転生令嬢と愉快な仲間たち
見上げた空は青く透き通っている。しかし、その色は地球の空とは違う澄んだ空である。
なぜ違うかと問われれば簡単、地球の空は宇宙に近付くに連れて段々と色が濃く深く黒っぽくなるのに対し、この世界の空はどこまでも青いままなのだ。大気圏が地球の倍以上の距離なのだろうか、そこまではわからないが、とりあえず違うとわかっていればそれでいい。
なぜこんな話をしているのかと問われれば簡単、私には前世の記憶があるのだ。
といっても、役に立つ知識はあまりない。この世界では魔法が大体を解決してくれるからだ。
城の建材? 土を適当に用意して、出来るだけ固く長持ちする素材へと願い、魔力と想像力を働かせればあら完成! といった具合である。尤も、それを構築するには莫大な魔力と想像力が必要なため、造れる人間は限られてくるのだが。それに、質量保存の法則はこの世界でも適用されるため、無茶な爆発やそこに存在する以上の自然現象を操ることはほぼ不可能だ。まあ戦争はないから必要ないし、全魔力を注ぎ込めば可能かもしれないが、そんなことをするなら自分好みの建具を造る方が有意義である。
まあ、そんなこんなで、魔法があればとりあえずなんとでもなる。想像力がなくても、理論に沿った綿密な図面があれば、それに沿えば感覚派と変わらない魔法が使えるのだ。だから、まあ細かいとこまで気にする必要もないので、前世O型な私にとって、この世界は理想郷そのものなのだ!
貴族に生まれたから、歴史や諸外国の情勢など、勉強の題材にも事欠かないので、時間は決して余ったりしないのが目下の不満と言えるぐらいか。
言語を覚えなくていいのは本当に助かるが。
前世の私は外国語の成績が壊滅的だったのだ。翻訳魔法最高!
といった具合で、気まま自由に今世を生きている私にも悩みはある。
それは、学園生活だ。
何故か私の学年には、この国の第二王子と公爵令息、騎士団長や王子の友人の伯爵令息など、乙女ゲーも真っ青のイケメン達が揃い踏みなのである。
前世の私はゲームが好きだったが、そのジャンルはRPGやアクションで、乙女ゲーはやったこともない。だが、小説と付くものなら何でも読んだ私に死角はない! 乙女ゲーのシステムは何となく理解しているのだ。閑話休題。
ヒロインらしき人物がちょこまかしているらしいが、私の目の前に来ないのだから知りようもないしどうしようも出来ないので、婚約者が誑かされている令嬢の相談相手もしていたりする。まあ、彼女には申し訳ないのだが、私自身が婚約者の公爵令息とそれなりの関係を築けている余裕もあるのかもしれない。
「♪〜♫〜♪〜〜♬♩〜」
鼻唄を歌いながら渡り廊下を歩いていると、階下に王子やら令嬢やらが揃って揉めていた。
放課後なので時間もあるため、野次馬根性でその様子を眺めてみよう。決していい趣味とは言えないが、普段から相談に乗ってる相手もいるし、結果ぐらいは知ってもいいじゃない? なんて軽い気持ちですはい。
「お前達は揃いも揃ってディアナを虐めているそうじゃないか。それを正当化しようというのか?」
これは王子の発言だ。少し角度を変えると、王子の陰に隠れたヒロインらしき人物が、攻略対象(と勝手に名付けた。私の婚約者もいるが、その集団には興味ないのを隠していない)に見えないように口元を歪めて令嬢達を嘲笑っていた。これは俗に言う逆ハーか! と興奮した私を他所に、対立は段々と不穏な方向へと転がって行くようだ。ここからは音声実況をご視聴ください(適当)
「虐めてなどおりませんわ。ディアナさんのマナーがあまりにもなってないので注意しただけですもの」
おおっと、言い返したのは私と同じ侯爵令嬢で王子の婚約者であるリーゼロッテ嬢だ! 名前は聞かなかったが、マナーの悪い令嬢への注意喚起のアドバイスに乗ったりしたよ私。それがディアナ嬢とは知らなかった。あ、その言葉に王子の眉間に皺が寄った!
