第001話
2作目です。
今作も異世界ものです。
私の名前はリリン。前世の記憶を持つごく普通の猟師の娘でした。ところが、10歳の時のスキル判定の儀式で「勇者」の称号を持つことが分かった時から私の生活は一変してしまいました。
「リリンよ、魔王を倒してくるのだ」
このおっさんは10歳の娘に何を言っているのでしょう。何でもこの国の王様らしいのですが、そんな人村には居ませんでしたし、何よりスキル判定の時の神様に比べれば随分とギラギラとした欲望に満ちたオーラが見えて気持ち悪いです。
でも、イヤだと言うと面倒なことになりそうなので、イエスかはいくらいしか返事のしようがありません。
「はぁ、わかりました」
そんなわけで、私は一応の装備とそれなりのお金をもらって強制的についてくる仲間と一緒に旅に出ることになりました。
「さて、魔王を倒して来いって事だけど、どうすればいいの?」
「魔王を倒すには、勇者の装備を揃える必要があります。レベルを上げながら各地に封印されている勇者の装備を集めましょう」
めんどくさい。神様は単なる称号で、魔王も悪い人ではないから倒す必要なんてないんだよって言ってくれたんだけどなー。それにレベルも十分高い。
「えー、めんどくさい。そもそも魔王ってどんな人なの?」
「この世界を征服しようとしている極悪人です。魔族を手下にしてこの国に攻めてきています」
「他の国には?」
「ほ、他の国ですか?他の国には攻めてないですね」
こいつら、本当は監視役か?私にやる気が無いのを知っているもんだから、何とかやる気を出させようとしてるみたいだけど、やらないったらやらないの。
街道をてくてくと歩く私達。馬車でもあればいいのに、もらったお金では全く足りない。因みに、私と仲間(仮)達のステータスはこうなっている。
名 前:リリン
種 族:人
性 別:女
年 齢:10
レベル:128
称 号:勇者、転生者、竜殺し、神の友達
体 力:1000000
魔 力:1000001
知 力:1000
攻撃力:56000
防御力:78000
敏捷度:36000
武 器:木の棒(実は魔法で物凄く圧縮した丸太)
防 具:革の鎧、革のブーツ、布の上着、布のズボン
スキル:
全属性魔法Lv.10、取得経験値増加Lv.10、全状態異常耐性Lv.10、鑑定Lv.10、隠蔽Lv10、気配探知Lv.10、魔力制御Lv.10、魔力探知Lv.10、投擲Lv.10、魔眼Lv.10、限界突破、魔法創造
名 前:クワイト・シュトーベン
種 族:人
性 別:男
年 齢:25
レベル:30
称 号:騎士
体 力:100
魔 力:15
知 力:10
攻撃力:76
防御力:82
敏捷度:21
武 器:鋼鉄の剣
防 具:プレートメイル、布の上着、布のズボン
スキル:
烈火斬Lv.3、氷雪剣Lv.2、真空斬Lv3
名 前:ゲネート・ザイネル
種 族:人
性 別:男
年 齢:28
レベル:33
称 号:魔法使い
体 力:21
魔 力:118
知 力:39
攻撃力:14
防御力:68
敏捷度:16
武 器:魔力増加の杖
防 具:魔法耐性向上のローブ、布の上着、布のズボン
スキル:
風魔法Lv.4、火魔法Lv3、水魔法Lv3、土魔法Lv2、無属性魔法Lv1、鑑定Lv.3、隠蔽Lv3
名 前:カリーネ・ワライネル
種 族:人
性 別:女
年 齢:23
レベル:24
称 号:神官
体 力:13
魔 力:145
知 力:34
攻撃力:8
防御力:93
敏捷度:11
武 器:癒しの杖
防 具:魔法耐性向上のローブ、革のブーツ、布のワンピース
スキル:
無属性魔法Lv3、回復魔法Lv.3、鑑定Lv.3、隠蔽Lv2
これらのステータスは、本来なら鑑定でないと見ることができない。私はLv.10なので他人や無機物なんかも鑑定でステータスを見ることがきる。だが、Lv.3だとせいぜい自分のレベルと同じくらいの人のステータスが見れるくらいだろう。勿論、私のステータスは他の人には見ることができない。
そして、先程から口うるさいのはゲネートだ。だが、このステータスの差、どうなのよ。体力、魔力だけでなく知力でもこんなに差があるなんて。この世界の人間ってみんな馬鹿なのだろうか。
『そんな事はありませんよ。あなたは前世の記憶があるので、知力が異常に高いのです。それにレッドドラゴンの肉食べたでしょ。あれでただでさえ高いステータスが、更に上がったのですよ』
おっと、いきなり頭に神様からのお達しが。私に話しかけてくるヒマがあるのなら、あのクソ王をどうにかして欲しいんですがねぇ。
『クソ王なのは認めますが、神はこの世界には基本不介入なのです。できても神託を下すくらいしかできないのですよ』
えー、私にはホイホイ話しかけてくるのに、他の人とは話せないって事?
