第025話
なかなか話がうまく書けず、遅くなってしまいました。
「流石にこちらは守りが固いわね」
カリーネさんが言う。駐屯地に向かった私達の前にはクーデター軍が陣を敷いているのだが、魔法障壁を展開したりバリケードを築いたりしていて中々の固さを見せていた。
この固さはゴーレム達でも簡単には崩せないだろう。だが、私ならできる。
「ちょっと魔法障壁壊してくる」
「あっ、リリンちゃん」
私は木の棒を手に飛び出すと、魔力を木の棒に込めた。この木の棒は六歳の頃から使っていて、そんじょそこらの剣よりも固く、魔力も通しやすい。まぁ、元は樹齢百年を超える大木だったのを、長時間かけて圧縮したのだ。見た目は木だが、既に中身は全く違うものになっている。
「そいやっ」
陣から放たれる矢をはじき飛ばし、私の膨大な魔力を込められた木の棒はそのまま魔法障壁を難なく切り裂いていく。
魔法障壁は魔力で作られた壁だ。攻撃魔法で防がれるのは、攻撃魔法の魔力より障壁の魔力が多いためで、障壁の魔力よりこの木の棒に込められた魔力が多ければ壊せる事になる。
こうして私は魔法障壁を壊し、ついでにそっからファイアボールを数発打ち込んでおいた。当然クーデター軍は大混乱だ。
「今よっ!」
カリーネさんの合図で、近衛師団の魔法使い部隊から攻撃魔法が撃ち込まれる。たまに流れ弾がこちらにも来るけど、それを木の棒で敵陣へ弾き飛ばしながら自陣へと戻ってきた。
「もうちょい精度が欲しいよね」
「これでも皆一生懸命なのよ」
まぁ、精密射撃はまだ無理だろうな。取りあえずはこのまま進軍だ。そう言えば、王太子が居たはずだけど、命令は出さないのかな?
因みに、今はクワイトが先頭に立って敵陣に突っ込んでいる。完全に前線指揮官だ。昔の私を思い出すなぁ。
「あのー」
「わっ」
いきなりのそっと王太子が現れたので吃驚した。王太子、なんか顔色悪いよ。
「今まで戦場には出たことが無かったので」
「あ、そう。なら仕方ないね。
でも、ちゃんと見とかないとダメだよ」
初めての戦場ならこういう事もあるだろう。だけど、そこは指揮官としてきちんとしておかなくちゃいけない。
自分の采配で敵が、味方が死んでいく。指揮官はそれだけの命を背負っていることを自覚するためにも、そこはちゃんと見届けるのが義務だと思う。
「あ、あぁ、みっともないところを見せてすまない。君の言いたいことはちゃんと理解しているつもりだ。王家の人間として、その責からは逃げられない」
意外と骨があるようで良かったよ。いきなり結婚してくれなんて言い出すから、どんなロリコン野郎かと思ったけどね。
「おーい、ここは一掃できたから、駐屯地に突っ込むぞー!」
おっと、クワイトが呼んでる。私も久々に暴れまわりたいね。
近衛師団を駐屯地周囲に展開させてクーデター軍が逃げ出せないようにしておき、私と仲間達、そしてカっちゃんの五人だけで駐屯地に突入する。クワイト達もカっちゃんの戦闘力を直に見たせいか、その判断には反対しなかった。
「久々の制圧戦だねぇ」
「そうだね、私はこの体だから、以前とは勝手が違って苦労するよ」
「ははっ、それでもあの強さなんだからねぇ。向こうでの力を取り戻したらレベル二百は超えるんじゃない?」
流石に前世では魔法なんて使えなかったから、今と同等の強さなんてなかった…はず…だよね。あっ、カっちゃん今目を逸らしたね。なんて野郎だ。
ところで、駐屯地と言えば武器庫じゃない?今まっすぐそっちに向かっているんだけど、敵の反応がイマイチ鈍いんだよねぇ。普通なら武器が無ければ戦えないので、武器庫と食糧庫は最優先の確保先だった。それとも異世界では武器はそこまで重要視されていないんだろうか。いや、違うな。
「どっか地下道でもあるんじゃないかな」
「僕も同じ考えだ。これは一部の精鋭をどっかに逃がそうとしている。まだあきらめてないようだな」
前世では、こんな時は取りあえず目に見える敵を薙ぎ払って建物内に突っ込んでいったものだが、この世界には魔法がある。ならば使わない手はない。
