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035 リンク、そして力の代償【俺はずっと背中を見てきた】

俺はずっと背中を見てきた。

守ってくれる父親、導いてくれる母親。

厳しく叱る祖父、笑顔で受け入れてくれる祖母。

…でもまぁ、正直言ってそんな意識していなかったんだけど。


所属していた少年サッカーチームでは、届かなかったエース。

勉強では軽々とトップを取得する春香。

男として、憧れたのは夏輝。

俺、冬威は伸長が165とまぁまぁ低い。それに比べて夏輝は180だ。当然女と並んで格好いいのは夏輝。女としては高身長の春香と並んでも、ベストなカップルだ。羨ましい。



そして今。

俺はまた、1人の男の背中を見ていた。

背中を見ている。追いかけている。この世界に来て、俺は強くそう思った。

不甲斐無い自分が情けなくも感じ始めていた。

まだ2日もたっていないんだけど。


右も左も分からない俺にこの世界の事を教えてくれるジュリアンは、地球での記憶があるといった。年齢は一つ下の16、身長は俺と変わらないから165前後。この世界でも男としては小さい…いや、中の下くらい?

それなのに、勇気がある。


兵として町を守りながら、同郷のよしみで俺を助けてくれる。

…いや、純粋にいいやつなんだ。


「どう?剣術スキルはついた?」


最低限自分のことくらい守れなくては、という意見で剣を教えてもらっていたのだが、レベルが上がったというたびに少し期待のこもった目で見てくる。確かに、教えている側なのだ、取得出来たと言ってあげたら喜んでくれるだろう。

だが。

シッカリと自分のステータスを確認。


----

名前:トーイ・サザメ

種族:人間

レベル:6


状態:従属(主:ジュリアン・グロウ)

称号:異世界からの訪問者、勇者


物理適正:○×4

魔力適正:-


威力:○×3

耐久:○×4

パワー:○×4

スピード:○×5


スキル:

言語理解

俊足

鑑定

独善+2【「リンク」使用可能】

火・風・土魔法(初級)

見切り

投擲術

砂かけ


痛み耐性

負けず嫌い

----


3回ほど目を通して、剣術が無いことを確認。触れないのに「画面にゴミでもついてんのか?」と手を動かしてみるが、当然無意味。


「(くっそ!変なスキルはなぜか簡単に手に入るのに…いや、変って程でもないんだけど、重要と言えば重要なんだけど!今欲しいのはそれじゃないんだ!!!来いよ剣術!!)…まだみたい。でもコツはつかんだから、きっとすぐゲットしちゃうよ」


まだと告げると「そうか」と笑う。残念だと言いながらも、焦る必要はないと言ってくれる。それがとても、悔しくて、猛烈に申し訳ない。


「(くっそ!なんで?どうしてゲットできないわけ?ジュンの攻撃避けそこねて手の甲掠めて、摩擦で『熱!!』ってなっただけで火魔法初級ついたくせに、なんでこんなに頑張ってんのに剣術つかないの!?おかしくない!?しかも魔力適正空欄なんだけど!?持ってても使えないッポイんだけど!!!)」


もう半ばパニックだ。ジュリアンの言葉を信じるならば、こうポンポンとスキルをゲットするのは珍しいというか、ありえないことなんだろうと思う。でも些細な事でどうでも良い(よくないけど)スキルが入手できるのに、欲しいと思って頑張ってるものが手に入らないなんて詐欺じゃね!?


「(もしかして、適正無いとか?…じゃあ兵士になって資格を取得するところから始めないとって訳?)」


絶望しかかったときに、ふとステータス欄の一部が気になった。というか剣術だけを探していて、スルーしていたようだ。

…独善+2になってるやん。いつ上がったん?

ってか、リンクって何よ?というわけでジュリアンはほったらかしで鑑定をしてみる。


この時「自己把握は大切だから」と言って冬威が「もう大丈夫」というまでジュリアンは自ら話しかけようとはしない。しかも、ウィンドウが見えないにも関わらず、視線を感じると集中できないだろうから、と顔を背けてくれるのだ。人間が出来てる。良い奴!


-----

スキル「独善:リンク」鑑定結果

他者とつながる

------


…お願い!もぉちょい詳しく!