「どういうことだ? ディアナは詰られたり物を投げ付けられたりしたと言っていたが、違うのか?」
もしかしてこれは断罪ルートとやらだったのか? その割には好感度が高くないようだが、さてどうなる?
「そもそも先に投げ付けてきたのはディアナさんですわ。その方、わた、私の嫌いな……あの虫を掴んで」
あー、これはリーゼロッテ思い出して震えてしまった。その場面に遭遇した私もドン引きした時の話だ。
あれはそう、誰が木に登ったのかは知らないが、その時も私は廊下を歩いていた。ふと外を見ると、リーゼロッテがキャーキャー泣きながら落ちてくる虫を一心不乱に木の上に投げ返していた。
木の葉に隠れていて人物までは見なかったが、あれはディアナ嬢が仕出かしたことだったらしい。知っていたらぶん殴ったよ全く。
確か、その時に聞こえた禁止ワードはリーゼロッテに向けられていて、耐えられなくなったリーゼロッテが泣きながらその場を後にしていたのだ。気付かれなかった私はリーゼロッテを追って慰めたっけ。
「それは本当なのか? ディアナ」
「リーゼロッテ様の虚言です! 」
王子の言葉を食い気味にディアナ嬢は吠えた。間違いなくあの時の禁止ワードの声の持ち主と同じだ。
流石に友人が謂れもない罪で責められるのは忍びなくて、どこで乱入しようかと考えている間に、事態はどんどん進んでいく。
「ジェラルド様は私を信じてくださらないのですか?」
実は泣き虫のリーゼロッテに、この状況は耐えられるものではなかったらしい。俯いて黙り込んでしまったのが痛々しい。すぐにでも駆け付けたいが、この場を離れてしまってはそれこそ口を挟む隙がなくなってしまう。それは許されない。
代わりに立ったのは、子爵令嬢のアリアンナだった。
「お言葉ですが、ジェラルド殿下もキース様も、そのディアナ嬢に構いすぎではないでしょうか。いくら婚約者の私達が邪魔だからって、当て付けにするのもいい加減にしてくださいませ」
「は? 何を言っている。別に当て付けではなく、お前達がディアナ嬢を虐めると相談を受けたからここにいるだけだ」
キースは騎士団長の三番目の息子で、純粋で正義漢だ。きっと、ディアナ嬢の泣き落としに騙されたのだろう。脳筋なので。
「虐めたとは具体的にどのような?」
「教科書を隠されたと聞いたぞ。実際に破られた教科書が出てきた」
さて、その話は知らないが、一つ言えるのは、教科書は破れても魔力を流せば勝手に修復される。そういう造りになっているのだ。確かに破られていい気はしないが、それをアリアンナ嬢がやった証拠はない。それに、わざと破られたとしてもそれを証明する手立てはないのだ。だから証拠と言うなら指紋ぐらい持ってこいよ。と思っても口にはしない。魔法で教科書の記録を辿ればいいだけなので。
「今もほら、ここに証拠がある」
そういってキースが取り出したのは確かに破られた教科書だ。いや、直せよ、備品もただじゃないのよ。ああ、指紋を採って証明したい。魔法はその後だ! 令嬢達が不憫にすぎる。
と、揉め事が続く中、私の婚約者であるアークリッド様と目が合った。そりゃもう言い逃れ出来ないほど。だって微笑んでくれてるし。条件反射で微笑み返したとも。愛しい婚約者様だし。
「そういえばたまたまその場面に出会ったんだけど、ディアナ嬢、木の上で高笑いしてたよね?」
視線は私に向いたまま、アーク様がディアナ嬢に問いかけた。
「そのようなことはしてません!」
なぜ信じてくれないの? と言いそうなディアナ嬢にイラっとした。これは生理的な嫌悪感だ。腹立った。
「でもさ、その時『これに懲りたらジェラルドから手を引きなさい』って居もしない人間に向かって叫んでたのは私の気のせいかな?」
「気のせいですよ! 私木に登ったりなんかしてませんもの」
アーク様の絶対記憶を否定するとは何事だ。まあそのおかげでジェラルド殿下もディアナ嬢に不信感を抱いたのでよしとしておくがな。いや、あの顔はそもそもそこまで信用していなかったようにも見える。しかし、リーゼロッテを泣かせたことは許しはせんぞ!