「気配探知、そしてメテオ」
めんどくさいので、ここは更地にしてしまおう。メテオは私の作ったオリジナル魔法だ。決して某最後のファンタジーとは関係ない。
駐屯地に隕石が降り注ぐ。隕石の大きさは人と同じくらいだが、数もあるし、何といっても燃えている。こんなの防げるわけがない。
「本当に容赦ないですね」
「時間がないからね。やっぱり地下道があるみたい。数十人が王宮方面に向かってるよ」
最初からこの道通っておけば良かったんだろうが、正面からの方がインパクトもあるし倒せるとも思ったのだろう。今はなりふり構ってる余裕がないという事だ。
ご丁寧にも、地下道入り口と思わしき所に何人かの兵士が守りを固めている。私はそこに向けて水魔法で洪水を起こしておいた。カっちゃんも手伝ってね。
「で、王宮側は?」
「出る場所が分かんない。王太子は知ってるかもね」
王太子に聞いてみたが、知らないようだった。どうやら王家も把握していない地下道があるっぽい。これは王宮に戻って地下道の出口を探す必要があるかも。
ただ、気配探知で今捕捉しているのは私だけなので、他の人に探してもらっても見つける前に出てこられる可能性がある。やはりここは私が行くべきなんだろうか。
「ここは僕達だけで問題ないですよ。近衛師団の兵と、王太子をお連れして王宮に戻って下さい」
ゲネートが言ってきた。そうだね。でも、王太子は連れて行く必要ないんじゃないの?
「一応顔パスできそうだから。それに、首魁を捕まえる時に王家の人間が居た方が都合が良いだろう」
近衛兵だけで倒すのと、王家の人が居る前で倒すのでは、王家の立場がだいぶ違ってくる。勿論後者の方が良い印象だ。自らクーデター軍鎮圧に立ち向かった王家に人々は好意的になるだろう。そして腰抜け議員達は全員評価が下がる。
「それじゃ、行ってくるよ。王太子、近衛師団から五人腕の立つのを選んできて」
「分かった。少し待っててくれ」
「すぐ!」
「は、はい!」
あたふたと走り去る王太子を眺めながら、私は考える。この地下道、本当に王宮につながっているのだろうか。もしかして、考え違いをしているんじゃないだろうか。
「カっちゃん、ここから更に兵を分けることは可能?」
「何で?」
「王宮北の森」
「あぁ、そっちの可能性もあるのか。そっちは僕が行くよ。気配探知、僕もできるしね」
こんな時にカっちゃんが居てくれて良かったよ。これで北側は安心だ。
「あっ、ナナコも連れてこよう。あいつ、ストレス溜まってたみたいだから、たまに発散させないとこっちに来るんだよね」
ナナコちゃん、いきなり実戦ですか。それはどうかなぁ。
「大丈夫、姉御の言いつけはちゃんと守って訓練してたから、そんじょそこらの兵には負けないよ。それにトーヤも連れてくれば万に一つもないだろう」
まぁ、他人の家族の方針にあれこれ言うつもりはないけど、程々にね。
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首謀者の一人、第二軍の将軍宅は既にもぬけの空だった。余の率い兵達が向かっている公爵邸も同じであろう。だが、可能性がある以上向かわざるを得ない。
「伝令!公爵邸は武装しております!空ではありません!」
なるほど、公爵の下には忠義の臣がおるようじゃな。主の居ない邸で殊更武装することにより、主への目をそらす策であろう。じゃが、その策は成されない。
「ガルフ、あの邸宅の兵を抑えておくのに必要なのは?」
「俺らを含めなければ四中隊で十分だ」
「なら、残りは王宮に戻るぞ!」
多分、公爵は王宮に現れるであろう。王都から逃げ延びても行く先は無い。公爵には領地がないからだ。まだ議事堂でグズグズしている議員共を脅しつけて王位を僭称するに決まっている。
余は抑えの兵を残し、ガルフ近衛師団長達と共に王宮へ急ぎ戻らねばならぬのだった。
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