第024話
「ここら辺はもう大丈夫だね。さて、橋でもかけて攻めに転じますか」
私が作った窪みから手前にいた敵兵は、既に全員倒されている。今は窪みの向こう側から弓や魔法での攻撃が行われているが、私が展開した魔力の壁に阻まれてこちらには届かない。
「橋なんてかけたら逆に攻められるんじゃないか?」
「何のためにゴーレム達がいると思ってるの。彼らに橋頭保は確保してもらうよ」
カっちゃんにも手伝ってもらい、幅三メートルほどの橋を架ける。敵兵がここぞとばかりに攻めてくるが、それより早くタワーシールドを両手に持ったゴーレム達が立ち塞がり、そのまま押しやっていく。
兵士達はゴーレムの力に抗えるはずもなく、橋の下へと落ちていく。運が良ければ骨を折るくらいですむだろう。
橋の向こう側に到着したゴーレム達は、そのまま半円状に展開し、橋頭保を確保した。当然それなりに攻撃は受けているが、レッドドラゴンの核を使い、私が作ったゴーレム達だ。弓矢や初級魔法程度ではダメージはくらわない。それに、持たせたタワーシールドも物理防御力だけではなく魔法防御力も高めてあり、中級魔法までは十分防げる。
つまり、私達はゴーレム達の後ろからついて行けば簡単に進めるのだろうが、せっかく来てゴーレム作っただけだというのも間抜けだ。そう言えば、魔法って曲射できたっけ?
通常、攻撃魔法というものは前方に「まっすぐ」飛んでいく。そのため、間に障害物があるとその先に届かせることができないのだ。まるで銃だが、銃の場合はいずれ重力に引かれて落ちていくのに比べて魔法の場合は魔法が保てない距離になると、そこで突然霧散する。
例外は雷魔法と、水魔法で大量の水を上空に生み出した時ぐらいだが、どちらもかなりの魔力を使うため、それなりに上位の魔法使いでないと使えない。一兵卒ではダメなのだ。
「でも、私達の場合、私もカっちゃんも雷魔法使えるんだよね」
二人して敵陣に落雷させまくる。完全に一方的な戦いだ。だが、私はせめて首謀者くらいはこの手で捕えたい。木の棒に魔力を流し、ゴーレム達の前に飛び出した。味方も敵も驚いているが、そんなの気にしていられない。私は木の棒を一戦して五人の敵兵を吹っ飛ばし、そのまま前にでる。
「このクーデターの首謀者はどこだ」
木の棒を構えたまま、殺気を籠めて問い詰める。敵兵達はガタガタと震え、なんとか後方を指さすと、そのまま逃げて行ってしまった。
「このまま行けそうだね。そう言えばここの王様はどこ?」
「こちらだ」
カっちゃんはちゃんと探してくれていたようだ。私は今の今まで忘れていたよ。
「王様ですか、勝手に国内の事に干渉したことお許し願いたい」
「いや、そなた達のおかげで一息つくことができた。ピース王国国王自ら我らを救いに来てくれたのだ。国王の友人である勇者殿にも感謝はすれども責める様な事はせぬよ」
中々話のわかる王様で良かったよ。これが頭の固い奴だったりすると、「内政干渉だ!」とか言い出しかねないのだ。
「王族の方々はピース王国にて保護しております。こちらに戻ってきて頂きましょうか?」
「いや、まだそのままでお願いしたい。いや、王太子だけこちらに呼んで頂いてもらっても良いであろうか?」
「分かりました。では」
私はゲートを開き、王太子だけこちらに来て頂きたいことをトルテさんに告げる。トルテさんはゲートで王族をピース王国に保護した後そのままお世話をしているようで、すぐに話が通って一人のイケメンがやってきた。
「父上、参上致しました」
「来たか。お前も次期国王としてこの有様をしかと目にし、今後どうすべきか考えよ」
「はっ。ところで、こちらの女児は?」
「ピース王国国王のご友人で、勇者リリン殿だ。今の転移魔法も彼女がやってくれたのだぞ」
王太子は吃驚した顔で私を見ている。そりゃそうだよね。十歳の女の子が勇者だなんて、信じられないもんね。
だが、王太子の反応はその斜め上を行っていた。
「リリン殿と申されたか。良ければ、私と結婚して頂きたい」
「は?」