『そうです。そこの神官なら、あとレベルが10も上がれば何とか神託が聞けるようになるでしょうけどね』
この世界、あまり強い敵がいないのか、人のレベルは総じて低い。レベル30はかなり高レベルらしく、普通の人だと10行くかどうかというところなのだそうだ。そして、私のレベルが高いのは転生者というだけでなく、近所の森で魔物という食糧を狩りまくっていたせいでもある。レッドドラゴンのステーキ、美味しかったなぁ。
『普通はレッドドラゴンなんて、ソロ狩りなんか無理なんですけどねぇ』
それはレベルが低すぎるからだよ。ドラゴンなんてレベル50くらいしかないんだし、皆鍛えれば倒せるようになるよ。村の人達だって、最終的には3人くらいで倒せるようになってたし。
私が神様と脳内で会話してる間、他の皆は変なものを見るような目で私を見ていた。考えてみたら、急に立ち止まって百面相のように表情を変えつつも一言もしゃべらない少女なんて気味が悪い。私はなんとかごまかしつつ、皆に合流した。
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「勇者って、本当にあの子でいいの?」
「判定の儀式でそう判定されたんだ。間違いない」
リリンちゃんが寝たのを確認し、私はゲネートに確認する。当代の勇者は幼く、とてもじゃないが魔王に勝てるとは思えない。それに、やる気も感じられない。
「そう言えば、竜殺しって称号も持ってたらしいぞ。本人は美味しかったと言ってたな」
クワイトが会話に入ってくる。え?竜殺しって単独で竜を殺したって事?美味しかったって食べたって事なの?
「あー、混乱してるのは理解できる。俺も聞いた時は混乱した。だが、本当らしい。あの少女がいた村の入り口にはレッドドラゴンの牙が飾ってあって、魔物は寄り付かないそうだ。それに、その肉は村の人全員に振る舞ったらしく、村人全員がおかしなステータスになっていたそうだ」
竜の肉を食べるとステータスが軒並み強化される。村人全員にそれを振る舞ったってことは、その村最強じゃない!それも竜種の中でも凶暴さでは一番のレッドドラゴンだなんて。
「それじゃ、魔王に勝てるというのも」
「無理ではないだろうな」
彼女のステータスは私達ではわからない。鑑定のレベルが足りないのだと思うのだが、ソロでレッドドラゴンが狩れるのなら、私達全員でもかなわないだろう。だが、何としても魔王を倒し、我が国の領土を広げないといけない。
我がベタルリア国は西に豊潤な魔王の国があり、北に軍事大国アルファーノ王国がある。南と東は海だ。つまり、どん詰まりの国なのだ。発展しようにも北は大国、西は魔王がいる。なので魔王を倒してその国を併呑してしまおうというのが王の考えなのだそうだ。
「それにしても、魔物に出会わないな」
「あぁ、そうだな」
確かにそうだ。通常は街道を通っていても魔物は現れる。だが、今日は一匹も現れなかった。そう言えば、リリンちゃんが時たま何かやっていたが、まさか遠距離で魔物を倒していたのだろうか。だが、視界に居ない魔物を倒すなんて、普通はできないはず。でも、勇者だし、皆が知らないスキルを持っているのかもしれない。
実際、リリンは気配探知で魔物を捕捉すると、道端の石ころを拾って投擲スキルで命中させていた。それは普通に投げるのではなく、所謂指弾と言われるものであったが、そんなのでも数百メートルを高速で飛ばし、魔物を仕留めるくらいはできたのである。今はこっそり結界まで張っているので、更に魔物が近づいてこれなくなっていることを3人は知らなかった。
「あんまりバカばっかりやってないで、ちゃんと見張りお願いね」
「わーったよ」
後番の私はリリンちゃんのそばに行くと、布団替わりのマントにくるまり目を閉じた。明日は魔物との戦いはあるのだろうか?
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