そりゃ、リンクって名前だからそんな感じなんだろうな、って思ったけどさ、他者とつながるって、一瞬卑猥な妄想しちゃったじゃんか。思春期舐めるな!


その後町に帰りながら、なぜ独善にプラスが付いたのか考える。

自分だけが正しい、っていう鑑定結果だったから…もしかして自己中な言動が関係してんのかな?確かに訓練というか組手の時「ソレおかしくね!?」「いや、絶対こうだったから!」「セーフ!今の当たってないから!」みたいな絶対にアウトなのに自分に都合が良い事(一応冗談のつもりで)言ったりしてたけど…


まぁ、メジャーなところ、こういうのって使用回数とかだよな。

そう思って、俺は歩きながらいろんなものを鑑定してみた。目につく草、かわいい花。大量にある木、たまに見かける小さい虫。そして、目の前のジュリアン。…は、気づかれたけど、思わず鑑定を中断したそのタイミングで、


“鑑定+2になりました”


とアナウンスが来た。独善の時はなんも言わなかったのに。



-----

スキル「独善:リンク」鑑定結果

他者とつながり、他者の力を自分のモノとする。

------


ジュリアンが食事を貰いに行っている間に再確認。

誰かとつながって、誰かの力を自分も使えるって事?ってことは、俺は頑張って修行とかしなくてもOKなわけ?


俺の為に強くなれって?

マジ自己中なスキルだな。

ずっとサッカーやって仲間と努力していた事もあり、他人の努力を丸っと奪うようなこれには何となく忌避感を覚えた。


でも…。


「…捨てるくらいなら…そんなんだったら頂戴。ジュンの命、俺に頂戴!」


本当は命なんてもらっても仕方ないんだよ。ぶっちゃけ要らないよ。でも、1人で頑張るくらいなら、たとえ誰かの力だったとしても俺も戦力になりたいよ。


「リンク!」


あ。

そういえば、他者の力を自分のものに、って書いてあったけど、俺が使ったらジュリアンが使えなくなったりすんのかな?


…あれ?それってやばくね?

俺初心者っていうか、ビギナーっていうか、アマチュアっていうか…うん。全部同じ感じだけど…簡潔に言うと戦えないんだぜ?


無しなし!やっぱちょっと待って!…なんて言って、一度発動してくれたスキルが止まるわけがなかった。

自分ではよく見えないけれど、一度鏡で確認した、俺の首にある茨の蔓のような痣が光っているのか、首あたりが眩しい。そしてズルズルと肌を這うように左手に動き、指先からジュリアンへと移っていく。

特に光っていたみたいだったから、眩しかったけどそれが確認できた。

そして。


光が落ち着いてくると、呆然としているジュリアンの顔が見えた。きっと俺も同じような顔をしているに違いない。先ほどまで血で汚れていた右腕…あ、ごめん、そういえば怪我してたんだったな。ついうっかり力を込めて握っちゃったよ…からは、血の跡が消えている。そして破れた服の袖からは、俺の首にあったものと同じような痣がぐるりと彼の腕を一周。怪我があった部分に刻まれているのが見えた。そしてキラキラと、薄い光が俺の首の痣と、ジュリアンの腕の痣をつないでいる。


「こ、これは…」


何が起きた?という顔をしているジュリアン。ごめん、俺もぶっちゃけよくわかんない。でも単品でいるよりは強くなったはずなんだよ。と、口を開こうとした時。


“ガルルルル!!”


無視すんなよ!って言ってるような気がした。歯茎が見える程牙をむき出しにして、唸る魔物。触手も元気にウネウネしてる、タ●リ神もどき。

でも…あれ。なんだかあまり怖くない。最初に鳴き声聞いたときは、情けないほどビビって、マジちびるかと思ったのに。

そう思って隣を見れば、今までと変わらない距離にいるはずのジュリアンが何故かとても近くに感じた。


彼の力が、俺の中に。


そう思って視界を遮らないような位置にステータスを表示。

サーっと視線を走らせて、にやりと笑った。


下の方に追加されたスキル。

剣術+3を見つけたのだ。


…ってか+3!!ジュン、剣術にプラスついてたのかよ!

16/03/03 スキル従属欄に主名を書き忘れたので、足しました。

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