「その割に、とても令嬢とは思えない暴言を吐いていたようですが? 私にはとても口にすることはしたくない暴言をリーゼロッテ嬢にぶつけてたではありませんか。その言葉にリズが涙を流したのは紛れもない事実ですわ」
「フィルフィリア嬢、それは本当か?」
「ええ。リズが虫を落とされて投げ返していた現場は見ましたわ。それがディアナ嬢とは気付きませんでしたが、その声が暴言を吐いたことは間違いありません」
「フィー、どこにいたの? 私、どうしようかと……」
「ごめんなさいね、リズ。こんなことが起きるとは思わなくて、屋上で読書をしていたの」
はしたないが、手段を選んでもいられない。風を足に纏い、優雅に現場に降り立った。泣きそうなリズを撫でながら、ジェラルド殿下にドヤ顔を決めてみた。悔しそうに口元を歪めたようだ。ふふん羨ましいだろう。
そんな殿下のすぐ後ろに陣取るディアナ嬢のせっかくの可愛い顔は、性悪さが滲み出ていて見るに耐えられなかった。素材はいいだけにもったいない。そんな女に縋り付かれて残念よのう、悲しいのうプククなんて笑ってなんかいないんだからね! まあ伝わってそうですが気にしないのが私クオリティでございますけれどもね。
「ジェラルド様はこの関係ない人を信用するんですか?」
キャンキャン吠えるディアナ嬢に、ジェラルド殿下は迷わず頷いた。
「ディアナ嬢は知らなくて当然だが、フィルフィリア嬢は真実の制約を結んでいる。だから、嘘をつけないんだよ。普段は中立であることを望まれている彼女が口を出すということは、君が嘘を吐いた何よりの証拠だ。君は最初、こう言っただろう『リーゼロッテ様の非道を暴いてください』と」
「はい。だからこうして」
「だが、リズを泣かしたのならば、私は貴様を許さない。もしリズが道徳に反する行いをしていたなら正さねばと思って貴様の思惑に乗ったが、そんな様子は微塵もなく、挙句には彼女を貶めた。故に、私はジェラルド・ハーゲンベルグの名においてディアナ・バルファを査問会への出頭を命ずる。逃げられるとは思わんことだ」
ジェラルド殿下の漢気にリーゼロッテが感動していた。別の意味で泣きそうだ。それとは対象的にディアナ嬢の顔面は蒼白である。そりゃジェラルド殿下を落としたと思って起こした騒ぎが実はこの状況なら、色んな意味で絶望だろう。ププッざまぁ!
m9(^Д^)プギャーとか思い浮かべながら、半信半疑だった令息は婚約者との絆を深めたようで(一部は喧嘩している)実質踊っていたのはディアナ嬢だけだったらしい。こんな茶番とか思わないでもないが、リーゼロッテがジェラルド殿下から愛を囁かれている様子を見たらそれすらどうでもよくなる。ずっと政略結婚で愛はないのだと悩んでたからね、友人が幸せそうで私も嬉しいよ。
「フィー、実はよく遭遇してたんだね」
「ええ。リズの行く場所とよく被るので、自然と目につきましたの」
リーゼロッテをジェラルド殿下にお渡しした私は、アーク様へと歩み寄った。その際、挨拶代わりに手にキスをされて頬がちょっと熱くなったのは余談である。
それに、私にはまだやることが残っているのだ。ジェラルド殿下がリズにかかりっきりな以上、アーク様にこの場を納めてもらうとする。
アーク様に大丈夫だと微笑んで、ぐぬぬと言わんばかりに手を握りしめているディアナ嬢に近付いた。
「ここでは初めまして、かしらね、ディアナ・バルファ嬢。私はフィルフィリア・パーシルよ」
「初めまして、フィルフィリア様。ここにはどんなご用件で乱入したんですか?」
明らかに邪魔だと言わんばかりのディアナ嬢の態度は、苛立ちを通り越して笑えてくる。きっと私と同じように転生したのだろう。人間性はお察しのようだが。
「大したことではなくてよ。いくら会いたくて震えても、震えるまでに留めておけばよかったものを。二次元と三次元を混同したのが、あなたの敗因かしら」