私だけではなく、周囲の皆も、空気までもが固まった気がした。首をギギギとゆっくり回してカっちゃんの方を見ると、彼も固まっている。やはり私が聞いた言葉は間違いじゃなかったみたいだ。
「えっと、王太子様?」
「カールと呼んでへっ!」
いつの間にか王太子の後ろに回り込んでいた王様が、なんと王太子を蹴飛ばしていた。お歳に似合わず随分と強力な突っ込みだ。
「お主は何を考えておる!」
「父上、一目惚れなんです!是非とも結婚を、まだ早いのであれば婚約だけでも…」
「馬鹿な事言うでない!」
おっと、今度はソバットだ。中々元気なお爺ちゃんだな。再度蹴飛ばされた王太子は、ゴロゴロと転がっていき、慌てた近衛師団の面々が助け起こした。
「えーっと、これ何のコント?」
「さぁ?」
カっちゃんもよく分からないようだ。というか、王太子以外この状況は分からないだろう。仲間達の方も見たが、完全に他人のふりをしていた。そんな事してても変わんないっていうの。
「と、兎に角、今はそんな状況ではありませんので、このお話はひとまず無しという事で」
「という事は、このクーデター騒ぎが終われば話を進めてもいいんだね」
「いや、無いです」
勝手に話を進めるな。私も王太子にケリを入れたくなったが、それやっちゃうと死んでしまいそうだったので我慢した。カっちゃんも、肩をポンポンと叩いて私を落ち着かせようとしている。
「そう言えば、前世でもこんなだったね」
「そうだね。王になってまでこんな役回りになるなんて、思いもよらなかったけど」
前世では、カっちゃんは私のストッパーだった。沸点が近いのを察知するのが上手く、そんな時は今のように肩をポンポンと叩く。意識を別の方にやって怒りを収めさせようという手法だったと思う。
「王様、今の話ですが…」
「勿論無しじゃ。こやつ、何を考えておるのやら」
王様はまともで安心したよ。因みに、王太子は王様に踏んづけられて、大の字になって気絶している。何のために来たんだか分かりゃしない。
取りあえず、今後の計画を王様達と一緒に立てることにし、土魔法で椅子と机を作り上げる。そこに近衛師団の若手兵が王都の地図を持ってきて広げた。
「王宮は王都の北側になります。王宮の裏側は魔物が出る森になっており、余程の事が無ければそちらから攻めてくる可能性はありません。実際、先程もこの正門側からしか攻めてきておりませんでした」
「いえ、それなら余計に裏側が危ないです。ゴーレム達を差し向けましょう」
私はゴーレム達三十体に王宮の裏側を警備するよう命令した。ゴーレム達は大楯を持って裏側へと向かって行く。
「念のためではあるんですけどね。正門側にしか攻撃が無かったというのが、ちょっと気になったものですから」
「囮、と言うわけですか。しかし、あの森は昼間でも割とレベルの高い魔物が出るんですがね」
私なら絶対少数精鋭で突破させるけどね。敵の固定観念を崩していくのは、戦闘において当たり前の手だ。まぁ、ゴーレム三十体程度ならそう痛手でもないし、それだけの森を抜けてくるのならそこまで大多数では来ないだろう。
「あと、このクーデターの首謀者と思われるコーンウェル公爵の屋敷がここで、遠征軍の一時駐屯地はこちらになります」
「公爵の屋敷は近衛師団で抑えて欲しい。私達はその公爵の顔も知らないんだからな」
おい、隣国の王なのにそんな高位の貴族の顔知らないのかよ。私がじとっと見るとカっちゃんは苦笑いしながら釈明した。
「あの公爵、公の場には殆ど出てこないんだよ。外交何て絶対だね。だから僕だけじゃなく、他の国の外交官も知らないと思うよ」
「何その引きこもり」
そうして、公爵の屋敷方面は近衛師団と王様が、駐屯地には私達とわずかな護衛を引き連れた王太子が向かう事になった。正直、王様と王太子、変わってほしいよ。
総合評価が110越えました。
あちらこちらにある人気作品に比べたら当然まだまだですが、増えてくるのは嬉しいですね。
これからも頑張って、クオリティ上げていけたらいいなぁ。




