や議員達、そして貴族についての関係がよくわからない。だけど、今回の襲撃は明らかにこの馬車を狙ったものなのはわかる。

 そこへ、護衛のリーダー格の人がやってきて、私達に公爵が礼を言いたいと言ってきた。特に断る理由はないので、そのままその人について公爵の馬車に向かう。

 馬車の扉が開くと、王太子と同じくらいの歳の少年と、私とあまり変わりない年頃の少女が出てきた。

 どちらも、仕立ての良い服を着ていて、貴族の子女であることがわかる。少年の方は淡い金髪をしていて、どことなく王太子に似ている。親戚なのかな?

 少女の方も金髪を腰まで伸ばし、あどけない顔をしているが、こちらも王太子に少し似たところがある。


「私がルーベント公爵家当主のアインだ。今回我々をオークの大軍から救って頂き、感謝している」

「私は妹のナリアと言います。そちらの方々、私とあまり変わらないお年なのに強いので驚きました」


 公爵家の当主とお姫様だったよ。でも、当主っていう割には若いね。私のその考えが顔に出ていたのか、アインが苦笑しつつ説明した。


「父が病気で先々月亡くなってね。言わばなり立ての当主さ」

「そうだったんですか。あ、私は旅をしていますリリンと言います。こっちはナナコちゃん、そっちがカリーネ、クワイト、そしてゲネートです」


 私が皆を紹介すると、それぞれ軽く頭を下げる。私達はアルファーノ王国の国民ではないし、こんな道端だ。貴族に対する礼も知らないしね。あ、でもナナコちゃんは王族だよね。会ったことはないのかな?


「あら、ピース王国のナナコ姫ではありませんか?」

「この紋章、もしかしたらと思ったけど、やっぱりナリアさんとこだったのね」


 知り合いだったか。そりゃそうだよね。公爵家って、王様になれなかった兄弟や親戚がなるものだから、他国の王家とも面識あるよね。

 ナナコちゃんとナリアちゃんは楽しそうにお話を始める。アインは護衛から報告を受けると、しばらくここで休憩をとることを指示した。まぁ、戦闘の後だからしばらく休憩しないと護衛も疲れ切ってしまうよね。


「さて、リリンさんと申されたか。どちらの方に向かわれるのかな」

「とりあえず海に行ってみようと思っております」

「それは良かった。私の領地は海のあるところでね、一緒に来てはもらえないだろうか。オーク戦のお礼もしたいし、ナリアが慕っているナナコ姫から離すのは難儀なのでな」


 どうしようかな。皆の方を見ると、お前が決めろと言わんばかりにそっぽを向かれた。一緒に行くのは構わないが、護衛の人達とか大丈夫なのか?ちらりと護衛の人達を見ると、そちらはにこやかに会釈を返してくれた。問題ないみたい。


「分かりました。同行させて頂きます。ナナコちゃん、ナナコちゃんもいいかな?」

「はい、お姉様」


 良いみたいだ。クワイトに公爵の馬車の後ろについて行くように言って、私達も馬車に乗り込む。あれ?一人足りない?


「ナナコちゃんはあっちの馬車に乗るそうです。ナリアちゃんが引っ張って行っていましたよ」

「そ、そうなんだ」


 こうして、私達は公爵の馬車について行くことになった。

 編成は、真ん中に公爵の馬車、その後ろに私達の馬車、前方に護衛の人が三人、後方も三人、そして左右に各一人という配置だ。

 先程の戦いで護衛の馬が何頭かいなくなってしまったので、そこは交代で馬を使うことにになった。そのため、この馬車での旅は徒歩と同じ速度になってしまっている。


「そういえば、ゴーレムって馬型も作れたかな」


 私は次の休憩の時にちょっと離れたところに行き、ゴーレムを作成する。形は馬だ。結果、人型の時よりは時間がかかったものの、作ることはできた。だがこれは。


「まるでどこぞの世紀末覇王が乗ってそうな馬だな」


 クワイトの感想の通り、かなりごつい馬になってしまった。だが、ゴーレムだから私の命令にはちゃんと従うので問題ない。


「こ、これはすごいですね」


 公爵も護衛の人達も驚いている。だが、誰も率先して乗ろうとしない。やはり怖いのだろう。正直作った私もあまり乗りたいとは思わないのだが、乗ってもらうために作ったのだ。ぜひとも乗ってもらおう。


「護衛の人達の不足分です。ゴーレムだから丈夫ですよ。前を担当する人達には、簡単な敵くらい跳ね飛ばしてくれると思います」

「そうなのか、それならば前を担当する者が乗るべきだな」


 どうせローテーションで配置は変わるんだ。これで護衛の人達も問題ないことがわかってくれるだろう。


 こうして、移動速度を上げた私達は、元々の予定通りに海の街であるルーベント公爵領に到着することができた。その頃には護衛の人達もゴーレムに慣れて、到着したときはもう乗れないのを残念そうにしていた。


「うーん、それならば所有権を移譲しましょうか。それなら、そちらで管理できますよ」

「そうか!それなら是非私に移譲して頂きたい」

「あっ、ずるい!私にもお願いします」


 護衛をしていた人達が群がってくる。思ったより人気が出てしまったようだ。そんな状況を見ていた公爵も私のところにやってきた。


「ふむ、個人に所有権を移譲するのは良くないな。ならば、うちの騎士団所属というのはできないだろうか」


 個人ではなく、組織に所有権を持たせるわけね。まぁ、道具なんだから当然か。


「ええ、できますよ。命令の最優先順位は公爵当主として、次が騎士団長くらいにしておきましょうか」

「それでお願いする。そうだ、ゴーレムを移譲してもらうなら代金を払わねばならないな。いくらだ」


 うーん、ゴーレムの値段なんて知らないからなぁ。それに私は使わないから、タダでも良いんだけど。ここはゲネートに丸投げだ。


「私はゴーレムの値段なんて知らないので、ゲネートに聞いてください」

「そうか、分かった」


 公爵は満面の笑みを湛えてゲネートに向かっていった。すまん、ゲネート。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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