ディアナ嬢が「は?」と言ったのと、ジェラルド殿下が噴き出したのはほぼ同じタイミングだった。これで通じるとは前世の歌恐るべし。
ジェラルド殿下はもう感情を隠そうともせず、リーゼロッテに何か囁いてからこっちへと近付いてきた。
「そうか、やはりディアナだけではなくフィルフィリア嬢も転生者で合っていたか。通りでシナリオと全く違う展開だと思った」
「え、まさか殿下も?」
ディアナ嬢ももはや本性を隠そうとはしなかった。いや、したところで無駄だと理解したからこそ、本来の口調に戻したのだろう。
「くくっ、残念だったね。君はどうやら乙女ゲー成分だけで満足したみたいだ」
「は? あれ乙女ゲーで売り出してたし、隠し要素までクリアしたわよ」
ゲームの内容を知らない私は既についていけなかったので、聞き役に徹する事にした。どうやら二人ともかなりのヘビーユーザーだったみたいだし。
「まあ知らなくて当然か。私が気付いたのも、一旦クリアして時間を置いて、また手を付けたからだしね」
「???」
ディアナ嬢もそれは知らないらしく、首を傾げている。私はずっと傾げっぱなしだが。
「あのゲームの謳い文句、覚えているかい?」
「それくらいなら諳んじれるわ。『あなたの求める要素の全てがここに』それがどうしたの?」
「くくくっ、それだよ。私も最初は気付かなかったんだが、逆ハーエンドの後に特定のルートを通ると、百合モードが解放されるんだ。そして、ある特定の選択肢を選ぶと、今度は王子視点でギャルゲーとBLゲーが解放されるのさ。文字通り、どんなユーザーにも対応したカオスゲーにね」
それ、私の知る乙女ゲーちゃう。私の知るギャルゲーともちゃうねん。どうしよう、ツッコミが全く追いつかない。何そのカオス。そんな豊富な要素てんこ盛りならやってみたかった。
「ちなみに、それはどんな内容だったの?」
ディアナ嬢の顔面はもはや淑女の貞を成していない。それには全くの同意なのだが。
「まあ百合ゲーで男も女も侍らせたハーレムエンドと、BLゲーで同じく男女を侍らせると、最後に世界観を選ぶルートが出てくるんだよ。その主人公が、フィルフィリア嬢視点なんだ。エンディングでは全てのスチールが流れて感慨深かったな。ああうん、そのルートだと思った理由は、フィルフィリア嬢が学園を卒業する時に出てくる絶対王政のままか、立憲君主制か選択肢があるのだが、この世界は既にそのどちらでもない三権分立が成り立っている。そうなると、世界観を選ぶフィルフィリア嬢ルートは終わっている事になる。ならば、次に来る学園生活は、おそらく私とヒロインの一騎打ちだ。フィルフィリア嬢がいるなら、ヒロインがいておかしくはないからね。案の定、怪しい動きがあったからだいぶ手こずったけど、こっちが情報で上回り王子のハーレムエンドに落ち着いた。だからではないが、申し訳ないけど君は退場するしかないんだよ。ディアナ・バルファ」
王子の話に補足するなら、三権分立は成り行きだ。決して私が率先して法を整えた訳でも、積極的に介入した訳でもない。不可抗力だっただけでね。まあそんな事情はどうでもいい。今は目の前のことが大事ですよ!
連れて行け、とジェラルド殿下が腕を揮うと、何処からともなくやって来た騎士達が、ディアナ嬢を拘束して何処かへ連れて行ってしまった。その間一分かかったかどうか。
「他に聞きたいことはあるかな?」
ジェラルド殿下に話題を振られ、少し考える。まあ、聞きたいことは最初から決まっていたさ!
「ジェラルド殿下の前世はどんな方でした? ちなみに私はこのゲームしたことないですわ」
「ああ。私の前世か。そうだな、一言で言えばバイだった。そして腐女子でもあった」
思わず身を引いた私は悪くないはずだ。え、マジで?
「まさかとは思いますが、え、男も落としました?」
「君の婚約者には手を出してないよ」
それはつまり、別の人には手を出したって事ですな! リアルで出会ったのは初めてだよ!
「下世話な話題を出しても宜しくて?」
「ネコかタチか?」
「そこも気にならないと言ったら嘘になりますが、前世では生き辛かったのではと思いまして」
「ああ、そういう事。まあ何となく気付いてると思うけど、前世の私は性同一性障害でね、小さい時は女の子を好きになる自分に戸惑ったよ。でもある日気が付いたんだ。男も女も人間である事に変わりはないと。ならば、性別関係なく愛せば問題ないじゃないかとね」
まあ、二股掛けないなら問題ない。のか?
「でも私は生粋の男性性だった。受け身の自分が自分ではない気がしていたんだ。そんな時、事故に遭ってね。気付いたらこの世界に男として生まれていたじゃないか! もう天の采配だと神に感謝したよ。その後は、この通りさ」
手を広げて語るジェラルド殿下は嬉しそうだった。きっと嬉しいのだろう。話を聞く限り、きっと殿下はタチだからね。
「まあ、カオスな世界で良かったですわね」
「ああ本当にね! フィルフィリア嬢も聞いてくれてありがとう。こんな電波な会話を出来るとは想像もしていなかったよ。きっと、ずっと誰かに喋りたかったんだと思う。気が楽になったよ」
スッキリしたのは本当だろう。表情が晴れやかに見える。
「ちなみに、今のご両親はその事を知っていらっしゃるのですか?」
「ああ。母上はあまりいい顔をしないが、父上は拗れない程度なら見逃してくれるそうだ」
「理解があってよかったですわね」
私はドン引きだよ。もしかしたら王様も両刀使いか。……えーそんな内情知りたくなかった。
「本当にね。まあ、アークを落とせなかったのは不満だったけど、君がいるなら落ちるわけないし、精々幸せになってくれ。それと、ここだけの秘密なんだが、あの集団はアークを覗いた全員が私のハーレム要員だよ。君が頷いてくれるなら加わるかい?」
「いえ結構です。病気にはお気をつけくださいませ」
お茶目にウィンクしたジェラルド殿下に被せ気味に答えた。私はノーマルで一途なのよ。アーク様に捧げるのだから、他人が入り込む隙はなくてよ!
きっと前世では肩身が狭かったんだろうと勝手に納得して、アーク様の元へと戻った。何処となくイラついていたようだが、私が戻ると安心したように抱きしめてくれた。相変わらず甘えん坊なんだから。
「話は終わったかな?」
「ええ。私にはアーク様だけだと再確認いたしましたわ」
こんな泥沼を見せられたら心も荒むってものさ。細く見えるアーク様だが、筋肉は見た目以上に多い。背中に腕を回すと、更にきつく抱き締められる。安心感が天元突破してるわ。
「君が卒業する来年まで我慢しないといけないのは辛いな」
「それも試練ですわ。会えない時間が愛を育むと云うではありませんか」
こんな幸せがあるなら、ジェラルド殿下ではないけど転生してよかった。喪女だった記憶? 忘れたわフハハハハ!
ジェラルド殿下が何か言って皆さん散って行く。でも私達には関係ないさ。顔は大事だけど、心も大事だなって知った午後三時。
その後、ヒーロールートを見事完遂したジェラルド殿下は、嬉しそうに兄の戴冠式で祝辞を述べていた。噂に聞くと、侯爵家へ婿入りするらしい。
ヒロインだったディアナ嬢は、国内追放の刑を受け、今は修道院にいるそうだ。
そして私、フィルフィリアは卒業した一ヶ月後に無事、愛しのアーク様と結婚式を迎えた。お腹にはまだ小さいが、一つの命も宿り順風満帆な人生を歩んでいると言えるだろう。
これにて乙女ゲーと呼んでいいか怪しい出来事の終幕なり。
反省も後悔もしてる。
これを果たして乙女ゲーと呼んでいいか小一時間(ry
ちなみに、王子ルートでは、第一王子を暗殺するルートもありました。ジェラルド殿下は選ばなかったけど。
こんなゲームがあったらやってみたいと思いました(小並感)
不快だったら下げますのでご一報ください。